Yahoo!ニュース

ACLでJリーグ勢を苦しめた中国の強豪がチーム解散。かつての「広州恒大」に一体、何が? #専門家のまとめ

下薗昌記記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家
ブラジル代表経験者らを擁し、2015年のクラブW杯にはアジア王者として出場した(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

 「広州恒大」という名前を聞けば、苦い思い出が蘇るJリーグサポーターは多いはずです。中国サッカー界が「爆買い」で存在感を見せていたバブル的な時代の代表格が「広州恒大」。ガンバ大阪や鹿島アントラーズなど数多くのJリーグ勢がACLで苦しめられてきました。

 そんな「広州恒大」は中国サッカー協会の意向で企業名が許されなくなり2021年に広州FCに名称変更。経営難でチームは弱体化し、2023年から中国の2部で戦っていましたが2025年のクラブライセンスが認められず、1月6日にチーム解散が発表されました。

ココがポイント

“広州恒大”として活動していた広州FCが解散を発表した。中国『捜狐(sohu.com)』が伝えた。
出典:超WORLDサッカー! 2025/1/7(火)

過去にアジア制覇を果たした中国サッカーの名門クラブが解散し、自国から嘆きの声が上がっている。
出典:東スポWEB 2025/1/7(火)

新型コロナウイルスが感染拡大した2020年以降、既に中国では約50クラブが解散、またはリーグ脱退の憂き目に
出典:FOOTBALL ZONE 2025/1/7(火)

エキスパートの補足・見解

 ガンバ大阪がアウェイの広州で広州恒大と対戦した試合は筆者も現地で取材しましたが、天河体育中心体育場には48946人の観衆が集い、率いる指揮官は元ブラジル代表監督のルイス・フェリペ・スコラーリ。ピッチ上にはパウリーニョらブラジル代表経験者も揃い、当時の広州恒大は間違いなくアジア最強レベルのチームで、クラブ施設の充実度も素晴らしいものがありました。

 ただ、親会社を務めた恒大グループが不動産バブルの崩壊で、経営破綻を余儀なくされると資金力を欠いたチームからは主力が退団。2022年12月には2部に転落する凋落ぶりでしたが、当時から中国メディアは将来的なクラブの解散の可能性を指摘していただけに、来るべき日が来たか、という印象です。

 ただ、Jリーグでもかつて横浜フリューゲルス消滅という悲劇があっただけに、改めて親会社に頼るクラブ運営の危うさを思い知らされます。

 もっとも長いサッカーの歴史では南米や欧州、北米などでもこれまでいくつものクラブが消滅したケースは存在しますがその多くは財政難によるものです。選手育成に限らず、やはりクラブの運営も地道かつ堅実な手法が必要だと改めて感じます。

記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家

1971年、大阪市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)でポルトガル語を学ぶ。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国でワールドカップやコパ・リベルタドーレスなど700試合以上を取材。2005年からはガンバ大阪を追いつつ、ブラジルにも足を運ぶ。著書に「ジャポネス・ガランチードー日系ブラジル人、王国での闘い」(サッカー小僧新書)などがあり、「ラストピース』(KADAKAWA)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞。近著は「反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――」(三栄書房)。過去、日本テレビでコパ・リベルタドーレスの解説やクラブW杯の取材コーディネートも。

下薗昌記の最近の記事