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中国が政府以外の天気予報を禁止 日本は?

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
気象衛星画像(気象庁ホームページより)

中国では今月から、政府以外の天気予報が禁止されたそうです。この件、日本の天気予報の現状についても色々と考えさせられます。

民間の天気予報は禁止

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国が“民間気象予報士”を禁止したと報じた。(中略)

「気象予報発表・伝播管理弁法」が5月1日、公布された。同法では政府所属の気象台以外の個人、組織が風向、風速、気温、湿度などの気象情報を発表することを禁止している。違反者には最低5万元(約97万円)の罰金が科されることになる。また独自の気象予報発表でデマが広がり社会に悪影響が出た場合には責任を追及することも明記された。

出典:Record China

政府機関しか予報が発表できないということは、その予報の精度が悪くても、国民は粗悪な情報を日々、受け取るしかないということです。また、情報のきめ細かさの深化も、期待はできないでしょう。

日本でも許可なしでは罰則

日本では、気象業務法という法律により、許可を受けた気象予報士であれば、民間でも独自予報を広く発表することができます。

許可制になっているのは、技術的な裏付けの無い予報が発表されると、混乱や被害が出るおそれがあるためです。

一方、許可を受けてない人が予報業務を行うと、50万円以下の罰金という罰則があります。

ただ、この罰則は予報“業務”をした場合ですので、「気象庁は台風が来ないと予報してるけど、来るんじゃないの?」といった感想のようなことを一度ネットに書き込んだくらいでは、対象とはならないでしょう。

「感想」が予報のように拡散することも

ヨーロッパ中期予報センターのサイトにある予測図。日本のはるか南にある円が台風。
ヨーロッパ中期予報センターのサイトにある予測図。日本のはるか南にある円が台風。

しかし、「感想」が「予報」のように出回ることも増えています。

たとえば、台風の予測データは、海外の気象機関などがネット上で公開しています。

日本の気象庁の台風予報と、見解が違うこともしばしばですが、そういった気象庁予報と違う情報を、「日本に台風来そう」といった感想とともに一般の人がネットで流せる時代です。

専門家から見て明らかにおかしい気象情報でも、派手な天気図などの画像が付いていれば、誇大な情報が数万人、数十万人にどんどん拡散…そんなことも目にします。

「感想」か「予報」かの線引きは難しく、技術的な裏付けの無い怪しい情報が出回ることは、簡単にはなくならないでしょう。

信頼できる情報の見極めを普段から

中国では今春、巨大台風が近づくというデマが広がったそうですが、日本でも現状がひどくなると、いつかは同様のことが起こるかもしれません。

かといって、気象庁や許可を受けている気象予報士の予報を信じるべき、と言い続けても、それだけでは信じてもらえないでしょう。

(残念ながら、それらの予報でも、誇大ぎみと感じる情報が全くないわけではない。)

結局は、日々の天気予報を見聞きしてもらい、「この情報は信頼できる」「怪しい」という見極めをしてもらうしかありません。

おだやかな日の天気予報の積み重ねが、災害時の情報伝達の質を上げるのだと感じます。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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