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まもなくキックオフ。コスタリカ女子代表との一戦で、なでしこジャパンは進化を見せられるのか。(1)

松原渓スポーツジャーナリスト
年齢に関係なく積極的なコミュニケーションが光る(C)松原渓

【女子サッカー新興国、コスタリカ】

4月9日(日曜日)、熊本県民総合運動公園陸上競技場で行われるキリンチャレンジカップで、なでしこジャパンはコスタリカ女子代表と対戦する。試合は19時キックオフ。

対戦相手のコスタリカは、日本から見ると、ちょうど地球の反対側に位置する北中米の国である。

国土の面積は日本の四国と九州を合わせたぐらいの小ささだが、スペイン語で「豊かな(Rica)海岸(Costa)」という国名が示すように、変化に富んだ地形と豊かな自然を誇り、多様な生物が生息する。

サッカーでは、2014年のブラジルワールドカップで男子代表がベスト8入りしたことが大きな話題になったが、女子サッカーでも、ジワジワと力をつけてきている新興国だ。

バルベルデ監督
バルベルデ監督

最新のFIFA世界ランキングによると、なでしこジャパンが6位、コスタリカ女子代表は30位で、過去の対戦はない。

コスタリカはアメリア・バルベルデ監督の下、2015年から国内の若い選手を中心にチーム作りを進めており、2015年の女子ワールドカップでは、グループリーグでスペインに1-1、韓国に2-2で引き分け、ブラジルには0-1で敗れて決勝トーナメントには進めなかったが、初出場ながら健闘を見せた。

また、コスタリカといえば、2014年のU-17女子ワールドカップ開催地で、高倉麻子監督率いるリトルなでしこ(U-17日本女子代表)が優勝を飾った地としても記憶に新しい。

【ヨーロッパにない強さ】

コスタリカ代表チームは、7日の午前中に熊本に到着した。

コスタリカと日本を結ぶ直行便はないため、移動には乗り継ぎも含めて20時間近くかかった。時差は15時間あるため、さすがに到着した日の午後のトレーニングは身体が重そうだったが、翌8日の試合前日練習(冒頭15分のみ公開)では、良い緊張感の中で、始まりから集中したトレーニングを行っていた。

コスタリカ女子代表は身体が強い選手が多い
コスタリカ女子代表は身体が強い選手が多い

現在のなでしこジャパンで、海外でのプレー経験が最も豊富なMF宇津木瑠美は、コスタリカの印象について、このように話す。

「ヨーロッパの選手とは雰囲気が違っていて、1人でシュートまでも行ってやろう、という選手が11人、試合に出ている印象があります。そういう意味では、日本の選手たちが苦手な部分を持ち合わせているチームだと思います」

トレーニングで見た限りでは、4-4-2を基本フォーメーションとし、ボールを持つと縦に速い攻撃が印象的だった。また、サイドにボールが入った際は、中盤からでもどんどんゴール前にクロスを入れていた。

警戒したい選手は、背番号10のMFシルレイ・クルス。

平均年齢24歳のチームで、31歳のクルスは最年長のベテランで、なんと30歳のバルベルデ監督よりも歳上だ。

2005年から8シーズンに渡って、フランスのオリンピック・リヨンでプレーし、6度のリーグ優勝と、2度のリーグカップ優勝を経験し、女子チャンピオンズリーグでも2度、優勝している。 2012年以降はパリ・サンジェルマンでプレーしており、現在、リヨンでプレーする熊谷紗希や、昨年までモンペリエHSCでプレーした宇津木瑠美とは、対戦経験がある。

宇津木はクルスについて

「フランスリーグでも上位を争う上手な選手 」と、高く評価し、警戒する。

【理想の守備を手に入れるために】

なでしこジャパンは3日に熊本入りし、試合前日までの6日間、コンディション面に配慮しながら、守備やセットプレーなどを重点的に取り組んだ。

コスタリカ戦でチームとして掲げるテーマについて、高倉監督は

「ボールの奪いどころを、グラウンドで選手同士が一致させること」

と話す。

現なでしこジャパンが理想とするのは、90分間、高い位置からプレッシャーをかけ続け、ボールを持つ時間を長くして主導権を握り、ゴールに迫り続ける戦い方である。

そのアグレッシブな守備をモノにできれば、どんな相手にも主導権を握れる可能性が高まり、相手ゴールに近い位置でボールを奪えれば、シュートチャンスは確実に増える。

一方で、その守備はピッチに立つ選手がボールを奪うタイミングを共有できなければ、相手にスペースを与え、失点のリスクが高まる諸刃の剣でもある。

加えて、チームメート同士で毎日、一緒に練習できるクラブチームでも、監督が掲げるコンセプトを共有して実践するには相当な時間がかかるであろう難易度の高い守備を、集まる時間が限られた代表活動中に形にすることの難しさは容易に想像できる。

