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「10ゴール10アシストは期待しています」、パーソナルトレーナーが語った香川真司の「理想の姿」

浅野祐介ウォーカープラス編集長
(写真:ロイター/アフロ)

香川真司が止まらない。ブンデスリーガ第32節、ヴォルフスブルクをホームに迎えたドルトムントは5-1の快勝を収めた。チームを勢いに乗せたのは香川だ。前半7分に2戦連発となる先制点をマークすると、そのわずか2分後には追加点をアシスト。今季リーグ戦通算「9ゴール8アシスト」とした香川の活躍が、チームを3連勝に導く“原動力”となった。

シーズン終盤に入って好調を維持している香川真司。「9ゴール8アシスト」という数字から、彼のパフォーマンスを支えるパーソナルトレーナーの谷田亮太氏の言葉を思い出す。

「10ゴール10アシストくらいは期待しています」。香川が新たな取り組みとしてスタートさせた動画WEBサイト『SHINJI HOUSE(シンジ ハウス)』がきっかけで話を聞いた際、谷田氏は香川について次のように語ってくれた。香川との出会いと当時の印象、そして日々のトレーニングと期待する「理想の姿」とは?

――谷田さんのキャリア、これまでの歩みを教えてください。

もともとは、フィットネスの業界にずっと携わっていまして、今は何人かのスポーツ選手のパーソナルトレーナーも担当させていただいています。現役時代は陸上をずっとやっていましたが、スポーツクラブ、フィットネス業界にいるときに、エアロビックで2回、世界大会に出場しました。

――香川真司選手との出会いは?

知人の紹介で、彼が19歳の時に知り合いました。

――当時の香川選手の印象はいかがでしたか?

身体はまず、第一印象は……細い、でしたね(笑)。すべてが細いな、と。ただ、スピード感のある動きをしていて、とても光るものがありました。当時から、トレーニングのメニューを与えると習得が早かったですね。まねをすることがすごく上手だったので、「これはいいな」と思っていました。それができない方も少なくないので。顔は、そうですね、今は男前になりましたね(笑)。当時は少年というか、あどけない感じでしたから。

――内面の印象はいかがでしたか?

性格は今のほうが明るい、ですかね。当時から、さわやかでしたが。

――今シーズンの香川選手のトレーニングについて教えてください。フィジカルコンタクトも多いリーグだと思いますが、筋肉の増量を意識しつつ、一方で筋肉をつけすぎると身体が重くなってしまいますよね。そのバランスを考慮した上でのトレーニングにおいて具体的に心掛けていることはどんなことですか?

まず、「重りを使わない」ということについては、よくこの例えをするのですが、ボディービルのように「見せる筋肉」の種目もありますよね。ただ、筋肉がつけばすべてが種目に対してうまくいくということであれば、ボディービルの方が全員、金メダルになります。でも、そうではないので、動きやすい筋肉、動きやすい身体、しなやかな動きのできる骨の動きもしっかりサポートできるような筋肉をベースに、両手両足の四肢が動きやすい状態を作るには、体幹部分が“エンジン”になって、その“エンジン”がターボを上げていく、というふうなイメージで考えてやっています。

――トレーニングは毎日行っているものですか?

基本的には毎日やっています。その日の彼のコンディションと相談しながら、毎日、考えて行う形です。

――本人のモチベーションをうまく高める工夫、飽きのこないように継続してトレーニングできるように工夫しているところはありますか?

僕のトレーニングメニューはそこまでベーシックな動きが多くないと思うので、そういう意味では(飽きもこず)良かったのかもしれないですね。ただ、うまくいっているときは変えるつもりはないですし、やはりある程度は基本となるメニューをベースに肉づけをする形なので、そうですね、確かに彼は飽き性だから(笑)、そういう意味では飽きずに継続できているかなと感じます。

――トレーニングの時間は?

だいたい40分から1時間をめどに、あまり休憩を入れずに行っています。

――シーズンも終盤戦に入りましたが、香川選手の今シーズンのパフォーマンスについてはどう感じていますか?

本当に、うまくいっているかなと感じています。狙っている部分でいえば、先ほどお話しした、「筋力をつけてかつキレが上がる状態」ということと、「ケガをしない」ということがうまくできていますので。トレーニングをうまくすること、準備をうまくすることがメンタルの安定にもつながっていると思いますし、これをできるだけ継続してやっていけたらと考えています。

――「ケガをしない」ということはアスリートにとってとても重要だと思います。日々のトレーニングでケガのリスクを回避していく上でのポイントはどんな部分ですか?

