「年のせい」と見過ごされがち 「間質性肺炎」とは
肺はスポンジのようにふわふわとした臓器ですが、これがかたくなってしまう「間質性肺炎」という病気があります。「インターネットで調べてもよく分からなくて・・・」と言われることが多い疾患ですが、これについて解説したいと思います。
調べても分かりにくい理由
「間質性肺炎」と検索しても、「進行する肺の病気」「何万人に1人の珍しい病気」のようなネガティブな情報が多く、その一方で呼吸器内科外来には多くの間質性肺炎の患者さんが通院している現状があります。何が正しい情報なのか、患者さんにとって分かりにくい状況です。
主な理由は、「間質性肺炎」には多くの病気が含まれており、個人差が大きいためです。
これは一体、どういうことでしょうか?
そもそも「間質」とは
肺とは、小さな袋(肺胞:はいほう)が集まっている臓器です。この中にはたくさんの空気が含まれています。肺はよくスポンジや風船にたとえられます。
新型コロナや細菌などの感染症による肺炎は、病原微生物を吸い込むことで風船の中に炎症を起こします。
いっぽう、風船の「壁」にあたる部分、すなわち風船のゴムの部分にあたるのが「間質」です。この薄い壁には、血管やリンパ管などの構造物が存在します。
ここに炎症を起こすのが「間質性肺炎」です(図1)。
感染症による肺炎は、抗菌薬や抗ウイルス薬で軽快しますが、間質性肺炎は「原因」を除去することが必要になります。
しかし、この「原因」がたくさん存在するのです。中には原因がはっきりわからない、「特発性(とくはつせい)」と呼ばれる間質性肺炎も存在します。
何なら、炎症が起こっていない疾患もあるので、最近は「間質性肺疾患」という呼び方が主流となっています(図2)。こうした学問的な難しさもあって、認知度が低いのです。
一般的な「肺炎」との相違点
感染症による肺炎とは異なり、間質性肺炎の経過は長くなりがちです。炎症が長引くと、次第に風船のゴムが固くなり、肺が膨らみにくくなってしまいます。
これによって肺活量が低下し、酸素の取り込みが低下してしまいます(図1)。
原因が除去できない場合や進行性の場合、肺全体の機能が落ちてしまい、日常生活に支障が出ることもあります。
間質性肺炎を疑う症状は?
間質性肺炎では、息切れや長引く咳などの慢性の呼吸器症状を自覚することが多いです。しかし、人間ドックなどで肺のCT検査をおこない、無症状のうちに早期診断される事例も最近増えています。
また、症状の幅が広く、「年のせいだろう」となかなか気づかれず、医師への相談が遅れてしまうことが多いのもこの病気の特徴です。特にコロナ禍では、こういった慢性の病気は診断が遅れがちです。
治療法は?
たくさんの病気が含まれるため、間質性肺炎の治療は原因によってさまざまです。原因が分かっている自己免疫性疾患や薬剤などによる間質性肺炎の場合、そちらの方をコントロールすると病態がよくなることがあります。
進行の度合いも千差万別で、ネット上にはいろいろな情報が飛び交っています。一人ひとりの経過が異なるため、「どの程度大丈夫か・よくないか」が断言は難しいです。
すべての人に治療が必要というわけではありません。人間ドックなどで見つかり、ほとんど症状がない場合、進行しなければ経過観察することもあります。
また、原因が分からない場合、手をこまねいて何もしないというわけではありません。間質性肺炎が進行して固くなる「線維化」という現象を抑えるため、抗線維化薬が、病気ごとに使われるようになっています。
まとめ
ヒトの肺は等しく老化していきますが、間質性肺炎があると、そのスピードが速くなりがちです。そのため、早期発見・早期介入が重要になります。
「間質性肺炎」は非常に広い範ちゅうの病気で、受診する前にインターネットで調べても、学問的に難しいことからなかなか解決にいたりません。数か月以内に治る病気もあれば、何年にもわたり付き合っていく病気もあります。
「年のせいだろう」と見過ごされがちな病気なので、気になる息切れや長引く咳がある場合は、呼吸器内科を受診してください。
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