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もしも原発事故が起きたら54%の親が子を連れ自主避難:原発がある地域での調査

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
柏崎刈羽原子力発電所(筆者撮影)

■地元で原発事事故が発生したら

3.11東日本大震災、福島第一原発事故から5年目を迎える今月、世界最大の原発がある新潟で、調査結果の発表がありました。

新潟日報社は県私立幼稚園協会の協力を得て、県内の園児の保護者を対象に自主避難についてのアンケート調査を行った。東電柏崎刈羽原発で事故が起きた場合、国の避難指示がなくても「避難する」「避難する可能性が高い」と回答した人が合わせて54・6%に上り、「避難しない」「避難しない可能性が高い」の24・7%を大きく上回った。

出典:子を連れ「自主避難」54% 県内園児保護者アンケート 柏崎原発で事故起きた場合:新潟日報3/7

「地元で原発事故が発生したら」という仮定は、原発のある地域でしか想定できない仮定です。新潟県は原発のある県で、そして新潟県には、福島県からの自主避難者が今も2千人以上います。その人々の苦労を見てきている新潟県民ですが、半分以上の人が自分達も自主避難すると回答しています。

■柏崎刈羽原子力発電所

新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所は、7基の原子炉がある世界最大の原子力発電所です(福島第一原発は6基)。世界最大は、誇りでしょうか。確かに立派な施設です。けれど、多くの原子炉があるということは、大災害による事故が発生した時には、福島第一原発と同様に、同時にいくつもの原子炉事故に対応しなければならないということです。

柏崎原発は、とても美しい原子力発電所です。工場のような原子力発電所とはちがい、柏崎原発は公園のようです。福島第一原発事故の視察に行った時に、職員の方から聞きましたが、柏崎原発はパイプの類を見えないようにしているそうです。

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福島第一原発事故の前から、地域に多大な貢献をしてきた柏崎刈羽原発。それにもかかわらず、いつも腰が低く、「新潟県の皆様にはいつもお世話になっております」と口癖のように言ってきました。

それでも、福島のような大規模事故が起きた時には、柏崎市や刈羽村だけではなく、新潟県全体が様々な形で被害を被ります。

■原発のある県

地震も津波も、全国で起こる可能性があります。しかし、原発事故は、原発のある地域でしか起こりません。だから、爆弾の爆発はお笑いのコントになっても、原発事故はジョークになりません。ジョークにしてはいけません。

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福島県も新潟県も、原発で作られた電気は、東京へ行きますが、福島県も新潟県も、原発の恩恵を受けてきたと思います。しかし、大規模事故が起きた時には、いつ解決するかわからない大きな被害を受けることになります。

柏崎刈羽原発ができる時には、それほど大きな反対運動は起きませんでした。しかしその後、新潟県西蒲原郡巻町(現在の新潟市)に原発建設計画が立てられた際には、巻原子力発電所建設の是非を問う条例制定による日本初の住民投票(1996)が行われ、原発建設は阻止されました。

ここまで進んでいた原発建設計画が中止になったのは、驚きでした。この反対運動は、プロの活動家が牛耳るようなものではなく、本当に住民の手によるものでした。過激なものでもなく、一部の住民だけによるものでもなく、巻町全体の住民がとても学び話し合った素晴らしい運動でした。

もし、巻原発が完成していたら、新潟市は原発のある唯一の県庁所在地、政令指定都市になっていました。

電気は必要です。原発が絶対悪などとは思いません。しかし、事故は起こる可能性があります。

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■親の思い

福島第一原発事故の直後に、新潟県知事は福島県からの避難者を何人でも受け入れると述べました。新潟県民からも、文句は一切でませんでした。

今回の新潟日報(新潟県のローカル新聞)の調査では、次のような結果が出ました。

「柏崎刈羽原発の事故で放射性物質が拡散したと仮定。住んでいる所に国の避難指示が出ていない段階でも子どもを連れて避難するかを聞いた。賠償や支援がなくても「避難する」が14・6%で、「避難する可能性が高い」は40%。「避難しない可能性が高い」22%、「避難しない」2・7%、「想定できない」20%だった。」

たとえ国の指示がなくても(科学者は危険と言わなくても)、何のお金も出なくても、それでも半分以上の親が自主的に避難したいと考えています。

親は子供のことを心配します。放射能に関して極端な考えを持ってはいなくても、万が一のことを考えるのは当然です。また、もしも子どもが将来ガンなどになった時、科学的根拠はないにしても「あの時に自主避難していれば」と考えるのではないかと想像すれば、自主避難を考えても無理はありません。

大規模な原発事故は、実際の放射線被害に加えて、私たちの心に強い不安を与えます。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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