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紅白歌合戦2023  歌唱時間を長くもらえたNHKの「推し8組」はだれか

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:Keizo Mori/アフロ)

2023年紅白歌合戦では57曲が歌われた

2023年紅白歌合戦で歌われた曲は57曲である。

番組放送時間は19時20分から23時45分まで、4時間25分。

それで57曲が歌われるから、なかなかタイトなスケジュールである。

1曲の歌唱時間の平均は2分49秒である。3分に足りない。

進行がもっとも大変である。

橋本環奈はそのスケジュール進行のお局さんのように指示しつづけていた。

NHKが特に推そうとした歌手は誰か

短いときは2分足らずで楽曲が終わる。

だいたい、あ、もう終わるんだ、という感じになる。

じっくりと歌を聞く番組ではない。

歌唱時間には差がある。

おそらく歌はスケジュールどおりだろうから、歌唱時間の差は、NHKの意図どおりだろう。

2023年年末、NHKが特に推そうとしていた歌手は誰なのか。歌唱時間を並べてみる。

なお、歌唱時間の終わりの判断がむずかしい楽曲がいくつかあり(後奏の終わりが判断しにくい)、計測しかたによっては1秒前後の違いが出てしまうのでご留意いただきたい。

もっとも歌唱が長かったのは福山雅治

さて歌唱が長かったのは、例年どおり、最後の歌手である。

紅組のMISIA(ミーシャ)と白組の福山雅治。

メドレー、ないしは、スペシャルと銘して、複数曲を歌うので長くなる。

5分39秒 福山雅治 

5分33秒 MISIA 

最後の歌手は紅白どちらも5分半というのがスケジュールなのだろう。全体に短めの歌唱が続くが、最後だけはたっぷり聞いてもらって、それまでの短かったのは忘れてもらって、満足して帰っていただこうという企みだ。寄席興行と同じである。

もうひとつ5分を越えた楽曲

5分を越えたのはあと1組あって、それは「ポケットビスケッツ&ブラックビスケッツ」で5分26秒だった。

でもこれは2組が別の楽曲を連続して歌ったからそうなったまでである。

分けると、ポケットビスケッツは2分54秒、ブラックビスケッツは2分25秒であった(入れ替えに7秒)。

分けると平均的な時間になる。

4分台はヒゲダン以下5組

ついで長かった4分台は5組。

4分41秒 Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)

4分36秒 10-FEET(テンフィート)

4分14秒 YOASOBI(ヨアソビ)

4分07秒 YOSHIKI(ヨシキ)【特別企画】

4分01秒 NewJeans(ニュージーンズ)【特別企画】

ここがNHKが2023年、もっとも推していたところだろう。

Official髭男dismはNコン(NHK全国学校音楽コンクール)の課題曲を歌ったので、中学生の演奏者たちとコラボした。

10-FEETは映画『スラムダンク』の曲なので、スラダンの映像が流れる。

YOASOBI「アイドル」が2023紅白の白眉

YOASOBI「アイドル」はアニメ『推しの子』の曲だ。

アニメの映像が流れたのはもちろん、そのあと楽曲中に、出場しているアイドルたちが出てきて短くキレキレに踊る。

バックで踊ったアイドルは以下の人たちだった。

SEVENTEEN(セブンティーン)、乃木坂46、NiziU(ニジュー)、BE:FIRST(ビーファースト)、NewJeans、JO1(ジェイオーワン)、Stray Kids(ストレイキッズ)、櫻坂46、LE SSERAFIM(ルセラフィム)、MISAMO(ミサモ)、橋本環奈、ano(あのちゃん)。

現役第一線のアイドルが『推しの子』の曲をバックに次々と踊るのは見ものであった。

最後は全アイドルが一堂に会しての群舞。圧巻である。

2023年紅白歌合戦のもっとも見どころだったといえるだろう。

このアイドルを集められるのは紅白歌合戦だからこそ、まさに紅白らしい風景であった。

3分台の歌唱にはベテランが並ぶ

3分台の後半だった歌手はこの人たち。

3分58秒 クイーン+アダム・ランバート【特別企画】

3分51秒 寺尾聰【特別企画】

3分46秒 椎名林檎

3分43秒 星野源

3分32秒 石川さゆり

3分32秒 Ado(アド)

3分31秒 あいみょん

特別企画とベテラン歌手が並ぶなか、やはりAdoの存在感が圧倒的である。

あいみょんとともに、若手のなかでNHK推しの二人である。あいみょんが若手なのかは微妙だけれど、紅白の横並びでは確実に若手に入る。

残り3分台のメンバーは昭和の歌手のみ

残りの3分台。

3分30秒 薬師丸ひろ子【特別企画】

3分29秒 さだまさし

3分15秒 伊藤蘭

3分09秒 坂本冬美

3分08秒 藤井フミヤ

ここは昭和の歌手が並んだ。昭和末期の紅白歌合戦の顔ぶれだといわれても疑わないメンバーである。長い歌唱はどうしても昭和世代のもののようだ。

藤井フミヤはこのあと司会の有吉弘行と一緒に、猿岩石の「白い雲のように」を歌った。曲を聞いているあいだ、ずっと森脇和成の顔ばかりが浮かんできた(有吉のもと相方)。

SuperflyとSEVENTEENにちょっと安心する

以下、2分台に入る。

2分53秒 エレファントカシマシ

2分52秒 郷ひろみ

2分50秒 Superfly (スーパーフライ)

2分49秒 SEVENTEEN

ここで全歌唱の平均時間になる。ここまでが長く歌えた人たちである。

ベテランが並ぶなかに、SuperflyとSEVENTEENが入ってちょっと安心した。

自分で何を心配しているのかがわからないのだが、まあ、ほっとしたのだ。

2分にたりなかった短めの歌手

ちなみに2分に足りなかった短めの歌唱はこのあたり。

1分54秒 NiziU

1分49秒 ハマいく【特別企画】

1分30秒 milet(ミレイ)

1分29秒 MAN WITH A MISSION(マンウイズアミッション)

以下、ディズニーメドレー5曲はすべて1分27秒以下だったが、詳細は略す。

ちなみにmiletは「with MAN WITH A MISSION」で、MAN WITH A MISSIONは「with milet」で、つまり2組で一緒に2つの歌を連続で歌って、セットでだいたい3分になる。それでちょっと短くなったのだろう。

2023年NHKが推した8組

こうやって見直すと、昭和から平成初期(20世紀)の曲は長くなるもののようだ。

「特別企画」は長めに時間を割く前提での企画だろうから、それをのぞいて、最後の2人(福山雅治とMISIA)ものぞいて、歌唱に長く時間を割いたのは以下の8組であった。

Official髭男dism

10-FEET

YOASOBI

椎名林檎

星野源

石川さゆり

Ado

あいみょん

これが2023年NHKが推した8組の子たちであったわけだ。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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