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【京都市上京区】紫式部が地獄に…苦しむ紫式部を供養するために建てられたという供養塔

くまライター(京都市)

閻魔大王を祀り「千本ゑんま堂」の通称でよく知られる引接寺(いんじょうじ)。境内にはなんと、地獄に落ちた紫式部を供養するために建てられたという供養塔があります。それにしても、紫式部が地獄とは、いったいなぜ?

千本ゑんま堂として知られる引接寺

京都市上京区の引接寺は、高野山真言宗の寺院。「引接」というのは仏が生きる者を浄土に往生させることをいいます。

引接寺はかつての京都の3大墓地であった蓮台野(れんだいの)、化野(あだしの)、鳥辺野(とりべの)の一つである蓮台野の入口にあります。千本通に面し、本尊として閻魔大王を祀ることから、通称である「千本ゑんま堂(せんぼんえんまどう)」のほうがよく知られています。

京都人でも「引接寺」と聞いてもピンとこない人のほうが多いかもしれません。

平安時代初期の学者であり、歌人の小野篁(おののたかむら)は、現世とあの世を行き来して、閻魔大王とも交流があったという伝承があります。

その小野篁が自ら閻魔法王の姿を刻み、この場所に祠を建立したのが引接寺の始まだとされています。

この奥に供養塔があります。
この奥に供養塔があります。

紫式部供養塔

引接寺の境内の奥には、高さ6メートルほどの大きな石塔が建てられています。

この石塔は、紫式部が死後地獄に落ちて苦しんでいるのを供養するために建てられたのだという伝承があり、「紫式部供養塔」と呼ばれています。

左は紫式部像。他の紫式部像よりも、ずいぶんふっくらとしています。
左は紫式部像。他の紫式部像よりも、ずいぶんふっくらとしています。

「なぜ紫式部が地獄に…?」

そう不思議に思うのも無理はありません。自分も、供養塔は紫式部が亡くなった人を供養するために建てたのかと勝手に思い込んでました。

その理由として、その昔、紫式部はその著書である『源氏物語』が世の風紀を乱したとして、地獄に落とされたという噂があったそうです。

この塔は南北朝時代の1386年、円阿(えんあ)上人によって建立されたと刻銘されています。この円阿上人という人は紫式部の子孫だとする話もあるようですが、詳しいことはよくわかりません。

石塔は貴重な十層の多重石塔で、国の重要文化財に指定されています。

閻魔大王や小野篁が前面に押し出されている引接寺ですが、紫式部の聖地ともいえるのではないでしょうか。NHK大河ドラマ『光る君へ』を観て聖地巡礼を行う際は、ぜひ。

引接寺(千本ゑんま堂)
住所/京都市上京区閻魔前町34
電話/075-462-3332
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ライター(京都市)

大阪生まれの大阪育ち、京都在住のライター・DTPデザイナー・イラストレーターです。京都の情報誌を経てフリーランスになりました。よろしゅうおたのもうします。

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