台風23号が「世界史上最強クラス」といわれる理由
今日11月8日は暦の上で「立冬」です。立冬とは「秋が極まり、冬の気配が立ち始める時期」のこと。北海道では雪が降り、東京でも朝晩の冷えが身にしみて感じられる季節となってきました。
一方で海上ではいまだ複数の台風が渦を巻いています。
特に日本の南東の海上に発生している台風23号(国際名:ハーロン)は、大発達を遂げました。
気象庁によると、6日(水)の中心気圧は905hPa、最大風速は60m/sで、15号や19号より強く、今年最強の台風となりました。
実はこの台風、今年最強どころか、もしかすると「世界史上最強クラス」である可能性が囁かれています。なぜでしょう。
アメリカのウィスコンシン大学のホームページには、23号の中心気圧が推定で892hPaまで下がったと書かれてあるのです。これは、気象庁の発表した気圧と13hPaも低いことになります。
台風の解析方法の違い
●ドボラック法●
この差は、台風の解析方法の違いに起因します。
台風の強さは「ドボラック法」を用いて決定されています。ドボラック法とは、1970年代にアメリカの気象学者ヴァーノン・ドボラック氏が考案した、気象衛星画像から強度を推定する方法です。
具体的には、台風の雲のパターンから「CI数」と呼ばれる台風の強さを決定して、そこから下のような表に照らし合わせて最大風速や中心気圧を推定するのです。
●新ドボラック法
一方でウィスコンシン大学はドボラック法を元に独自の「新ドボラック法」を開発しています。23号の中心気圧892hPaというのは、この解析方法を用いた値です。
新ドボラック法で最強と記録されている台風は、1位がハリケーン・パトリシア(2015年メキシコ上陸)、2位が台風・ハイエン(2013年フィリピン上陸)、そして3位が台風・チップ(1979年日本上陸)となっています。今回の23号は、上位10位以内に入ってくる可能性があります。
ではどちらの方法が真実に近いのでしょう。
一例ですが、2004年のハリケーン・アイヴァンの例において、新ドボラック法の値の方が気象偵察機を飛ばして測った実測値に近い数字が出たという結果が出ています。
さよなら、23号
いずれにせよ、これほどの規模の台風が立冬のシーズンに現れるのはそうあることではありません。11月以降に中心気圧が905hPa以下に下がった台風は、1951年からこれまでに13例しかないのです。
23号の国際名ハーロン(Halong)の名前の由来は、ベトナム語のハロン湾ですが、フィリピンのイロンゴ語では「さよなら」を表す単語でもあるそうです。ハーロンは名前の通り日本から遠ざかっており、ほっとひと安心です。
***参考文献***
"Reprocessing the Most Intense Historical Tropical Cyclones in the Satellite Era Using the Advanced Dvorak Technique" (PDF)
"The Advanced Dvorak Technique: Continued Development of an Objective Scheme to
Estimate Tropical Cyclone Intensity Using Geostationary Infrared Satellite Imagery" (PDF)
"台風の強度推定" 気象庁気象研究所