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【札幌記念(GII)のみどころ】GI3勝白毛のソダシの成長度、個性が強すぎる逃げ馬対決に注目

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
ソダシとユーバーレーベン(2020年札幌2歳S/日刊スポーツ・アフロ)

 21日、札幌競馬場で札幌記念(GII)が行われる。珍しい毛色である白毛のソダシとハヤヤッコが出走。特にソダシは昨年の覇者であり、メンバー中GI最多の3勝をあげており、注目の的だ。

注目のソダシ、秋に向けての課題は"安定感"

 注目はなんといってもソダシだ。昨年の覇者であり、メンバー中最多のGI3勝。白毛の牝馬という容姿は一度見たら忘れられない。昨年の札幌記念の後、ダート路線への方向転換も含めて結果を出し切れない時期もあったが、5月のヴィクトリアマイルで3勝目のGI制覇を果たし、その勝ちっぷりから安定感を取り戻した感がある。この中間の気配も良く、力は出せる状態であるとみられる。

 課題は55キロの斤量と、安定感を取り戻しつつあるもまだ絶対的な信頼を寄せられるほどの安定感は持っていない点だ。まず斤量だが、昨年の札幌記念は3歳牝馬ということで52キロでの出走だった。比較的、早い時期に完成していたソダシにとってこの52キロはかなり恵まれていた。2着のラヴズオンリーユーは55キロで3キロの差があり、勝負どころではこの斤量差が大きく明暗をわけた印象がある。今年は他陣営と大差ない斤量であり、決して楽な戦いではないと察せられる。

 逆に55キロを背負ってもこのメンバーで横綱相撲をみせたり、仮に負けても「負けて強し」の印象を与えられるようならソダシの秋戦線への展望はかなり明るいと言えよう。これまでのソダシは勝ちっぷりも負けっぷりも良いのだ。つまり、負けた時に"負けて強し"の印象はあまり与えない。にもかかわらず、毛色効果も相まって毎回かなりの人気を集める。距離延長やダート替わりなどの敗戦理由はあるにせよ、オッズのわりにアッサリ敗戦する危うさを秘めているのは否めない。そういう意味でも、これまで2戦2勝である札幌の舞台で、年を重ねて精神的な成長がみられるといわれている証明をここでみせて欲しいのだ。勝っても負けても「さすがソダシ」と思わせるレースぶりに期待する。

■2021年札幌記念(GII) 優勝馬ソダシ

玉砕上等のパンサラッサ vs マイペースに落とし込みたいジャックドール

 それから、今回のメンバーには強烈な有力馬の先手争いが鍵になる。ドバイで逃げ切ってGI勝ちをおさめたパンサラッサと春は大阪杯5着のジャックドールは共に徹底した逃げ馬なので、この2頭が先手を主張しあって逃げる展開となるだろう。この2頭は同型だが、その個性は大きく異なる。ジャックドールが素早く先手をとって自分のペースに落としこんで断続的なラップで逃げ切るのに対し、パンサラッサは速いペースで逃げながら後続に脚を使わせて粘るのが身上。この2頭が先手争いをした場合、玉砕覚悟のパンサラッサが譲らない可能性が高く、ジャックドールはパンサラッサを見ながらの2番手で進むと予想する。その際、ジャックドールがパンサラッサに惑わされずに2番手でも自分のペースに落とし込めるかが鍵になるだろう。そして、ジャックドールの落とし込み次第で、逃げ馬に続く、先行集団に位置づけると思われるソダシ、ウインマリリン、ユニコーンライオンらとパンサラッサの距離感が決まるとみられる。パンサラッサがまんまと逃げ切るか、ジャックドールや先行集団がペースをいかに保持できるか、その駆け引きがとても楽しみだ。

■2022年ドバイターフ(GI) 優勝馬パンサラッサ

■2022年金鯱賞(GII) 優勝馬ジャックドール

差し馬では9歳馬のマカヒキにも注目

 また、札幌競馬場の芝コースは直線が短いわりに差し馬が活躍しているのも面白い。過去の札幌記念を振り返ると、その1、2着馬の組み合わせは逃げ(または先行)と差し(または追い込み)で決まるケースが多いように見受けられる。

 前走の函館記念で中団から早めに先頭をうかがって勝った白毛のハヤヤッコ、ディープインパクト産駒のグローリーヴェイズ、復調気配が感じられるユーバーレーベン、アンティシペイト、前走は5月の新潟大賞典を勝ったレッドガランらが追随する流れになるとみられる。

■2021年オークス(GI) 優勝馬ユーバーレーベン

■2022年函館記念(GIII) 優勝馬ハヤヤッコ

 個人的には差し馬の中では9歳馬のマカヒキに注目している。函館で調整されたのち、レース直前に札幌へ移動。高齢は気になるが、入念なケアを施されながらアスリートの身体を今もなお磨き続けている。

「札幌競馬場の芝は力のいる洋芝。力のいる馬場は得意だし、1週前にびっしり追われて終いの反応がよくなっています。自分の競馬に徹底して挑みたいですね。」と担当の大江助手。鞍上は武豊騎手。大ベテランの人馬がこの激しい一戦でいかに立ち振る舞うのかが、とても楽しみだ。

■2021年京都大賞典(GII) 優勝馬マカヒキ

 秋のGI戦線の有力馬たちがそのような始動をみせるか、夏の活躍馬がその勢いを見せつけるのか、個性が強すぎる逃げ馬の駆け引きが他の展開にどう影響を与えるのか、見ごたえ満点の札幌記念になるはずだ。

2022年札幌記念枠順(筆者作成)
2022年札幌記念枠順(筆者作成)

■2022年札幌記念調教VTR(JRA公式)

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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