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新型コロナ・ワクチン詐欺電話に注意 だまされないための対策、不安な時の相談先を解説

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

「新型コロナワクチンの接種が受けられます」という詐欺につながる偽電話が、全国で続々とかかってきています。この偽電話の狙いと手口、だまされないための対策を考えます。

狙われやすい対象は? 詐欺は不安に便乗してやってくる

ワクチン接種の偽電話をかけてきているのは、組織的な詐欺集団です。

警察庁が発表した令和元年の特殊詐欺の被害数字によると、65歳以上の被害件数は1万4100件。この数字は被害件数全体の83.7%を占めており、今回の偽電話も高齢者を狙ってかけてきているとみて間違いありません。

詐欺というものは、話題や不安に便乗してやってきます。社会に新型コロナウイルスが蔓延して、これが話題となり、多くの人が不安を抱えているからこそ、この偽電話が頻発しているのです。

偽電話が始まったのは1月初旬。政府から2月下旬よりワクチン接種がスタートし、最初は医療従事者、次に高齢者という順番の発表があったタイミングに便乗してきたのです。それにのってやってきました。

おそらくこのワクチン接種のニュースを聞いた人は、感染への不安から「具体的にどうやったら、ワクチンを受けられるのだろうか?」と思ったことでしょう。

まさに、そうした不安や疑問につけ込む形で、保健局・感染症対策課、福祉保健局の職員を名乗って電話をかけてきたのです。

ワクチン詐欺・偽電話の内容は 「お金」のフレーズが出たら詐欺の疑い

組織的詐欺では、電話をかける際の文言を、マニュアル化しています。ですので、これまでにかかってきた偽電話内容を知ることは、詐欺被害から身を守ることにつながります。

典型的なところでは、

「高齢者を対象にPCR検査やワクチン接種ができます」

「10万円の予約金が必要なので、指定の口座に振り込んでください」といった電話がかかってきています。

PCR検査とワクチン接種とセットにしながら、予約金を請求してくる形です。

ここで、「あれっ?」と思われた方もいるでしょう。その通りです。本来、ワクチン接種の費用は無料だからです。

もちろん詐欺師の側もこれをわかっているので。この点についての説明も準備しています。

目黒警察署からの注意喚起の情報によると、

「検査で陽性が判明した時には、ホテル等での療養が必要になります。接種当日は医療機関に一泊してもらうことになります。ワクチンと宿泊料金は前払いですが、接種後に返金します」といった話を展開するそうです。

この「一度はお金を払うけれども、後で戻します」という言葉は、詐欺でよく使われる常とう手段なので気をつけてください。これを聞いた人の多くは「返金されるなら、良いか」と思って、お金を払ってしまいがちだからです。

さらに、今回のワクチン接種は2回行われることになっています。

ここにも詐欺犯らは便乗してきています。

岡山県では、保健所の職員を名乗って「1回目の接種は無料になりますが、2回目には1万4千円が必要になります」と説明し、「保健所が費用を立て替えますので、振込先の口座番号を教えてください」という電話もかかってくるようです。

【独自】保健所職員名乗り「ワクチン接種費用立て替える」と不審電話 岡山県内で3件確認、県警が警戒強める (山陽新聞デジタル)

くれぐれも、ワクチン接種の話の後に、「お金」のフレーズが出てきたら、詐欺を疑ってください。

偽電話だけでは終わらない その先も想定しよう

詐欺犯らは、単に10万円を取ろうとするわけではありません。10万円の定額給付金が支給された時にも、この話をきっかけに、300万円を騙しと取られた事例もあります。

「『10万円給付』装い詐欺」 (朝日新聞)

このケースを見てもわかりますが、電話をかけた後に、詐欺犯らは手続きを名目にキャッシュカードをだまし取ろうとします。各警察からもこの手の詐欺への警戒が呼び掛けられていますので、充分に警戒してください。

この他にも、支払いを名目にATMへ誘導して、電話で画面を操作させながら、多額のお金を送金させることも考えられます。「予約金を払ってほしい」とコンビニに行かせ、電子マネーのカードを買わせることもあるかもしれません。

この先にどんな詐欺が待っているのか、様々なケースを日ごろから想定しておくことは、詐欺から身を守ることにつながります。

偽電話、不安な時はどこに問い合わせる?

国民生活センターによると「不安を感じるような電話があった時には、居住地の市区町村や、消費者ホットライン『188』に電話をして、ワクチン接種の状況を確かめてください」ということです。

同センターに寄せられた相談には、80代女性の家に行政の保険担当を名乗って電話があり「新型コロナウイルスの接種ができる。10万円の費用については、戻ってくるから、振り込んでください」という電話がかかってきたという事例もあります。

こうした不審な電話があった場合、「対応しないことが大事」とも話します。

実際にこの高齢女性は、偽電話をかけてきた人物から「これからいう番号をメモしてください」と言われて「怪しい」と思い、すぐに電話を切ったそうです。そして家族に相談して被害を防いでいます。

話が本当だろうかと思うと、内容を確かめようとさらに話を聞こうとする方もいますが、それはダメです。すぐ切って、対応しないことが大事になります。

65歳以上の高齢者のワクチン接種は4月以降になり、その前にワクチン接種のためのクーポンを発送するとのことです。予約は電話かネットで行うことになっており、おそらくネットを使わない高齢者の多くは、電話で予約をすることになるでしょう。

高齢者の接種終了まではまだ時間があり、ワクチン接種の予約を騙る偽電話をかけやすい状況が長く続くことになります。

もしワクチン接種に関する不審な電話があった時には、長話はせず、相手の身元を確認してください。そして1人で悩まず、どこかに相談することが、詐欺被害から身を守ることにつながります。

身近に65歳以上の方がいれば、ぜひとも、伝えてあげてください。

【追記】国民生活センターは2月15日から、無料相談のコールセンター、新型コロナワクチン詐欺消費者ホットライン「0120-797-188」(午前10時から午後4時まで)を開設しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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