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里見香奈女流四冠、加古川青流戦でも快進撃! 棋士編入試験受験の先人・折田翔吾四段に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月19日。大阪・関西将棋会館において第12期加古川青流戦の対局がおこなわれました。結果は以下の通りです。

【2回戦】里見香奈女流四冠○-●柵木幹太三段

【3回戦】里見香奈女流四冠○-●折田翔吾四段

 里見女流四冠は4回戦(準々決勝)で齊藤優希三段-石井直樹アマ戦の勝者と対戦します。

 8月から棋士編入試験受験が始まる里見女流四冠。一般公式戦では受験資格取得後もさらに勝ち星を重ね、現在9連勝中です。(7月24日放映予定のNHK杯をのぞく)

出雲のイナズマ一閃

 加古川青流戦は四段、奨励会三段の上位、女流棋士2人、アマ3人によるトーナメントです。持ち時間は各1時間とスピーディーなので、1日のうちに2局指されることもあります。

 女流は今期、里見女流四冠と西山朋佳女流二冠の2人が参加しています。西山女流二冠は2回戦で長谷部浩平四段に敗れました。

 里見女流四冠は2回戦、まず柵木三段と対戦。先手で得意の中飛車に振り、127手で勝利を収めました。

 続く3回戦は折田四段との対戦です。折田四段と里見女流四冠にはいくつか共通点があります。

 両者はかつて奨励会に所属。三段にまで進みながらも、難関のリーグを抜けることはできませんでした。

 折田三段は年齢制限を迎える最後の期、負け越しで退会が決まったあと、里見三段に勝っています。その白星は、直接的には四段昇段につながるものではありませんでした。しかしのちの折田さんの人生には、いい影響があったのかもしれません。

 奨励会を退会したあと、トップアマとして活躍した折田さん。一般公式戦でプロを相手に好成績を収め、棋士編入試験受験に至ります。そして五番勝負で強敵を相手にして3勝をあげ、見事に合格を勝ち取っています。

 里見女流四冠にとって折田四段は、棋士編入試験受験の先人ということになります。

 両者久々の対戦は里見女流四冠先手で中飛車となりました。まず中盤でリードを奪ったのは里見女流四冠。しかし折田四段も追い込んで勝敗不明の終盤を迎えます。

 里見女流四冠は1時間の持ち時間を先に使いきって、一手60秒未満で指す一分将棋に。93手目、自陣に角を引き成って攻防に利かせます。

 残り2分の折田四段。桂を跳ねて里見玉へ詰めろをかけます。結果的にはそれが敗着となったわけですが、ここは里見女流四冠の終盤力が素晴らしかったという場面でしょう。

「出雲のイナズマ」と呼ばれる里見女流四冠。時間がない中、二十数手にも及ぶ折田玉の詰みを読み切りました。まだ完全に詰み上がるまでには手数がかかるところ、折田四段は潔く投了。101手で里見女流四冠の勝ちとなりました。

 充実著しい里見女流四冠。注目の棋士編入試験は、8月18日から始まります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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