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令和初の台風(台風3号)が発生、即上陸へ

饒村曜気象予報士
日本をうかがう2つの熱帯低気圧(6月26日15時)

令和初の台風は即上陸か

 沖縄近海には2つの熱帯低気圧があって、ともに北上しています。

 このうち、北にある熱帯低気圧は、対馬海峡を通って日本海に入り、温帯低気圧に変わる可能性があります。

 また、南にある熱帯低気圧は、発達して最大風速が毎秒17.2メートル以上となり、台風となる見込みです(図1)。

図1 地上天気図(6月26日15時)と予想天気図(6月28日9時の予想)
図1 地上天気図(6月26日15時)と予想天気図(6月28日9時の予想)

 令和初の台風です。

 平成31年(2019年)は、平成期間中の4月までに台風が2個発生していますので、令和元年(2019年)に最初に発生した台風は、平成最後の年の台風を引き継ぎ、令和3号です。

 台風のデータベースが作られているのは、昭和26年(1951年)以降ですので、昭和から平成に元号が変わったときも同じことが起きています。

 ただ、昭和最後の年である昭和64年(1989年)は、1月7日までしかなかったため、この間の台風発生はありませんでした。

 つまり、昭和64年(1989年)の台風発生数0個を引き継ぎ、平成元年(1989年)は、台風が32個発生しています(表)。

表 元号変更前後の台風の月別発生数
表 元号変更前後の台風の月別発生数

日本周辺の発達する熱帯低気圧に関する情報

 気象庁では、平成17年(2005年)6月1日から、「日本周辺の発達する熱帯低気圧に関する情報」を提供しています。

 これは、24時間以内に台風になると予想した熱帯低気圧のうち、日本に影響があるものについては、その実況と今後の予測を台風情報に準じた形で提供するというものです。

 情報提供のきっかけは、前年、平成 16 年(2004年)8月4日9時に紀伊半島の南海上で発生し、13時間半後の4日22時半頃に徳島県東部に上陸した台風11号です。

 このとき、既存の台風情報では事前に危険性が十分に伝わらず、適切な防災対応を執ることが難しい場合があるとの指摘がありました。

 現在、沖縄近海の熱帯低気圧についても、「日本周辺の発達する熱帯低気圧に関する情報」が提供されています(図2)。

図2 熱帯低気圧aの進路予報
図2 熱帯低気圧aの進路予報

 この記事を書いている時点において、まだ台風ではありませんので、「熱帯低気圧a(複数個ある場合に区別するためのアルファベットが付加されています)」についての情報です。

 この予報によれば、熱帯低気圧は、種子島近海を通過した頃から台風に変わり、場合によっては、台風発生から半日で四国から紀伊半島に上陸の可能性があります。

【追記(6月27日19時)】

熱帯低気圧は、6月27日18時に、室戸岬の南南西海上で、台風3号に発達しました。

小さくなった予報円と5日先までの台風の強度予報

 令和以降に発生した台風については、台風強度予報が、これまでの3日先から5日先に延長になり、早めの警戒が可能になっています。

 ただ、現在北上中の「熱帯低気圧a」については、台風発生後すぐに上陸するか、台風にとっては海面水温の低い海域を北上する予報なので、5日先まで台風として存在しない可能性が高いと考えられます。

 台風強度予報が、5日先に延長になるといっても、その効果がでるのは令和4号以降と思われます。

 ただ、予報円の大きさについては、昨年までに比べ、20%ほど小さくなっています。

 予報円の大きさは、台風の進路予報誤差に対応していますので、精度が上がると小さくなります。つまり、近年の技術革新の成果です(図3)。

図3 台風の進路予報誤差の移り変わり
図3 台風の進路予報誤差の移り変わり

 予報円が始まった頃の24時間先(1日先)までの進路予報の平均誤差は200キロメートル以上ありました。これは、現在の3日先までの進路予報の平均誤差です。

雨に警戒

 熱帯低気圧aが台風になっても、ならなくても、南海上から多量の水蒸気を運んでくることにはかわりがありません。

 図4は、6月27日9時の1時間雨量の予想図ですが、日本海にある梅雨前線に伴う雨域(図中A)、北にある熱帯低気圧に伴う雨域(図中B)、南にある熱帯低気圧(または台風)に伴う雨域(図中C)があって、それぞれ大雨をもたらす可能性があります。

図4 予想雨量(6月27日9時の1時間雨量)
図4 予想雨量(6月27日9時の1時間雨量)

 気象台等の発表する台風情報等に十分注意し、警戒してください。

連日の雨に警戒

 ただ、警戒するのは2つの熱帯低気圧だけではありません。

 2つの熱帯低気圧が通過した後、本州付近は梅雨前線が停滞し、梅雨のない北海道と、まもなく梅雨が明ける沖縄を除くと、連日雨が降る予報です(図5)。

図5 各地の10日間予報
図5 各地の10日間予報

 連日の雨は、土中の水分を蓄積させ、崖崩れなどの土砂災害が発生しやすくなります。

 雨が降り続いたあとに降る雨については、より一層の警戒が必要です。

タイトル画像、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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