10年で1000万円以上。引退馬支援にかかった費用について
以前記事にも書いたが、私はツルマルツヨシという競走馬の養老生活を支えるツルマルツヨシの会にかかわっている。
ツルマルツヨシは1995年生まれ。父はシンボリルドルフ。同世代にはスペシャルウィーク、セイウンスカイ、エルコンドルパサー、グラスワンダー、キングヘイロー、アグネスワールドなどがいる。ツルマルツヨシは京都大賞典を勝った実績もあり、通算成績は11戦5勝だった。
お陰様でこの会は今年で結成10年になる。この会の会長でありツルマルツヨシが中央競馬の現役生活をしている間の担当厩務員であった中西氏から相談を受けてこの会を立ち上げたが、ここまでの道のりは決して楽なものではなかった。
サラブレッドが余生を送るためにかかる費用は莫大だ。具体的に言うとこれまでツルマルツヨシを支えていくのにかかった費用は1000万円を超えた。現在44名の会員さんの支援金や都度都度の寄付によって支えられてきた。感謝という言葉では軽すぎる深い愛情のたまものである。とても一人で賄えるものではない。補助金収入があるにせよ、今のツルマルツヨシが自ら稼ぐことはない。
適切な環境で一頭の年老いたサラブレッドが死を迎えるまでの間を支え続けるというのは並大抵のことではない。それでも中西氏を会長とするツルマルツヨシの会はいい意味で妥協はしない。歳を重ねるごとに人間と同じく、馬も体のメンテナンスに必要な費用は多くなっていく。現時点で1000万円以上かかっているが、この先最期の時を迎えるまでにかかる費用は一体いくらになるのかわからない。今、世の中が10年前にこの会を発足させた時には想像できなかったくらいに厳しくなっている。人間が生きていくだけでも大変な世の中になってしまった。それでも、仮に今後どれだけ厳しい世の中になったとしても、ツルマルツヨシが良いコンディションで生き続けられるために集めた費用を別の目的に使うことはない。サラブレッドの支援を続けるにはそのぐらい強い覚悟が必要なのだ。
ツルマルツヨシは競走生活を終えた後は京都競馬場で誘導馬としての仕事を務めてきた。筆者がツルマルツヨシの会を通じて感じるのは、養われている馬も健康であれば人間でいう中年くらいまでは軽くていいので何らかの職業に就き、僅かでも経済活動に参加した方が良いと感じている。10年前、ツルマルツヨシは体のメンテナンスが必要だったし他に選択肢が無かったので養老馬の道を歩んだが、今ならまた違う選択肢があったんじゃないかなと思ったりもする。
昨年、人気ゲーム「ウマ娘プリティーダービー」がスマートフォンのゲームに実装されたこともあり、サラブレッドを中心とする馬への関心がさらに高まっている。競走馬になるサラブレッドの生産頭数は上昇傾向にあると聞く。乗馬でもセラピーでもなく、競走を終えたサラブレッドたちが命を紡ぎながらできる仕事は生まれないだろうか?まだまだ混沌としている業界だが長い目で見守っていきたい。