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ジダンは3バックの使い手になれず?レアルのセンターバック問題と、補強候補の「アラバ」の名。

森田泰史スポーツライター
レアル・マドリーを率いるジダン監督(写真:ロイター/アフロ)

リーガエスパニョーラ制覇に向けて、機運は高まっていた。

リーガ第24節終了時点で、マドリーは勝ち点52を稼いでいた。首位アトレティコ・マドリー(未消化1試合/勝ち点55)との勝ち点差は3ポイントだった。だが第25節でマドリーがレアル・ソシエダに引き分け、アトレティコがビジャレアルに勝利したため、両者は勝ち点5差で次節のダービーマッチを迎えることになった。

指示を出すヴァラン
指示を出すヴァラン写真:Maurizio Borsari/アフロ

ソシエダ戦では、ジネディーヌ・ジダン監督の采配が議論の的になった。タイスコアの展開で、ジダン監督はハーフタイムに布陣変更を決断。カゼミーロのポジションを下げ、【4-3-3】から【3-5-2】にシステムチェンジした。これが機能せず、ソシエダに先制点を許した。結果的にジダン監督は後半に前線の3枚を入れ替えシステムを戻し、苦戦の中で途中出場のヴィニシウス・ジュニオールが同点弾を記録して勝ち点1をもぎ取った。

「プレスが掛かっていなかったのでシステムを変更した。(後半の10分から15分の間)3バックでプレーしたが、そこから戻して4-3-3でパフォーマンスが良くなった。それがチームに悪影響を及ぼしたか? この会見で3度目の質問だ...その可能性はあったかもしれない」とは試合後のジダン監督の弁である。

また、GKティボ・クルトゥワは「監督が3バックにしてから連携が悪くなってしまった。相手にスペースを与えてしまっていた。特に、ボールを失った後だ。ウィングバックが上がっているところを突かれて、ソシエダのゴールが生まれた。メンディのマークが間に合わず、ポルトゥのゴラッソが決まった」と語った。

カルバハルとS・ラモスが負傷離脱
カルバハルとS・ラモスが負傷離脱写真:ロイター/アフロ

今季、ジダン監督はリーガ第1節延期分ヘタフェ戦で3バックを施行して機能させていた。

【4-3-3】を基本布陣としているマドリーだが、ヘタフェ戦では【3-4-3】を選んだ。ダニ・カルバハル、ルーカス・バスケス、アルバロ・オドリオソラと右サイドバックが負傷していた状況でジダン監督はフェラン・メンディ、ラファエル・ヴァラン、ナチョ・フェルナンデスを最終ラインに据え、マルセロとマルヴィン・パークをウィングバックに配置した。

ヘタフェ戦後のスペイン『マルカ』のアンケートでは、3万1846票が集まり、マドリディスタの大半がシステムチェンジに好意的な見解を示した。「このシステムでチャンピオンズリーグ制覇できる」との回答に71%が票を投じている。

■センターバックの問題

また3バックを使った理由のひとつに、セルヒオ・ラモスの不在がある。S・ラモスが最後に試合に出場したのは1月に行われたスペイン・スーパーカップ準決勝アスレティック・ビルバオ戦だ。右ひざの痛みを完治させるため、最終的には2月6日に手術を行っている。

時を遡れば、マドリーが欧州の大会で安定して上位に名を連ねるようになったのは、センターバックの選手が定まったからだ。

まず、大きかったのはぺぺとS・ラモスのコンビである。マドリーは2007年夏に移籍金3000万ユーロでポルトからぺぺを獲得。2017年夏にぺぺがベジクタシュに移籍するまでS・ラモスとぺぺのセンターバックコンビは後方からチームを支えた。

ただ、ぺぺとS・ラモスのコンビが確立されるまで、マドリーはセンターバック獲得に投資を続けていた。イバン・エルゲラ(移籍金250万ユーロ)、ワルテル・サムエル(移籍金2500万ユーロ)、ジョナサン・ウッドゲート(移籍金2000万ユーロ)、クリストフ・メッツェルダー(フリートランスファー)、ファビオ・カンナバーロ(移籍金1400万ユーロ)、エセキエル・ガライ(移籍金1000万ユーロ)、ガビ・ヘインツ(移籍金1200万ユーロ)、リカルド・カルバーリョ(移籍金800万ユーロ)、ラウール・アルビオル(移籍金1500万ユーロ)と次々に最終ラインの選手を確保していった。

その間、マドリーはセンターバックの獲得に合計で1億650万ユーロ(約136億円)を投じている。

モウリーニョ政権で重宝されたR・カルバーリョ(左)
モウリーニョ政権で重宝されたR・カルバーリョ(左)写真:ロイター/アフロ

ぺぺが去った2017-18シーズンからはヴァラン(2011年夏加入/移籍金1000万ユーロ)とS・ラモスが不動のコンビになった。

だが、そこからが難しかった。

マドリーはS・ラモスの後釜探しを怠っていたわけではない。2015年夏にヘスス・バジェホをサラゴサから獲得。2019年夏には、移籍金5000万ユーロでポルトからエデル・ミリトンを獲得した。バジェホに関してはサラゴサ、フランクフルト、ウルヴァーハンプトン、グラナダとレンタル移籍を繰り返しており、ミリトンについては度重なる負傷に苦しめられている。

遺跡に近づくアラバ
遺跡に近づくアラバ写真:代表撮影/ロイター/アフロ

マドリーは2021-22シーズンに向け、ダビド・アラバの獲得を決定的としている。今季終了時にバイエルン・ミュンヘンとの契約が満了を迎えるアラバだが、契約延長のオファーにサインしなかった。1月19日付のスペイン『マルカ』では一面で「アラバと合意にこぎ着けた」と報じられた。

「アラバが何を考えているかは分からない。7年くらい彼とプレーしていない時間があるからね。アラバとマドリーが関連付けられているのは新聞で知っているけど、詳しい情報は何も知らない」と話すのはトニ・クロースだ。

「バイエルンでレギュラーの選手だ。当然、マドリーで試合に出るクオリティを備えているだろう。実際にどうなるかを見てみよう。レアル・マドリーでは、クオリティは必要だ。ただ、クオリティのある選手は数多くいた。その中で、フィジカルとメンタルを整える必要がある。とりわけ、うまくいっていない時にね。クオリティがあるだけでは務まらない」

クロースが語るように、アラバの適応に関しては不透明なところがある。そして、それ以前に、ジダン監督は2020-21シーズンのセンターバック問題を解決しなければならない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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