実際、その狙いを持って臨んだアルガルベカップでは、アプローチしても球際でかわされたり、ロングボールを蹴られて最終ラインを下げたままになるなど、相手に主導権を握られる場面も多く、選手間のイメージにばらつきが見られた。

しかし、アルガルベカップを通じて課題が明確になったことで、選手同士のイメージの修正は、よりスムーズになった。

アルガルベカップから帰国してから1ヵ月と間を空けずに、同じテーマで取り組めていることもプラスだ。練習の中でも、良い形でイメージを合わせてボールを奪える場面が増えた。

イメージを合わせるためには、前線の選手の判断だけでなく、後方からの声かけも重要だ。最後方からチームを支えるGKも、重要な役割を果たしている。GK山下杏也加は言う。

「スイッチが1人だけ入っても、2人目が入らないと簡単に剥(は)がされてしまうリスクがあるので、リスク管理をしながら、ディフェンスの背後の対応などのコーチングを心がけています」(山下)

コスタリカ戦では、90分間プレッシャーをかけ続けることは難しくとも、相手にプレッシャーをかけて全員でボールを奪う瞬間を明確にし、守備で試合の主導権を握れるかどうかが日本にとって最大のテーマとなる。

【注目はサイドバックの選手起用】

もう一点、注目したいのは、両サイドバックの選手起用である。

アルガルベカップでは、右サイドバックの有吉佐織と左サイドバックの北川ひかるが負傷し、サイドバックの本職は、左サイドの鮫島彩1人という緊急事態に陥った。

しかし、今回は、その鮫島も直前のケガで不参加になってしまった。

つまり、今回、日本には本職のサイドバックが1人もいない。

そんな中、サイドバックで起用される可能性がある1人が、DF高木ひかりだ。

高木の本職はセンターバックだが、アルガルベカップ以降、先述した苦しい台所事情もあってか、サイドバックでの出場が続いている。

高木は1対1の強さやスピードのある相手への対応を得意としており、攻撃では機を捉えた精度の高い前線へのフィードを得意とする。

また、複数のポジションで起用されながらも好不調の波が小さく、ユーティリティ性も魅力だ。高木本人は、

「本職のサイドバックの選手よりも、守備的になってしまうのは課題です」(高木)

と、自分のプレーを分析したが、7日のトレーニングでは見事なミドルシュートを決めるなど、攻撃面でも存在感を高めている。

1ヶ月前のアルガルベカップ時に比べても、高木のプレーの積極性には一皮剥けた感じがある。その理由を探ると、このような答えが返ってきた。

「1月の国内合宿で感じたのは、たとえば軽い練習でも、うまい選手は積極的にやっているということです。(長谷川)唯ちゃんや籾ちゃん(籾木結花)は歳下ですが、実力もあるし、それ以上に自分から良さを発信していました。負けていられないし、ついていかなければいけないと思いましたね」(高木)

高木の言葉は、今のチームの雰囲気を物語る。

年齢に関係なく、選手同士が自分の考えを口にし、相手の話に耳を傾け、刺激を与え合う。コミュニケーションを重ねたチームは、アルガルベカップを通じて階段を一つ、上った。

コスタリカ戦では、その成果を表現することが求められる。

ピッチに立つ選手たちが、熱い気持ちと冷静さを持ちながら、チームとして積み上げてきたものをしっかりと表現し、この試合のテーマでもある、「ボールの奪いどころを、グラウンドで選手同士が一致させる」ということに積極的にトライして欲しい。

もちろん、なでしこジャパンがコスタリカに勝利することで、震災復興の途上にいる熊本の方々を励ましてくれることにも期待したい。

なでしこジャパンとコスタリカ女子代表の一戦は、テレビ朝日系列で、4/9(日) 18:57より 生中継される。

(2)【監督・選手コメント】に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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