なぜ森保ジャパンはスペインに勝てたのか?三笘と冨安の存在感...プレスの位置で起こした変化。
ワールドカップでの挑戦は、続く。
日本代表はカタールW杯のグループステージ第3節でスペイン代表と対戦。2−1で勝利を収めている。
この結果、グループEは1位日本、2位スペインが決勝トーナメント進出を決めた。
日本にとって、スペインというのは、ドイツに比べれば劣るというイメージがあったかも知れない。東京五輪では準決勝で対戦して0−1で敗戦。善戦したという印象があった。
ただ、W杯という舞台で、強豪国はギアをひとつ上げてくる。スペインもまた例外ではなかった。
■スペインの思惑
今大会、コスタリカ戦(7−0)、ドイツ戦(1−1)と無敗を貫いていたスペインは、日本戦でローテーションを考えていた。ただ、マルコ・アセンシオ、ジョルディ・アルバといった選手に休養が与えられ、代わりにアルバロ・モラタ、アレッハンドロ・バルデにアピールのチャンスが訪れたものの、大幅なメンバー変更はなかった。
一方、日本は冨安健洋、酒井宏樹、遠藤航らをコンディション不良でベンチスタートになった。
(日本とスペインのスタメン)
日本は【3−4−2−1】で試合に臨んだ。一方、スペインでは【4−3−3】の布陣が選択された。
試合は序盤からスペインがボールを保持する展開で進む。
日本は1トップの前田大然が前線からプレスを掛ける。だがスペインの2枚のセンターバック、ロドリ・エルナンデスとパウ・トーレスに悉(ことごと)くいなされ、パスコースを限定できない。
逆にスペインはここのミスマッチを利用した。ロドリ、パウ、そしてアンカーのセルヒオ・ブスケッツが協働して素早くボールを回す。
また、単にボールを循環させるだけではなく、CBの選手がドリブルで運ぶ。日本のプレッシングは空転した。
前半11分の段階でアルバロ・モラタがヘディングで先制点をマークしたが、得点だけではなくペースを握っていたのは完全にスペインだった。
■交代策とプレスの位置
森保一監督はハーフタイムに選手交代を行う。久保建英と長友佑都を下げて、堂安律と三笘薫を投入した。
システムは【3−4−2−1】が維持された。だが日本はプレスを掛ける位置を前半より高くする。これが、功を奏した。
スペインは前半とやり方を変えてきた日本に対して明らかに戸惑っていた。そして後半3分、後半6分に日本に立て続けにゴールが生まれる。堂安、田中碧がネットを揺らした。
とりわけ、同点弾のシーンでは、前田がGKウナイ・シモンのところまでプレスに行っていた。苦し紛れに蹴られたボールに対し、伊東がアレッハンドロ・バルデに競り勝ち、それを拾った堂安が左足でミドルシュートをねじ込んでいる。
■1対1とデュエル
日本のプレスは機能していた。前半が嘘のように、いや前半を我慢していたからこそ、その変わり様にスペインが面を食らっていた。
日本の守備は非常に良かった。しかし、それは組織という意味においてだけではない。三笘、途中出場の冨安健洋(後半23分に鎌田大地と交代)が両サイドで1対1のデュエルで勝ち続けた。このポイントが大きかった。
三笘はフェラン・トーレスに、冨安はジョルディ・アルバやアンス・ファティに対して、冷静に対応し続けた。フェラン、アルバ、ファティといずれも途中出場でフレッシュな選手だったが、そこで突破を許さなかった。
日本は最後までスペインの攻めに耐え抜いた。
同時刻開催だったコスタリカ対ドイツの試合は、シーソーゲームになっていた。最終的にはドイツが4−2で勝利。だが日本としては、勝てば関係なかった。その意思はピッチ上で、否、ベンチの選手とコーチングスタッフを含めて共有されていた。
我々は信じ続けたーー。試合後、森保監督からはそのような言葉が紡がれた。
次は、ベスト16でクロアチアと対戦する。ドイツとスペインを撃破して、期待感は膨れ上がっている。筆者とて同じだ。だが、ここで冷静になれるかどうかが、ベスト8の壁を打ち破るための鍵を握るはずだ。
※文中の図は全て筆者作成