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【獣医師の解説】帰宅したら犬がぬいぐるみをボロボロに… なぜ大惨事は起きた?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:Paylessimages/イメージマート)

今年も残すところ、数日になりました。

コロナ禍なので、家で過ごす時間が長かったですね。それで、大掃除をしないと、と思っていたら、犬が、ブンブンと振り回してボロボロにした「ぬいぐるみ」の破片が落ちていたりします。

今日は、「なぜ、犬はぬいぐるみをボロボロにするのか?」を考えてみましょう。

なぜ、犬はぬいぐるみをボロボロにするのか?

(動画は投稿者の許可をもらっています)

家の中に多くのものがありますが、犬は、なぜ、ぬいぐるみをボロボロにするのか? を考えてみましょう。以下のような理由です。

・狩猟行動

写真:PantherMedia/イメージマート

ぬいぐるみをくわえてボロボロにするのは、狩猟本能の名残りと言われています。

特に、子犬はこの傾向が強く、育つ過程でまわりにあるものすべてを探求するようにできているのです。野生の世界では、犬は肉食ですが、猫に比べて融通がきいて、肉以外のものも食べてくれます。

自然界にいる獲物を知るために、口に入れ確かめてみるのです。もちろん、いまは、飼い犬ですが、その祖先の血がわずかでも残っているのでぬいぐるみをくわえます。

・飼い主のニオイがついている

写真:Paylessimages/イメージマート

ぬいぐるみは、飼い主のニオイがついていることが多く、犬はそれで余計に執着します。特に飼い主がお気に入りのぬいぐるみは、愛犬に狙われやすいので注意しましょうね。

・歯の問題

写真:PantherMedia/イメージマート

犬は、生後4カ月から生後6カ月で永久歯に生えそろいます。その時期、歯がかゆいので、なにかを噛みたいという衝動にかられるのです。そのためぬいぐるみを噛みます。

・遊びの行動

写真:アフロ

愛犬はぬいぐるみを振り回し、破壊することを楽しんでいます。

ぬいぐるみは、綿など入っているので、引っ張れば、中からたくさん綿が出てくるので、面白いのでしょうね。同じような行動で、ティッシュを引っ張り出して遊ぶ子もいますね。それも次から次へとティッシュが出てきます。飼い主が、帰宅して部屋に入れば、そこここにティッシュだらけということもあります。同じように、ぬいぐるみの綿が部屋中に散乱していることもあります。

・欲求不満

写真:PantherMedia/イメージマート

全ての犬が、ぬいぐるみをボロボロにするわけではないです。

退屈や欲求不満から攻撃的になると考えられます。犬はひとりにされるのが、嫌なのです。このようにぬいぐるみを破壊して、注目されたいなどもあります。他に問題となるような症状は、分離不安による吠えや破壊行動もあります。

他の同居動物を持ち上げて振り回す行動が見られるのなら、かなり真剣に対処を考えた方が良いでしょう。

ぬいぐるみを破壊しやすい犬の傾向

・運動不足

犬は、猫と違ってお散歩が必要な動物です。チワワやトイ・プードルなどの小型犬でもやはりお散歩をさせることは、必要ですね。いまの時期は、寒いので、温活をして外に連れていくことは、大切です。外に出ると家の中と違ったニオイもあり、それもいい刺激になります。

コロナ禍で犬を飼い始めた人は、犬はお散歩が必要な動物だということを知っておいてあげてくださいね。

・雄の方が多い

雌の方が、比較的ぬいぐるみをボロボロにしないです。この行為は、雄の方が多いです。狩猟本能が強いからなのでしょう。

・お留守番が多い

猫は、単独生活の動物です。その一方、犬は群れ社会の動物なのです。そんな犬は、飼い主がテレワークの仕事が終わり会社に行っているので、寂しいのです。いままで、あれだけ一緒にいてくれた飼い主はいてくれません。そのため、犬は、ぬいぐるみを振り回すことになるのです。犬は不安になり、いらいらしているのです。

・若いエネルギーがある犬

ぬいぐるみを振り回すには、エネルギーがいります。そして、口腔内のトラブルのある子(歯が痛い、歯周病がある)はそのようなことはしません。そのため、若くて元気な子がします。

筆者は、18歳の愛犬と暮らしていますが、いまでは、全く物を噛んだりしなくなりました。自分の体が思うように動けないので、そのようなことはできないのです。

・分離不安

飼い主が自宅にいるときは、愛犬は、飼い主がお風呂やトイレに入れば、そこでじっと待っていることもあります。まるでストーカーのように。そのような子は、飼い主から離れると不安になる「分離不安」の傾向が強いです。

過度になると、治療が必要なときもあります。そのような分離不安ぎみの子は、ぬいぐるみをボロボロにすることがあります。

ぬいぐるみで遊ぶ子の注意点

写真:アフロ

ぬいぐるみの目や鼻、そして中の綿などを食べてしまうと、胃や腸で詰まることもあります。破壊だけでなく、食べている子は、絶対に、犬の届かないところにぬいぐるみをおいてくださいね。

消化器で詰まると命の危険もあります。

解決策

ぬいぐるみに異常に執着しているな、と思ったら以下のことをしてあげてくださいね。

・スキンシップを多くする

好意を持っているもの同士が、触れ合うことで、愛情ホルモンであるオキシトシンが分泌されるといわれています。そのため、愛犬もスキンシップの時間を多くしてあげてください。

・家にいる時間を長くする

やはり犬は、群れ社会の動物です。犬の傍らにいて、群れを組んで愛犬を安心させてあげましょう。

・お散歩の時間を増やす

運動することで、犬もストレスを発散させることができます。そのため、寒い時期でも温活しながら、お散歩させてあげましょう。

・小さい子犬のときから、ひとりになる訓練を

小さい子犬のときから、ひとりになることに慣れさせておくといいですね。

出かけるときは「行ってきます」とか挨拶などしないで、すんなり出かけた方がいいですね。

というのは、飼い主が出す、出かけるストレスなどを愛犬が察するからです。音楽をかけておくなどもいいかもしれません。

・分離不安の子は、治療をする

過度に飼い主につきまとう犬は、分離不安かもしれないので、かかりつけの動物病院に相談してみてください。治療をすれば、治る子もいます。

まとめ

写真:アフロ

いまや愛犬は、室内で飼う時代になりました。

庭で犬を繋ぐというライフスタイルから変化しています。そのため、家の中では、おとなしくしてもらいたいのです。

過度に、狩猟本能をむき出しにされると攻撃性の強い子になることもあるので、よく愛犬を見ておいてあげてくださいね。愛犬は、飼い主であるあなたの行動を見て、そしてニオイでいろいろとわかっています。ぬいぐるみを破壊する愛犬の心理を推測すると、心の奥がわかり、余計に愛おしくなりますね。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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