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これは間違いなく今年の地方大会最高レベルの試合! 神戸国際大付がセンバツ準Vの報徳を破る!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
9回裏の報徳の反撃を抑え、喜ぶ津嘉山(中央)ら神戸国際大付の選手たち(筆者撮影)

 「今年の全国の地方大会で最高レベルの試合!」。これが試合後の率直な感想だった。今やネット配信で、全国どの試合でも見られるようになったが、空気感や感動は現場でしか味わえない。目の前で見られてよかったと心底、思えるような試合は珍しい。それがまさにこの試合だった。最低でも7勝しないと甲子園にたどり着けない兵庫の大会で言えばまだ折り返しの5回戦で、である。センバツ準優勝の報徳学園神戸国際大付の対決は、見る者すべてに感動をもたらす、それほどまでにすごい熱戦だった。

「3連敗はあかんぞ」と国際の青木監督

 この両校は、秋も春も対戦して、いずれも報徳が勝っている。前日のミーティングで、国際の青木尚龍監督(58)は「同じ相手に3連敗はあかんぞ」と言った。エース・津嘉山憲志郎井関駿翔(たおと)のバッテリーを始め、国際は主力に2年生が多い。「3回も負けたら(下級生が)『もう勝てへんのちゃうかな』と思ってしまうでしょ。そこにはこだわった」。普段は控えめな指揮官も、3度目の対戦に闘志をたぎらせていた。

初回に両校得点。その後は国際がリード

 試合は初回から激しく動く。国際が、報徳先発の盛田智矢(3年)を攻めて6番・井関の先制打で1点を奪えば、報徳も津嘉山から3番・堀柊那(3年=主将)の同点適時二塁打で追いつく。

先発した報徳の盛田は4回途中、5安打2失点で降板。「ブルペンではよかったが、緊張感があった。甘いタマを打たれた。エースとしての投球ができず悔しい」と涙を流した(筆者撮影)
先発した報徳の盛田は4回途中、5安打2失点で降板。「ブルペンではよかったが、緊張感があった。甘いタマを打たれた。エースとしての投球ができず悔しい」と涙を流した(筆者撮影)

 これで両校とも今大会4試合連続で初回に得点するという強さ。その後は国際が常に先手を取り、報徳が追う展開となったが、「先行逃げ切り」を得意とする国際ペースのようで、終盤に一打同点、逆転という場面を作った報徳に、いつ流れが変わってもおかしくない緊迫感に満ちた展開だった。

津嘉山は最後まで球威、制球力衰えず

 2点差をつけられた報徳は7回裏、2番・岩本聖冬生(いぶき=3年)の適時二塁打で2-3と1点差に詰め寄り、なおも2死2、3塁で、初回に同点打の堀を打席に送る。報徳にとってこの試合最大の勝機だったが、津嘉山は強気の攻めを見せ、堀をフライアウトに仕留めた。9回にも先頭が出て一打同点の場面を迎えたが、最後まで津嘉山の球威、制球力は衰えることなく、9奪三振125球で完投。勝利の立役者は間違いなく津嘉山で、あまりの完成度の高さには、目を見張るしかなかった。

「津嘉山は目標が高い」と監督も成長を認める

 汗を滴らせながら引き上げてきた津嘉山は、「まっすぐに自信があったし、コーナーの出し入れがうまくいった。最後は(ピンチで)少し焦ったが、抑えられてよかった」と早口で答えた。

力投する国際のエース・津嘉山。春はあとストライク一つから追いつかれ、チームも敗れた。「夏にリベンジと思ってやってきた」と冷静に振り返った。投球同様、話しぶりも落ち着いている(筆者撮影)
力投する国際のエース・津嘉山。春はあとストライク一つから追いつかれ、チームも敗れた。「夏にリベンジと思ってやってきた」と冷静に振り返った。投球同様、話しぶりも落ち着いている(筆者撮影)

 秋以降、体重が100キロをはるかに超える時期もあったが、厳しいトレーニングの成果で10キロ以上の減量に成功。青木監督も「目標が高い。野球が大好きで、長く野球をやりたいと言っている。甲子園に出て、いずれはプロで、と。そのために普段からしっかりやれる子」と津嘉山の成長を認めた。

報徳の堀は、保護者の前で泣き崩れる

 敗れた報徳も、さすがは名門。センバツ準優勝校だった。大角健二監督(43)は、「スタート時は負け、負けでどうなるかと思ったが、よくここまで頑張った。最後まで粘れたし、報徳の野球をやってくれた」と選手たちを労った。

敗退が決まり泣き崩れる報徳の選手たち。この日はラグビー部、バスケ部の選手たちも応援に駆け付け、センバツでおなじみとなった「アゲアゲホイホイ」の大合唱も沸き起こっていた(筆者撮影)
敗退が決まり泣き崩れる報徳の選手たち。この日はラグビー部、バスケ部の選手たちも応援に駆け付け、センバツでおなじみとなった「アゲアゲホイホイ」の大合唱も沸き起こっていた(筆者撮影)

 主将の堀は「3年生全員で、諦めずにやり切れた」と涙をこらえていたが、球場外での保護者への挨拶では号泣し、何度も言葉に詰まりながら、感謝の気持ちを伝えていた。高校野球のラストシーンは、いつの時代も変わることがない。これほど美しく尊い涙があるだろうか。

報徳・大角監督の采配も見事

 この試合はお互いが死力を尽くした熱戦で、最後のアウト一つまでどちらが勝つかわからない展開だった。報徳の大角監督は、盛田の調子が芳しくないと見るや、すかさず今朝丸裕喜(2年)をマウンドに送り、さらに間木歩(2年)も投入した。本来ならもっと引き離されていてもおかしくないほど防戦一方だったが、看板の投手陣は力を出し切って最少失点で耐えた。また、とっておきの代打・宮本青空(3年)を9回の同点機まで温存する(結果はフライアウト)など、大角監督の勝負手、采配は見事だった。

国際のエース万全だったことが勝因

 勝敗を分けたポイントを挙げるとすれば、青木監督が万全なエースに全てを任せられる状態で、試合を迎えられたこと。津嘉山は「(報徳戦は)元気なうちにと思っていたが、先輩が頑張ってくれたおかげ」と話し、3、4回戦で3年生投手陣が踏ん張り、自身が休養できたことを好投の要因に挙げた。しかし頂点まではまだ3勝しなければならない。甲子園に一番近いはずの兵庫代表の座は、とてつもなく遠い場所にある。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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