僕の中では、「バランス」だと考えています。バランスをうまく保てる“位置”というのが大事だと思います。トレーニングの中で、筋バランスをうまく取るのですが、結局のところ、脳からの指令がないとそれを記憶しないので、単に何も考えずにやっても覚えません。神経伝達をしっかりと、「ここに力を入れてください」と常に声をかけながら、そういった点を気に掛けながらやっています。

――頭と体のバランスが大切ということですね。

結局、頭が記憶していますからね。例えば、「じん帯をやってしまった」という記憶は一生残ってしまうと思うんですね。それをどうごまかすか、比重をどこの筋肉に置いてあげるか、そういった部分も神経伝達かなと思います。

――シーズン終盤戦のパフォーマンスにおいて、期待している部分というのはいかがですか。

期待しているのは、やはり、ゴール数とアシスト数ですね。10ゴール10アシストくらいは期待しています。あとは、フィジカルの向上とスプリントの向上、そこが前半よりも後半に伸ばせるというのが理想ですね。

――ドイツの選手もトレーニングは熱心に行っているのですか?

ドイツはそうですね、かなり熱心にやっていると思います。イングランドはウェイト、ガンガン系なのですが、トレーニングはドイツのほうが進んでいるかな、と個人的な印象は持っています。ツール、最先端の道具を活用したトレーニングをすごく取り入れたりしていますので。

香川選手のパーソナルトレーナーを担当する谷田氏
香川選手のパーソナルトレーナーを担当する谷田氏

――香川選手の話でいうと、子どもから大人まで自宅でスポーツに手軽にチャレンジできる動画 WEBサイト『SHINJI HOUSE(シンジ ハウス)』(http://shinjihouse.com)をオープンしました。香川選手は文字どおりトップアスリートですが、アマチュアの方、エンジョイプレーヤーの方などスポーツの楽しみ方は人それぞれかと思います。谷田さんも香川選手のサイトにかかわるそうですが、子どもたちが参加する上でアドバイスなどはありますか?

子どもたちには、あまりガツガツと「トップをすぐに目指す」というよりも、楽しんでほしいという想いがあります。もちろん夢を抱くことはとても大切です。ただ、だからといって、誰でもクリスティアーノ・ロナウドみたいな筋肉がつくわけでもありませんから(笑)。「SHINJI HOUSE」では、楽しみながら身体を動かすしてもらえればと考えています。苦しみだけでやっていくのは厳しいと思うので、楽しみを、今はしっかりと感じてもらえればと。トレーニングは「楽しいもの」、「面白いもの」なんだというところから入ってもらえたらと思っています。

――子どもも大人も、親子でも楽しめるサイトというコンセプトですが、親子での取り組みについてはいかがですか?

親子でやるプログラムもたくさん用意しています。一番、楽しみにしているのは、親子で“競ってもらう”ところですね。一般的に、大人になると、脂肪や筋肉が身体にいっぱいついてしまっていて、子どものときのような動きができなくなっている方も多いと思います。大人が見たら「簡単にできそう」って思うようなメニューも、いざやってみると簡単にやってしまうのは子どものほうだったりするんです。そこを競いながら親子で楽しむのも一つの面白さかなと考えています。お父さんもお母さんも、子どもも一緒に競い合う、勝負じゃないですけど、誰が一番上手に筋肉、身体を動かせるか、楽しみながら取り組んでもらえればと思います。香川選手が実際に行っているトレーニングも入っているので、それを誰が一番上手にできるかなど、家族の中でのチャンピオンをまずは作ってもらえたらなと思います。

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――このサイトの構想を最初に聞いたとき、どんな印象を抱きましたか?

香川選手は子どもが大好きだし、これはすごくいいなと思いました。サッカーに関連したメニューでもありますし、そこで親子が触れ合える、“いい家”になるんじゃないかなと思います。

――メニューも随時、追加されていく予定ですか?

そうですね。最初は初歩的なところから、ちょっとずつ難易度を上げていくという感じです。楽しみです。

――自分たちの子どもの頃は、こういったものは存在しなかったですね。

香川選手が実際に行っているトレーニングも紹介されるので、それを体験するということも自信になるかなと思います。それをぜひプラスにしてほしいなと思いますね。

――香川選手が実践しているトレーニングを、自分が見て、やって、というのはなかなかないことですね。

最初は「スーパービギナー」というところからスタートして、長期的なプランとしては、いずれ難易度が上がってくるというイメージです。ストレッチも香川選手が実際にやっているものがあって、そういうものに触れてもらいたいですね。

――親が子どもに「これ、できないの?」って笑われるような場面がありそうですね(笑)。

そうですね(笑)。そういったところで、家族団欒のツールになってくれたらとも思いますね。

今シーズンのブンデスリーガも残り2節。第32節で首位バイエルンが引き分けに終わったため、2位ドルトムントとの勝ち点差は「5」に縮まった。わずかながらに逆転優勝の可能性も残すドルトムント。そのカギを握る香川真司の「ラスト2試合」に注目したい。

ウォーカープラス編集長

編集者/KKベストセラーズで『Street JACK』などファッション誌の編集者として活動し、その後、株式会社フロムワンで雑誌『ワールドサッカーキング』、Webメディア『サッカーキング』 編集長を務めた。現在は株式会社KADOKAWAで『ウォーカープラス』編集長を担当。2022年3月にスタートした無料のプレスリリース配信サービス「PressWalker」では、メディアの観点から全プレスリリースに目を通し、編集記事化の監修も担当。

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