新型コロナの治療費は、現在も無料なのか?
「5類感染症」に移行してから、新型コロナの定点医療機関あたり感染者数が毎週集計されています。現在、感染者数がじわじわ増えており、5類移行後では最多となっています。入院してくる患者さんからよく聞かれるのが「どういった治療を行うのか?」「抗ウイルス薬や入院費は無料なのか?」ということです。
現在の流行は?
直近の定点医療機関あたりの新型コロナ感染者数は17.84人です。これは集計対象となっている医療機関において、1週間で平均17.84人の新型コロナが診断されたことを意味しています。
5類移行前の最大の波は、累計1万3,000人以上が亡くなった2022年12月の第8波でした。このときの定点医療機関あたりの感染者数は20~30人だったとされています(図1)。
その水準に近づいていることから、中核病院では新型コロナの受診・入院が増えています。
今回、一足先に波が到来した沖縄県はピークアウトしていることから、現在の波もそろそろ収束してくれるのではないかと期待しています。
新型コロナの治療について
パンデミック初期は、新しい抗ウイルス薬が承認されるたびに速報が流れました。それ以降、どういった治療が行われているかよく分からない人が多いと思うので、現在の新型コロナの治療についてまとめてみました(図2)。
初期には抗体薬が用いられていましたが、オミクロン株以降は有効性が低下しており、現在は使用されていません。そのため、図2から割愛しました。
重症化リスクが低い場合、抗ウイルス薬を積極的に使用しません。解熱鎮痛薬などで症状をおさめる「対症療法」を適用します。症状が強い場合に、抗ウイルス薬であるゾコーバ(エンシトレルビル)を使ってもよいとされています。
重症化リスクが高い場合、発症早期であればゾコーバ以外の抗ウイルス薬を使用します。重症化リスクの有無について明確な境界線があるわけではないですが、80歳以上、持病が複数ある、新型コロナワクチン未接種者、呼吸困難などの強い症状、などが該当します。
抗ウイルス薬のうち、軽症例に効果が高いのがパキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)です。ようやく同意書が不要になり、処方しやすくなりました。
パキロビッドが使えない場合、ベクルリー(レムデシビル)という点滴や、ラゲブリオ(モルヌピラビル)というカプセルを使用します。
酸素療法が必要になった場合、当然ながら入院が必要で、ベクルリー点滴に加えて抗炎症薬を併用することがあります。
新型コロナ治療は無料?
結論から書くと、5類移行後は無料でなくなりました。
図2の中では抗ウイルス薬の値段が高額です。あまりにも高いので、5類移行前と同じく、これに関しては全額公費負担となっています。
外来診察費用や検査費用などの通常の外来医療費には自己負担が発生します。
また入院についても、食事代などの通常の入院医療費や、脱水で点滴が必要だったり抗炎症薬の投与が必要だったりする場合、これらも自己負担が発生します(図3)。
入院費が高額になった場合、1~2万円の補助がありますが(※)、多くの入院患者さんは、万円単位の自己負担が発生すると思われます。
- ※正確には高額療養費制度の上限額から、収入に応じて1~2万円が差し引かれます。
また、現在は全額公費負担となっている新型コロナ治療薬についても、10月1日以降自己負担が発生するかもしれません。公費負担の終了に伴い、3割負担の人では抗ウイルス薬処方1回で3万円超の自己負担が発生する可能性があります。
ただ、自己負担額が高すぎると誰も処方を希望しなくなるため、何らかの救済策が期待されるところです。
新型コロナワクチンは無料?
令和6年3月31日までは、新型コロナワクチンは無料で受けられます。
そのため、9月20日以降予定されている「秋開始接種」(2)で使用されるXBB対応1価ワクチンは、費用のことを心配せずに接種可能です。
しかし、令和6年4月1日以降は、特例臨時接種から定期接種に移行する可能性があり、インフルエンザワクチンなどと同じように一部自己負担が発生する可能性があります。
(参考)
(1) 2023年8月25日 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/001138245.pdf)
(2) 公開中 ほぼ全員が対象? 新型コロナワクチン「令和5年秋開始接種」の概要(URL:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e53ac3d2329ea9f132d371455d688a04ba3eac21)