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「頑張れないと思ったら辞めます」と田村優。しかしいま、代表候補合宿で奮闘。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
取材時の田村(スクリーンショットは筆者制作)

 9月からラグビー日本代表候補合宿に参加する田村優が、15日、オンライン取材に対応している。

 一時不動のものにしていた司令塔の座を若手と争う現況について、思いを語った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——まず、キャンプの雰囲気は。

「単純に人数が多いので(始動当初は52名がリストアップされた)、よりアグレッシブな感じもあります。何て言うんだろうな…。日本代表も、ラグビー界も、よりプロフェッショナルな方向に行っているというか。選手の意識だけで、それ以外はそこまであれですけど。…いい変化の仕方なんじゃないかなと思います」

——「プロフェッショナルな方向」とは。

「よく勉強して、もちろん練習も頑張って、リカバリーもしっかりして、常に集中している感じがします。昔が悪かったというわけではなくて、昔は昔のベストがありましたけど、ラグビーというスポーツの選手の、何と言うんだろう…ちょっとうまいあれ(表現)が見つからないですけど、文化なのかわからないですが、ちょっと、違う方向にシフトしているかなとは思います」

 身長181センチ、体重92キロの33歳。國學院栃木高校、明治大学、現NECグリーンロケッツ東葛を経て、いまは横浜キヤノンイーグルスに在籍する。

イーグルスでは昨季まで2シーズン、主将を務めた
イーグルスでは昨季まで2シーズン、主将を務めた写真:西村尚己/アフロスポーツ

 ポジションは司令塔のスタンドオフで、独自のスペース感覚とそれを引き立てるパスやキックの技術、チームのプランに即して周りを引っ張る統率力を持ち味とする。

 日本代表へは2012年に初めて呼ばれ、ワールドカップには15年のイングランド大会に初出場。2019年の日本大会では全5試合に先発し、史上初の8強入りに喜んだ。

日本大会では8強入りを決めるスコットランド代表戦でもプレー
日本大会では8強入りを決めるスコットランド代表戦でもプレー写真:アフロ

 ところが現在は、本人曰く「(評価は)最下位だと思う」。国内リーグワンでのパフォーマンスなどを踏まえてか、2016年秋に就任したジェイミー・ジョセフヘッドコーチに厳しく評された。

「ジェイミーからも言われていますけど、僕自身、いまは最下位だと思うので、頑張らないといけないとは思います。(同じチームに)いい選手がいるのに越したことはない。僕は、チャレンジして頑張っていかなきゃいけない」

——「最下位」とは、この秋のキャンプでもジョセフさんに言われるのでしょうか。

「毎日、言われてます。でも、どうなんですかね。僕はすぐスイッチが切れちゃうので、自分がチャレンジする状況にある方がいいかなと思います。それが1日、1日、積み重なっていけば、いいものになるという自信もあるので。心地悪くは、ないですね」

 さかのぼって、今年6月から約1か月の活動期間。田村は、代表予備軍のナショナルディベロップメントスコッドに帯同した。フランス代表などと対戦した代表本隊には、解散前の約1週間のみの参加に止まった。

 当時、正スタンドオフの座には、22歳の李承信がついていた。

 ただし李その人は、別府での合宿中にこう証言している。

「同じポジションである田村優さんは、スキルレベルも高いですし、コミュニケーションのところでも学ぶところが多いです。夏のツアーでは1週間しか一緒にできなかったんですが、いまは練習が終わるたびにお互いにレビューし合って、10番としての役割を意識できるようにアプローチしてくれるので、助かっている。刺激になっています」

 田村自身の感触はどうか。

「逆に僕が色々と聞いていますけどね。だいぶ代表から離れていて、わからないことが多いので。毎日、頑張って、(日本代表の形などを)覚えています。

 最後、フランス(7月9日の同国代表戦前に追加招集された)の1週間以降、ラグビーはこの合宿に来てからが初めてだったので、徐々に感覚を戻しながらチームのプレーを覚えている感じです。

 忘れやすいんで、やりながら覚えていくという感じ。自分の肌感覚的なところと、チームのプランをすり合わせていきながら、自分のよさを出していく感じです」

 2023年のワールドカップフランス大会を過剰に意識することは、なさそうだ。

 ただし、代表活動そのものへのモチベーションは高く保っている。

「(定位置争いに)チャレンジできる図式はいいと思いますし、というか。マイナスなこともないのかなと思います。頑張らないといけないですし、意義あるものにできればと思います。

 若い選手も、年を取った選手もいますけど、練習中から自分でチャレンジしていくのがいいと思う。年を重ねると、それが難しくなることもあると思うので、そういうの(安泰とは言えない位置づけ)でモチベーションを保てているのは、いいことだと思います」

——6月のNDSでは、2015年のワールドカップイングランド大会などで一緒に戦った立川理道選手とプレーしました。今回のキャンプでも、同い年のリーチ マイケル選手、山中亮平選手が参加しています。

「ハルとやった時も嬉しかったし、リーチ、山ちゃんという同い年の選手がいるのも嬉しい。キャリアとしてはもうそろそろだと思うなかでも、こういう場所で(同世代が)一緒にラグビーができるのは幸せだと思う」

——ワールドカップフランス大会へのモチベーションは。

「自分のなかでそこが目標になるのか、何が目標になるのかわからないですけど、目標が決まったりしたら、そこに向けて頑張れるというか。考える時間ももらえましたし、(考える時間は)これからもあると思いますけど、(自分の目標を)考えるようにしていこうかなと思っています」

——ジョセフヘッドコーチから辛辣な評価を受けるなか、まだ日本代表で頑張るモチベーションは。

「必要とされているうちが(華)というのもありますし、あとは(今年5月までの国内リーグワンで負っていた)怪我が治ってきた、というのもありますね。動けるので、まだ。

 頑張れないなと思ったら、辞めます。身体に不調が出たり、モチベーションを保つのが厳しいなと思ったりすれば。向上心がなかったり、ラグビーが楽しくなかったりとなると、高いレベルでやるのは厳しいので。ただ、いまは頑張れる。動けますし。で、頑張ろうかなと思っています」

7月9日のフランス代表戦にも途中出場
7月9日のフランス代表戦にも途中出場写真:松尾/アフロスポーツ

 候補選手は現在、宮崎に移って活動中。メンバーは9月下旬までに約40名に絞られ、10月1日からの対オーストラリアA・3連戦、同月29日以降のテストマッチ計3戦を見据える。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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