北朝鮮国営の朝鮮中央通信は22日、偵察衛星の打ち上げに成功したと報じるとともに、早期に複数の偵察衛星を打ち上げる計画だと明らかにした。しかし、外部に向かっては強気を通していても、国内には経済難を背景とした治安の乱れが見られる。

　北朝鮮の首都平壌郊外や地方都市でよく見られるハーモニカ住宅。元々あった大きな家を壁で区切り、5〜6世帯が住めるようにした長屋のことを指す。各部屋には家族全員が寝食を共にする部屋と炊事場があるだけで、トイレは共同のものを使う。日本式に言えば、風呂なしトイレなしで広めの1Kと言ったところだろうか。

　共同トイレに溜まった糞尿は、畑に撒く堆肥を作るのに使われる。そんなトイレでバラバラになった遺体が発見され、市民の間に不安が広がっている。咸鏡北道（ハムギョンブクト）のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

　事件が起きたのは北東部の清津（チョンジン）市羅南（ラナム）区域のある共同トイレだ。今月初め、汲み取り作業を行っていた住民が、人糞の中から遺体を発見し、人民班長（町内会長）が、清津市安全部（警察署）に通報した。遺体はバラバラにされ、激しく損傷しており、当初は性別がわからないほどだった。

　安全部は、今年に入って金品目的の殺人事件が複数発生しており、今回の事件も同様のものだと見ている。また、犯人がトイレに遺体を遺棄することで、人糞で遺体を腐敗させて被害者の身元がわからないようにして、追跡を逃れようとする意図があったものとも見ている。

（参考記事：美女２人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた）

　園子温監督の映画『冷たい熱帯魚』のベースになった、埼玉愛犬家連続殺人事件の北朝鮮版といったところだろうか。

　実際、捜査線上に浮かび上がった人物は今のところおらず、トイレから長い頭髪が発見されたことなどから、被害者が女性であったことしかわかっていない。

　情報筋は、「殺人が増加する中で犯行の手法がどんどん巧妙になり、捜査には限界があるので、犯罪者はさらに大胆になっている」と述べ、市民の間で不安が広がっているとも伝えた。

「多くの人が毎日使う共同トイレで死体が発見され、それが噂で広がり、住民の間に恐怖が広がっている」

　統計が公表されていないため詳細は不明だが、コロナ明けの北朝鮮では金品や食べ物目当ての強盗殺人が増加し、治安が悪化していると伝えられている。

　北朝鮮政府が新型コロナウイルスの国内流入を恐れるがあまり、国境を3年半にわかって封鎖し、国内は深刻な食糧難に陥った。ここ数ヶ月で国境が段階的に開かれたものの、依然としてコロナ前の状況を取り戻すには至っていない。また、コロナ禍をきっかけに、従来の国主導の経済システムを取り戻そうとしていることも、混乱に拍車をかけた。

　北朝鮮の人々の苦しみは、国家が自ら生み出したものなのだ。