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【JAZZ】〔訃報〕クラリネットでジャズの可能性を追求したバディ・デフランコさん逝去

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
バディ・デフランコ『ミスター・クラリネット』
バディ・デフランコ『ミスター・クラリネット』

ジャズ・クラリネット奏者のバディ・デフランコさんが亡くなりました。享年91歳。

デフランコさんは14歳のときに、トミー・ドーシーが主催したアマチュア・スウィング・コンテストでの優勝という華々しい音楽人生のスタートを切りました。まだ10代後半の1940年代初頭にジーン・クルーパーのバンドの一員として活躍、その後もチャーリー・バーネットやトミー・ドーシーのバンドに参加してジャズ・シーンのトップを走り続けます。

1950年代には、カウント・ベイシーのコンボへの参加やリーダー・バンドを率いるだけでなく、ジャズ専門誌「メトロノーム」選出の人気上位メンバーによるメトロノーム・オールスターズで活躍するなど、チャーリー・パーカーのイディオムを理解している数少ないクラリネット奏者として評価される功績を残しました。

1960年代から70年代半ばはグレン・ミラー楽団のリーダーとして活動し、その後はヴィブラフォン奏者のテリー・ギブスとの双頭バンドなどでもさらなる芸術性を発揮していました。

ジャズの変遷に対応した柔軟なイノヴェイター

バディ・デフランコさんが活動を始めた1940年代は、ジャズ・シーンではビバップが台頭、いわゆる“潮目が変わった”と言われる時期でした。

それまで隆盛を誇ったスウィングのシーンにおいて、クラリネットという楽器は“花形”に位置していました。ジャズをイメージづける艶やかでちょっとエロチックなサウンドに欠かせない存在であったことは、シドニー・ベシェやベニー・グッドマンといったビッグ・ネームを引き合いに出すまでもなく誰もが認めるところでしょう。

一方、テンポアップしコード・チェンジも激しいビバップでは、コントロールの難しいクラリネットではなくサックスが注目されるようになったのも事実。

しかし、より繊細で音色が美しいクラリネットの可能性を追求する“マエストロ”の系譜も途絶えたわけではなく、このバディ・デフランコやウディ・ハーマン、エディ・ダニエルズがしっかりと受け継ぎ、さらに磨きをかけてきたと言えるでしょう。

最近では、来日したパキート・デリベラやリチャード・ストルツマンが、ジャズとクラシックの垣根を越えたクラリネットならではの可能性をさらに広げる活動も見せています。

ジャズが大きく変貌した20世紀半ばのシーンで常に最前線を走り続け、イノヴェイター(革新者)として偉大な功績を残したのがバディ・デフランコさんです。

ご冥福をお祈りいたします。

Flying Home- Buddy DeFranco 1991

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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