IBM"自慢"のクラウド特許について
ちょっと前の話ですが、IBMがクラウド関連特許を拡充したとのプレスリリースを出していました。
だそうです(最後の「保持」は元英文ではsecuredなので「獲得した」の方が適切でしょうね)。
出願件数ではなく権利化した件数である点に注意してください。クラウド分野だけで1年に約800件のペースで特許取得していることになります。さすがにIBMの知財力はスケールが違いますね。
クラウドで使われている仮想化等のインフラ関連技術は、概念的には結構古くからあります(たとえば、コンテナーはメインフレーム的な技術です)ので、特許化は難しいのではと思っていましたが、全然そんなことはなさそうです。
さすがに、1,200件チェックするわけにはいかないので、プレスリリースに例として挙げられているうちで最初の特許の内容を簡単にチェックしてみましょう(IBMの自信作ということになると思います)。特許番号9,015,164、実効出願日は2012年11月29日、発明の名称は、High availability for cloud servers(クラウドサーバの高可用性)です。PCT/US2013/051934として国際出願されてますが、日本への国内以降は確認されていません。
クレーム1は以下のようになっています。
一見限定が多いように見えますが、技術的にはそれほど複雑ではありません。基本的アイデアは、本番環境のVMインスタンスごとにバックアップ用のVMインスタンスを用意しておいて、定期的に本番VMインスタンスのスナップショットを取り、前回のスナップショットとの差分(デルタ)のみをバックアップ用のVMインスタンスに送り、バックアップ側ではスナップショットにデルタの適用を行ない、本番環境で障害が発生した時に、バックアップ側のスナップショットで直ちにリカバリするという単純なものです。加えて、システムのパフォーマンスに応じてスナップショットを取るタイミングをポリシーベースで調整するという限定がかかっています。
正直、差分ベースでバックアップするのは技術常識なので、本当に新規性・進歩性を否定できる先行技術はないのかという気がしますが、一応、いくつかの先行技術文献で進歩性を否定した拒絶理由を補正で回避できていますので、うまく広い範囲で権利化できたということなのではないかと思います。