観客動員数350万人突破!! 『君の名は。』新海誠監督が思い出させてくれた日韓の“共通点”
映画『君の名は。』の新海誠監督が2月8日、韓国を訪れた。2月9日にはテレビ局SBSのニュース番組に出演し、翌10日にはソウルで記者会見を行っている。
韓国で1月4日に公開された『君の名は。』は現在、観客動員数350万人を突破し、歴代の日本映画興行ランキング1位の記録を更新し続けている。映画だけでなく原作小説や関連書籍も売れており、韓国政治の混乱を皮肉ったパロディーまで登場する人気ぶりだ。
新海誠監督は韓国でプロモーション活動をしていた際に、「(観客動員数)300万人を突破すれば、必ず再訪韓します」と約束していた。これまでの最高記録(『ハウルの動く城』、300万人)を突破した記念として今回、再訪韓したわけだ。
(参考記事:『君の名は。』新海誠監督が語る韓国、そして韓国限定のサプライズ公約とは?)
そんななか、新海監督のコメントに注目が集まっている。
ひとつは、SBSの番組に出演した際の発言。インタビュアーに「映画のクレジットに韓国人と思われる名前が多く出てきましたが、韓国スタッフたちとも仕事をされるのですか」と問われ、新海監督はこう答えた。
「10年前から僕のスタジオにはメインスタッフのひとりとして、韓国人の女の子がいてくれています。あと、日本のアニメーションそのものが韓国の作画のスタジオとは切り離せないというか、韓国のスタジオがなければ一本のアニメーションを作ることが困難です。大きな部分を韓国に担っていただいています」
アニメに詳しい人にとっては常識なのかもしれないが、ちょっと意外な印象があった。というのも、韓国のアニメーションは韓国国内でもあまり人気がないからだ。
例えば、昨年公開されたアニメ映画『月光宮殿』は、「『千と千尋の神隠し』のパクりじゃないか」「キムチヒロだ」などと疑惑が持ち上がっている。
(参考記事:「キムチヒロだ」vs「どこが似ているのか」!! 『千と千尋』に“瓜二つ”の韓国アニメ映画『月光宮殿』)
過去を振り返っても“韓国アニメ業界の黒歴史”などがあり、ことアニメ作品に関しては日本と大きな開きがあると言わざるを得ないだろう。それを証明するかのように、韓国の文化体育観光部(「部」は日本の「省」に相当)は2015年2月に「キャラクター・アニメーション産業育成の中長期計画」を発表して、2019年までに3800億ウォン(約380億円)をかける方針を打ち出しているが、現在のところ目に見える成果は生まれていないようだ。
にもかかわらず、新海監督のコメントを見ると韓国に対する信頼は厚い。韓国のネット民たちは「ほら見ろ、新海監督も韓国の商業芸術分野の専門性を認めているじゃないか」といった反応を見せている。
さらに注目されたのは、2月10日の記者会見での発言。さまざまな質問が飛び交うなかで、ソン・ジュンギやソン・ジソブが出演し、来る7月に公開予定の映画『軍艦島』について質問を受けたのだ。
同映画は先日、『産経新聞』が「強制徴用の少年炭鉱員を捏造」など非難したばかりの作品。“反日映画”などと呼ばれることもある。
新海監督は「『軍艦島』のことはよくわからないが」と前置きしながら、「“日本という国は納得できないが文化は好きだ”、“韓国という国が納得できないけど映画は好きだ”という、人間的なアプローチから始めるべきではないか」などと話して絶賛されている。
(参考記事:映画『軍艦島』についての愚問に賢答した新海誠。その答えとは?)
個人的には、SBSの番組で「韓国のファンへのメッセージを」と問われた際のコメントがさらに印象的だった。
「僕たちは本当に近くに住んでいて、隣の国に住んでいて、いろんな価値観を共有していると思うんですね。韓国の皆さんがおいしいと思うもの、美しいと思うものって、同じように美しいもの。同じように、僕たちが楽しいと思う映画は、韓国の人にとっても楽しんでもらえるという自信を今回とてもいただきました」
政治や歴史的な問題で関係が冷え込んでいる日韓だが、新海監督が話したように、さまざまな共通の価値観があることも否定できないだろう。映画『君の名は。』はここ最近、忘れていた日韓の共通点にスポットライトを当ててくれた作品だったといえるのではないだろうか。