遠野なぎこさん「結婚」から2週間で「離婚」~離婚は簡単にできるのか
女優の遠野なぎこさんが3目の結婚を2週間で幕を閉じたことが報じられました。
そこで、今回は「離婚」について民法の観点から考えてみたいと思います。
離婚の目的
結婚生活に不仲は起こりうるし、円満な夫婦生活に回復するように努力を強いることが不可能なことも当然あります。
破綻した、形式だけの婚姻は、婚姻外の性的関係(いわゆる「不倫」)を生むこともありうるなど婚姻の価値を否定することにもなりかねません。
破綻した婚姻から当事者を開放し、再婚や自立の自由を保障することが、民法が掲げる離婚の第一の目的です。
2つの離婚の方法
そこで、民法は、夫婦の間に離婚の合意がまとまり、それを戸籍法の定めるところに従い届け出ることによって成立する協議離婚(民法763条)と民法の定める一定の離婚原因がある場合に離婚の訴えが認められ、判決によって成立する裁判離婚(同法770条)の二つの離婚を定めています。
763条(協議上の離婚)
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
770条(裁判上の離婚)
1夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
協議離婚~9割が当事者の協議で離婚する
日本では、離婚の内、協議離婚は約90%を占めます。協議離婚は、離婚問題を当事者の自主的解決にゆだねます。離婚に対する国の介入を許さない点で、家族のプライバシーを守ることができる制度であるといえます。
協議離婚の前提条件
協議離婚は当事者同士の話合いで解決を模索するため、当事者の対等性や離婚後のことに関して話し合えるだけの理性が双方にあることが前提条件となります。
協議離婚の問題点
夫婦や親子関係の調整を十分につけず、特に財産分与、子の養育費や離婚後の親子の交流についての協議が不十分なまま、離婚届を届け出てしまうケースが多く見受けられます。そのため、離婚後の特に妻の生活と子の福祉が十分に守れない結果を多く生み出しています。
もし、お互いに十分な話し合いがなさない内に、相手側から一方的に離婚届が届出されてしまうおそれがある場合は、不受理申出制度の利用も検討してみてはいかがでしょうか。
日本は簡単に離婚できる?
西欧・アジアの諸国にも、日本の協議離婚のような当事者同士の合意による協議離婚制度はあります。しかし、離婚の真意確認の手続を有していたり、離婚後の財産や子についての取決めがなされていなければならないなど、国家による当事者の保護的側面が強い制度となっています。
一方、国家の介入を許さない日本の協議離婚は、簡単ですが、離婚後に養育費が約束通りに支払われなくとも保護的な手続が用意されていないといった日本の協議離婚は比較的特殊な制度ということができるでしょう。
協議離婚は役所に離婚届を届け出さえしてしまえば、簡単に成立してしまいます。しかし、協議離婚の「協議」とは、「話し合って決めること、またその話し合い」を意味します。
もし、協議離婚を検討しなければならない局面を迎えたら、「離婚する・しない」だけではなく、離婚後の生活も視野に入れた十分な協議を踏まえた上で、合意した内容を公正証書に残すなどしてから判断を下すことが大切ではないでしょうか。