今シーズンから使用 経鼻インフルワクチン「フルミスト」 接種対象と注意点
今シーズンから、鼻に噴霧するタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」の使用が認められています。海外では早くから実用化されていますが、「痛くないワクチン」として期待が高まっています。効果や副作用について解説します。
「痛くない」インフルエンザワクチン
私は子どもの頃、注射されるのが恐怖だったのですが、「全然怖くないやい!」と言いつつ強がっていました。インフルエンザワクチンは例外なく腕に注射されるため、特に小さな子どもではなかなか大変なことがあります。
さて、鼻に噴霧するタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」が今シーズンから使用されます。2003年にアメリカで、2011年にヨーロッパで認可されたもので、世界から大きく遅れて日本でようやく認可されました。
しばらくH1N1という株に対する有効性が疑問視されてきたのですが、保存状態も含めていろいろと改善点が判明し、その後国際的にも推奨されたことが、承認の後押しとなっています。
フルミストは針を刺さないため、「痛くない」というメリットが期待されています(表)。
両鼻に1回ずつ噴霧
フルミストは、0.1mLを両鼻に1回ずつ噴霧することで接種が完了します。鼻の局所免疫だけでなく、その後に全身の防御免疫も誘導するという作用があります(図1)。特に小さな子どもに対しては、従来の注射不活化ワクチンと同等の効果で、感染の成立を約7割減らすとされています(1)。
従来の注射インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですが、フルミストは弱毒化された生ワクチンです。そのため、弱いウイルスに感染したような免疫応答を起こします。
フルミストのメリット
上述したように、「痛くない」というのが子どもにとってありがたい選択肢になるかもしれません。
また、フルミストは、1シーズンに1回接種で終了です。従来のワクチンだと13歳未満の場合、2週間後に2回目の接種が必要になりますが、1回で完了するというのは忙しい親にとっては嬉しいですね。
フルミストの注意点
フルミストの投与対象年齢は、2歳~18歳です。2歳未満の子どもに対しては喘鳴のリスクが増加したという報告があり、使用が認められていません。また、国際的には49歳まで使用可能ですが、日本の薬事承認は年齢が低めに設定されています。
生ワクチンなので、接種後に鼻水やせきなどの風邪症状がみられる場合があります。そのため、喘息や鼻づまりが強い子どもでは、接種を避けたほうがよいでしょう。
この風邪症状、水平伝播のリスクはそこまで高くないと思われますが、周囲に授乳婦、免疫不全のある方がいる場合も、接種を避けたほうがよいでしょう(2、3)。
副反応で風邪症状が出現した場合、生ワクチンなので接種から2週間程度、インフルエンザ抗原検査が「陽性」になってしまう可能性があります。これには注意が必要です。
その他、卵アレルギーやゼラチンアレルギーのある人も避けた方がよいです。
接種費用
フルミストは今シーズンから正式に使用されますが、定期接種ではないことから、任意接種として原則全額自己負担となります。何らかの形で独自の助成を出す自治体があるかもしれません。
任意接種の場合、8,000~9,000円程度かかる医療機関が多いです。定期接種で2回受診しなければならない子どものことを考えると、こちらを選択する方も増えるかもしれません。
(参考)
(1) Jefferson T, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Feb 1;2(2):CD004879.
(2) 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方~医療機関の皆様へ~(URL:https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=607)
(3) Centers for Disease Control and Prevention. Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases (Pink Book) 14th edition. 2021.