元動物看護師が伝えたい『猫の見逃しやすいストレスサイン4選』猫はストレスを感じるとどんな行動をする?
人間社会ではストレスが大きな問題として取り上げられることがありますが、実は大切な家族である猫たちも、日々のさまざまな状況の中でストレスを感じていることがあります。
しかし猫は自分の感情を言葉で伝えることができないため、飼い主が猫のストレスサインに気づき、それを理解しようとしなければいけません。
そこで今回は、元動物看護師の経験と14年の猫暮らしで得られた、猫のストレスサインについて4つ紹介します。猫の飼い主さん、ぜひ参考にしてください。
1.見逃しやすい猫のストレスサイン4選
1‐1.過剰なグルーミングと被毛の変化
猫は清潔好きな動物として知られており、1日の多くの時間をグルーミング(毛づくろい)に費やします。
しかしグルーミングを過剰に行うのは、ストレスのサインであるかもしれません。
わたしの愛猫は父に激しく怒られたあとに、急にお腹の毛を舐め続けるようになりました。最初は通常の毛づくろいだと思っていましたが、その部分の毛が薄くなり始めたことで、ストレスによる過剰なグルーミングだと気づいたのです。
当時勤めていた動物病院の獣医師に相談したところ、過剰なグルーミングは、猫が不安や緊張を感じているときにもよく見られる行動だと教えてくれました。
猫にとって新しい環境・家族構成の変化・騒音・他の動物の存在など、日常のさまざまな要因がストレスの原因となります。
こういった環境に置かれると、猫は自分の体を舐めることで自己を落ち着かせようとするのです(転移行動)。
しかしこの行動が行き過ぎると、毛が抜け落ち(脱毛)、皮膚の炎症につながることもあります。
また被毛の変化も見逃してはいけません。健康な猫の毛は光沢がありなめらかですが、ストレスを感じている猫の毛は、艶がなくなりパサつきがみられることがあります。
1‐2.排泄物の変化
猫がストレスを感じると、排泄物に変化が現れることがあります。軟便や下痢が起こりやすくなったり、トイレ以外での粗相をしてしまったりすることが代表的な例です。
わたしの2匹目の愛猫は2011年東日本大震災のあと、しばらく下痢をするようになりました。東京は震度5ほどの揺れでしたが、もちろんそんな強い揺れを経験したことはありません。
当時はまさか猫もストレスでお腹を壊すと思っていなかったので、動物病院で「地震のストレスだと思う」といわれて驚いたことを覚えています。
猫も人と同じように、ストレスを感じると自律神経が乱れて、腸の動きに異常をきたします。そして下痢や便秘といった、排泄に変化が見られるようになるのです。
1‐3.攻撃的になる・引きこもりになる
人間はストレスを感じたとき、「戦うか逃げるか(闘争・逃走反応)」を示すことがありますが、猫もストレス下では同じような反応を見せます。
攻撃性の増加と引きこもりという正反対の行動が、どちらもストレスのサインとなるわけです。
攻撃的になるのは、比較的わかりやすいサインかもしれません。わたしの1匹目の愛猫は穏やかな性格ですが、新人猫を迎え入れたとき、急に家族に対して攻撃的になりました。
些細なことで爪を立てたり、噛みついたりするようになったのです。新人猫の存在をストレスに感じ、脅威のなかで縄張りを守ろうとしていたのかもしれません。
一方引きこもりは見逃されやすいサインかもしれませんが、ストレスを感じた猫のなかには「逃げる」のを選ぶ猫もいます。
家の中で最も安全だと感じる場所に隠れ、長時間出てこなくなるのです。新人猫が初めてケージから出た日は、1日中隠れ家から出てきませんでした。食事や水を取りに来る以外は、ほとんどその場所で過ごしていたのです。
初めての環境にストレスを感じて、身を守ろうと隠れていたのでしょう。
1‐4.食欲が低下する
猫はストレスを感じると、ごはんを食べなくなることが多いです。
ただもともと食べムラがあるような猫や、置き餌でながら食べをする猫は、食べる量が減っても気づきにくいことがあります。
わたしは動物病院に勤めていましたが、入院や検査預かりした猫たちはまずご飯を食べてくれません。
飼い主はいない、いつもと違う環境、加えて嫌なこと(注射や検査)をする知らない人たち。猫のストレス度はMaxになるでしょう。
このように食欲の低下は、単なる好き嫌いや体調不良ではなく、猫が置かれている状況へのストレス反応であることも多いのです。
2.猫にストレスは大敵!
猫は犬に比べて遺伝的な病気も少なく、生命力は強いといわれています。しかしストレスにはとりわけ弱い生き物です。
日常の些細な出来事でも、ストレスを感じてしまうほどデリケートな心をもちます。雷や地震、台風といった予測できない自然災害、とくに大規模なものだとパニックを起こしてしまうことも。
ストレスフルな環境は猫の健康に悪影響を及ぼすので、できる限りストレスの少ない生活環境を用意してあげましょう。
たとえば猫の隠れ家を用意する・騒音に気をつける・高頻度な来客は控える・適度にスキンシップをとるなど、できることはたくさんあるはずです!
こうした猫にとってストレスフリーで快適な環境は、長生きへの大切なカギにもなります。
3.まとめ
猫は言葉が話せないため、ストレスを感じていることを直接伝えることができません。しかしそれでもいろんな行動を通じて、ストレスのサインを発しています。
飼い主はこれらのサインを見逃さないようにするためにも、猫の普段の様子をよく観察しておきましょう。
そしてもし愛猫に今回紹介したようなサインが見られたら、ストレスの原因を取り除き、猫が穏やかに過ごせる環境を整えてあげてください。
※今回紹介したような変化は、ストレスだけでなく、なにか別の不調があるときにも見られます。そのためまったく改善されない・ほかに気になる症状が出ているという場合は、獣医師に相談しましょう。