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日韓首脳会談を前に支持率急下降の菅総理に対して急上昇の文大統領

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
菅義偉首相と文在寅大統領(2人のHPからの筆者キャプチャー)

 日韓両国は文在寅大統領が今週金曜日(23日)に開幕する東京五輪の開会式に出席し、その際に首脳会談を開催する方向で調整しているようだ。

 調整が付き次第、両国からほぼ同時に正式発表があるものとみられるが、元慰安婦や元徴用工問題で韓国が納得できる解決策を示さなければ会う気はないとの立場の菅首相と、輸出厳格化措置の撤回など具体的な成果がなければ、会っても仕方がないとの立場の文大統領は一体どう折り合いを付け、首脳会談に臨むつもりなのだろうか。

 日本は文大統領が来日すれば、丁重に対応し、外交儀礼として首脳会談にも応じる用意があるとの意向を伝えているが、会談時間については当初、他の各国首脳同様に15分程度と釘を刺していた。

 韓国側がこれに不満を抱いていることから会談時間については倍の30分程度まで考慮しているとの話も伝わっているが、韓国は時間ではなく、議題を含め会談の中身に拘っていた。それもこれも、福島原発処理水の海洋放流や東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の公式ホームページの日本地図の竹島表記などを理由に韓国の世論が総じて文大統領の訪日には反対しているからだ。

 先月28日に発表された韓国の世論調査(世論調査会社「リアルメータ」が6月25日に実施)によると、文大統領の訪日に「反対」が60.2%(「賛成」33.2%)と、世論は文大統領の訪日を歓迎しておらず、加えて李洛淵(イ・ナギョン)元首相、丁世均(チョン・セギュン)前首相、李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事ら与党の有力大統領候補らも揃って五輪ボイコットを主張しているだけに文大統領にとっては国内世論を無視しての訪日はリスクが高く、容易ではない。とてもではないが、何の成果もなく、手ぶらで帰国するわけにはいかないはずだ。

(参考資料:「反文在寅」の保守大統領候補は「親日」か「反日」か 「野党の希望の星」尹錫悦前検察総長の対日観)

 今朝、韓国大統領府の朴洙賢(パク・スヒョン)国民疎通首席秘書官は韓国の報道機関に対して「(訪日については)まだ協議中で、依然として(我々が期待している)成果が十分ではない」と述べ、「訪日はまだ決定事項ではない」と断っていたが、「楽な選択としては訪日に否定的な国民世論に従う方が良いのだが、大統領としては孤独の道を歩むことも苦悩しなければならない」と意味深な言葉を口にしていた。

 朴首席秘書官は今朝のラジオ番組でも「文大統領は世論や国会の意見もわかっている。しかし、国益のため大統領が歩まなければならない道は他にもあるとの信念でこれまでやってきた」と述べ、国内に反対意見があっても、訪日を強行することを示唆していた。

(参考資料:韓国は「文在寅訪日」に世論は反対、メディアは賛成)

 文大統領が訪日を強行する背景には米国との関係など様々な要因があるが、大統領の支持率が上昇していることも要因の一つとして挙げられる。

 「リアルメータ」が今月12日から16日にかけて全国の有権者2519人を対象に行った調査によると、文大統領の支持率は前週(7月第1週)よりも4.4%アップの45.5%になっていた。(「支持しない」は3.7ポイントダウンの51.2%)

 支持率が40%台半ばまで回復したのは2020年10月第3週の45.5%以来である。歴代大統領の中で任期最後の年に40台を記録した大統領は一人もいない。ほぼ全員が20%前後で終わっている。

 文大統領の過去2か月間の支持率の推移をみると、5月の第3週に35%を割り、34.9%まで下落していたが、5月第4週に39.3%まで跳ね上がって以来、6月は平均38~39%台をキープしていた。

 地域別でみると、今回最も上昇した地域が中道層の多い忠清道(大田、世宗市)で6.3ポイント。保守層の総本山である慶尚北道(大邱市)でも5.8ポイントと大幅に上昇していた。また、首都ソウルも5ポイントの増となっていた。

 大統領の支持率同様に政権与党の「共に民主党」の支持率も3.6ポイント上昇し、36.7%に達し、最大保守野党「国民の力」(34.9%)を逆転していた。「国民の力」は前週(37.3%)よりも2.4ポイント減らした。

 一方、菅首相の支持率は、16日に時事通信社が発表した世論調査では前月比3.8ポイント減の29.3%と、昨年秋の政権発足後最低になっていた。NHKの調査(7月12日)でも先月より4ポイント下がって33.0%となっていた。上昇の文大統領とは好対照である。

 日韓首脳会談が両首脳の支持率にどう影響するのか、興味津々だ。

(参考資料:韓国が不満を抱いている日本の6つの対韓「外交非礼」)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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