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「結婚せずにはいられない」ジェニファー・ロペスは、エリザベス・テイラーから希望を得るか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
今週、ジェニファー・ロペスはベン・アフレックに対して離婚を申請(写真:REX/アフロ)

 ジェニファー・ロペス(55)とベン・アフレック(52)の破局が、アメリカのメディアを騒がせている。これでもかというほど熱愛ぶりを見せつけてきたのに、突然口もきかない関係になり、わずか2年で離婚申請となったのだから、関心を集めるのも当然だ。

 ソーシャルメディアやコメント欄などでよく見られるのは、「結婚しなくてよかったのでは」という声。たしかに、それは常識的な考えだ。恋が再燃した時、ふたりにはそれぞれ元配偶者との間に子供がいたし、資産もたっぷりあって、経済的に寄りかかる必要はなかった。少なくともしばらくは事実婚で十分だったはずだ。にもかかわらず、ふたりは関係が復活して1年3ヶ月後に結婚した。

 彼らには、結婚式の直前になって急遽延期し、そのまま婚約破棄となった過去がある。運命の相手と成就できないまま終わってしまったという思いが、「今度こそ」という気持ちを駆り立てたのかもしれない。21年前の結婚式延期はアフレックが思いとどまったせいだったのだが、彼は、自分がなぜあの時先に進めなかったのかを冷静に思い出すこともせず、盲目になってしまった。

 ロペスに結婚願望がとりわけ強いことも関係しただろう。男性として、愛する女性が望むことは、かなえてあげたいものだ。実際、バツ3だったロペスは、豪華なウェディングドレスを着て、家族や友人を呼び、大がかりな結婚式を行っている。「初婚じゃないんだし、今回は地味でいいや」などと、彼女は考えない。愛する人と結婚式を挙げ、みんなに祝ってもらうのが好きなのだ。

途切れることなく相手がいるロペスとテイラー

 結婚歴が4回ある上、ロペスは、婚約破棄歴も2回ある。切れることなく常に男性がいるのも、彼女の恋愛遍歴の特徴だ。別れる前に次が用意されていることもある。アフレックと復活したのも、婚約者アレックス・ロドリゲスとうまくいかなくなっていた時だ。

 最初のアフレックとの恋も、2番目の夫でバックアップダンサーのクリス・ジャッドと結婚していた時に始まった。アフレックと婚約破棄をすると、わずか5ヶ月後に歌手マーク・アンソニーと結婚。アンソニーとは過去にも交際の噂があり、元カレとよりを戻した形だ。アンソニーとの結婚は、彼女にしては長く、10年続いたが、別居した数ヶ月後には年下のバックアップダンサー、キャスパー・スマートと交際している。スマートとは何度かくっついたり離れたりし、最終的に別れた数ヶ月後に交際開始した相手が、ロドリゲスだ。最初の夫はキューバ系のウエイター。その後に交際したのは、ラップミュージシャンのパフ・ダディことショーン・コムズ。

 そこで思い出すのが、エリザベス・テイラーだ。

 8回の結婚、離婚歴があるテイラーは、8回目を除き、毎回、前の夫と離婚した翌年に結婚している。彼女も切れ目がないのだ。リチャード・バートンとの2度目の結婚も、1度目の離婚の翌年だった。離婚してまたすぐバートンと結婚したテイラーと、婚約破棄から約20年後に復活してアフレックと結婚に至ったロペスは、スピードこそ違うが、同じ相手と2度くっついたところも共通する。

 そんなふたりをじっくり比較すると、テイラーのほうがさらに上手と言わざるを得ない。ロペスは55歳にしてバツ4ながら、同じ年齢の時、テイラーはすでにバツ7だったのだ。最初の結婚はロペスが27歳、テイラーが18歳で、テイラーのほうがダントツにスタートが早かったのも大きい。

 最後の夫で、依存症更生施設で知り合った土木作業員のラリー・フォーテンスキーと結婚したのは、テイラーが59歳の時。フォーテンスキーは39歳と、20歳も若かった。結婚式は、マイケル・ジャクソンが所有するネバーランドで、150万ドルをかけて派手に行っている。テイラーのドレスはヴァレンティノがデザイン、招待客にはナンシー・レーガン、ライザ・ミネリ、エディ・マーフィ、デビッド・ホックニー、クインシー・ジョーンズ、ジャクソン、マコーレー・カルキン、「ファニーガール」「追憶」などのプロデューサー、レイ・スタークなどがいた。

テイラーのすばらしいレガシー

 これはロペスに希望をくれる話ではないか。テイラーのように、ロペスだって、60歳近くなってもまた素敵なドレスを着て大がかりな結婚式をし、メディアに注目してもらえるかもしれないのだ。しかも、テイラーは8回も結婚しているので、あと4回やってもおあいこである。

 ただ、彼女にはもうひとつ見習うべき点がある。テイラーは、8回目の結婚式の写真を「People」誌に売って得た100万ドルを使い、AIDSのためのチャリティ団体を立ち上げているのだ。

 まだ人がAIDSにどう向き合っていいのかわからず、差別や偏見、誤解がたくさんあった初期の頃から、テイラーは、アクティビストとして真剣に活動をしてきた。名ばかりのチャリティ活動にちょっとだけ足を突っ込むセレブは多いが、彼女は本物。1992年には、人道活動に貢献した人に対して映画アカデミーが送るジーン・ハーショルト友愛賞を授与されてもいる。

 アカデミー賞といえば、テイラーは女優としても5回ノミネートされ、2回受賞した。一方、ロペスはまだ一度も候補入りしていない。ただし、演技に対する賞というのはそもそもが主観的であり、タイミングやキャンペーンをはじめ、いろいろな要素がからむもの。ベテラン俳優にも候補入りしたことがない人は多数いるし、それを目標とするのは健全ではない。

 なので、賞に関しては、いつかそういうこともあればラッキーくらいにとらえて、テイラーのように名声をポジティブに使って何かできるか考えてみるのはどうか。そんな活動で感心されるようになれば、次の結婚の時にも、もっと多くの人たちからお祝いしてもらえるかもしれない。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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