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そのつぶやきは「つぶやき」では無い

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ ツイッターでの「つぶやき」は本当の「つぶやき」とは似て異なるもの

ツイッターの「つぶやき」は本当の「独り言」ではない

ソーシャルメディアとしてはFacebook同様に世界中に認知され、近々上場も果たすツイッター。短文によるやり取りを得意とする日本人の間にも2008年~2009年あたりから浸透し始め、今では類似の閉鎖型コミュニケーションツール「LINE」と共に、多くの人に受け入れられている。

このツイッターとは簡単に説明すると、「パソコンや携帯電話から最大で140文字までの『つぶやき』と呼ばれる投稿ができる、簡易型のブログ。特定人物のアカウントをフォロー(登録)しておくことで、その人の新規投稿をすぐに受信できる」というもの。複数のアカウントを登録すれば、自分の最新情報を伝える画面(タイムライン)には、次々に新規投稿を眺め見ることができる。

ところがツイッターでの記事投稿「ツイート」を「つぶやき」と訳されてしまったことで(本来は「さえずり」である)、ツイートを本当の独り言的なつぶやきと勘違いして認識している人が後を絶たない。そして自分の「つぶやき」にツッコミが入ったり絡んでくる事例があると、「俺の独り言に文句を言うな」と逆切れする。特に言論を生業とするジャーナリスト、報道関係者や、かつてその立場にあった人のアカウントの類にその傾向が強い。

しかし彼らの主張には無理がある。本当に身内だけでのひそひそ話や、新聞を読んでいる最中の独り言、日記の中での話なら「ツッコミするな」という反論も理解はできる(というよりそのツッコミ自身が不可能)。しかしツイッター上のツイートは、「つぶやき」と呼ばれているものの、実際には公衆の面前に向けたブログの書き込み、情報公開でしかない。直上で解説したように、ツイッターは「つぶやき(ツイート)」と呼ばれるミニブログの連結スタイル、見せ方を上手く工夫したサービスなのである。公開ブログ上で書いた文言に突っ込まれたり、否定意見を受けたり、真意を問いただされるのは当たり前の話。

↑ 各ツイートは独自URLが割り当てられたミニブログでしかない
↑ 各ツイートは独自URLが割り当てられたミニブログでしかない

もし「独り言をしたかっただけ」という意図でツイッターをはじめていたのなら、情報の開示・披露や他人との交流・情報交換はまったく考えていないのなら、チラシの裏、もとい自前の日記帳やパソコンの文章ファイル上にでも書けばよい。ツイッターのシステムを気に入っているのなら、「つぶやき」にロックをかけて非公開モードにすれば良いだけの話。それをしない以上、自前の発言は誰にでも自由に閲覧され、意見を述べられ、反論を受ける可能性を認めねばならない。

この考えはFacebookをはじめとした他のソーシャルメディアでも変わらない。しかし書込みのことを「つぶやき」と和訳されたり、操作画面の見た目から、ツイッターは単なるチャットシステムで発言は記録されずに流され、不特定多数には閲覧されないと誤解されることがしばしばある。必然的に、このような「独り言的ツイート」への認識のずれが生じやすい。

中には「ツイッター上のツイートは自分の意志の発言も含め、スクラップブック代わり」と表明する人もいる。だから文句を言うなということらしい。だが自分のためのスクラップブックを第三者に公開し、その上でツッコミを入れるなというのは、かなりの無理がある。

いつもツッコミする側が逆の立場になると起きる過剰反応…?

このような誤解は当方の見た限りでは、上記にある通り、言葉を生業のツールとして用いる従来メディアの(元)関係者や、それ周辺の専門家に多い。そしてツッコミを受けると、奇妙なことに高い確率で「独り言や内輪の話なのだから突っ込みを入れるな」「文句を言うな」と逆切れをしたり、「自分は糾弾されている」と被害妄想に陥り世の中の危機を支持者に訴えてくる。彼らは生業として政治家や専門家の言動、彼らの内輪での話に対して、さらに時には的外れで攻撃的な内容のツッコミを行い、それを第三者に知らしめる。にも関わらず、自らが同じような行為を受けることには慣れておらず、往々にして過剰反応を示すようだ。剣道で攻撃主体の選手がいざ防御に回ると、概して弱いのと同じだろうか。

そのような反応を示した人たちが「今まで貴方たちがしてきたことを、貴方自身が同じように受けているだけですよ。しかもあなたたちが行ってきた、時として、そして場合によっては往々に見当違いのツッコミではなく、より専門的な、正しい知識に基づいたものも多いはずです」と諭されたら、いかなるリアクションを示すのか。

欧米の報道関係者やその周辺の専門家は、多くが独自のソーシャルメディア上のアカウント(Facebookやツイッター)を持ち、独自の意見を展開し、正当かつ必要なツッコミには相応のレスポンスをしている。その行動を通して自らのブランド力を高め、記事の品質の裏付けを成し、媒体そのものの牽引力として所属メディアに貢献している(あまりにもフォロワー数が多いとレスポンスも困難なため、あまりやり取りは行われなくなるが……)。

↑NYT紙記者で最大のフォロワー数を有するDavid Pogue氏
↑NYT紙記者で最大のフォロワー数を有するDavid Pogue氏

ともあれ、特に報道関係者・「ジャーナリスト」の肩書を持つ人に多い、ツイッターを「自分の独り言」+「他人の独り言をのぞき見れる」ツールと誤認し、第三者に自分の意見を披露して肯定的な意見にはうなづいたり自分のフォロワーに知らしめる一方で、何か突っ込まれたり反論したら「(公開している意識の無い)独り言に文句を言うな」と都合の良いことを考えている方々には、今すぐ考えを改めてほしい。ツイッターは(ロックをしていない限り)発言はすべて公開されており、第三者に指摘反論ツッコミをされ得るものなのである。

もちろん、ツッコミなどに対応する義務はまったく無く、極論としてすべて聞き流しをしても一向に構わないのは言うまでもない。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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