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「ビバヒル」シャナン・ドハティ、3度の離婚を乗り越えた”ハリウッドの問題児”

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
10年近くガンと闘ったシャナン・ドハティ(写真:REX/アフロ)

 若者向けテレビドラマ「ビバリーヒルズ高校白書」で大注目されたシャナン・ドハティが亡くなった。53歳。2015年に乳がんが発覚し、10年近く闘病を続けていた。

 テネシー州メンフィス生まれ。6歳で家族とロサンゼルス近郊のパロス・ヴェルデスに移住。10歳の時、教会のお芝居に出ていたところ、演出家の友人であるハリウッドのエージェントに声をかけられ、数週間後にコマーシャルでデビューを果たした。11歳の時には「大草原の小さな家」のジェニー役を獲得。17歳の時に公開された映画「ヘザース/ベロニカの熱い夏」(1989)では、ウィノナ・ライダー、クリスチャン・スレーターと共演した。

 だが、彼女を一躍有名にしたのは、1990年に放映開始した「ビバリーヒルズ高校白書」だ。ドハティが演じた高校生ブレンダ・ウォルシュは、家族と一緒にミネソタ州から超高級住宅街として知られるビバリーヒルズに引っ越し、これまでとまったく違う高校生活を送ることになる。後に「SEX AND THE CITY」を生み出すことになる当時若手だったダーレン・スターと、テレビ界の超大物プロデューサー、アーロン・スペリングが製作したこのドラマは10シーズン続き、スピンオフのドラマ「メルローズ・プレイス」も製作された(こちらも7シーズン続いた)。

現場にしばしば遅刻、共演者と派手な喧嘩も

 しかし、ドハティの度重なる遅刻、また現場の外での派手な夜遊びはしばしばゴシップのネタにされ、”ハリウッドのバッドガール(問題児)”という不名誉なニックネームで呼ばれることに。「ビバヒル」も、主役だったにもかかわらず、第4シーズンの後、番組から追い出されてしまった。共演者でスペリングの娘であるトリ・スペリングは、ドハティとケリー役のジェニー・ガースが叫び合い、暴力を振るうような大喧嘩をすることから、ドハティをクビにしてほしいと父にお願いしたのだと、近年、当時を振り返る告白をしている。ドハティとガースは、その後、関係を修復している。

「ビバリーヒルズ高校白書」のレギュラーキャスト
「ビバリーヒルズ高校白書」のレギュラーキャスト写真:REX/アフロ

 ただし、2006年に死去したアーロン・スペリングは、1998年、ドハティが現場によく遅刻してきたことは事実ながら、彼女に映画のオファーもあったので、話し合いの結果、ドラマからブレンダのキャラクターを消すことになったのだと語っていた。「彼女を嫌っていたなら『チャームド〜魔女3姉妹』に出すはずはないだろう」とも彼は述べたが、実際、ドハティは、「ビバリーヒルズ〜」を去った4年後に、アーロン・スペリングがプロデュースするドラマ「チャームド〜魔女3姉妹」に出演している。しかしここでも現場で共演者と衝突し、3シーズンで去ることになった。

 ほかには、ケビン・スミス監督のコメディ映画「モール・ラッツ」(1995)、「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲」(2001)などに出演。これらの映画ではベン・アフレックも出演している。2006年にはどうやってうまく恋人やパートナーを振るかを視聴者に指南するリアリティ番組「Breaking Up with Shannen Doherty」をケーブルチャンネルで放映開始するが、視聴率は振るわず、1シーズンで中止となった。

 2008年には若者向けチャンネルCWで「新ビバリーヒルズ青春白書」が放映開始し、再びブレンダ役で出演。ガースもケリー役で再登場した。2019年には、ほかのオリジナルキャストも復帰する「ビバリーヒルズ再会白書」が放映されている。最近の出演映画は、2022年のアクション映画「ホット・シート」。テレビドラマ「リバーデイル」にゲスト出演したり、自身のポッドキャストを主宰したりもしていた。

自分を嫌う人たちには「葬式に来てほしくない」

 私生活では3度結婚。最初の結婚の前にはマックスファクターの御曹司ディーン・ジェイ・ファクターと婚約したが、DVが理由で破局。それからまもない1993年秋には、俳優ジョージ・ハミルトンの息子アシュリー・ハミルトンと結婚するも半年で離婚。2002年のポーカープレイヤー、リック・サロモンとの結婚も数ヶ月で取り消された(サロモンはその後、パリス・ヒルトンと交際し、あの悪名高きセックステープを作った)。カメラマンである最後の夫とは2011年から続いたが、ドハティのガンが脳に転移し、大きな手術を受けることになった頃に不倫をしていたと発覚し、昨年、ドハティが離婚申請。離婚は今年、成立した。

 今年1月、ドハティは、自らのポッドキャストで、死んだら遺灰は愛犬と亡き父の遺灰と混ぜ、たくさんの思い出があるマリブに散骨してほしいと語っている。「私の葬式には、私が来てほしくない人も来るでしょう。その人たちは私のことが好きじゃないのに、そうしたほうが自分のために良いからという理由で来るんです」というドハティは、それらの人たちがプレッシャーを感じないように、また本当に自分を愛する人たちだけに囲んでもらえるように、小規模な葬式を望むとも述べていた。

 ご冥福をお祈りします。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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