井上尚弥に2回KOで敗れた元IBFバンタム級王者が生き残った
エマヌエル・ロドリゲスが19戦全勝12KOのIBFバンタム級王者として、WBA同級チャンピオンの井上尚弥と戦ったのは2019年5月18日のことだった。御存知の通り、グラスゴーのリングで2回KO負けを喰らってベルトを失った。
再起を賭けた2020年12月のレイマート・ガバリョ戦でも判定負け。そして、2021年8月14日のゲリー・アントニオ・ラッセル戦では、ファーストラウンドに受けた偶然のバッティングで試合続行不可能となるダメージを負い、ノーコンテストに。
3試合連続で白星を挙げられなかったロドリゲスも早30歳。今年の3月25日に初回KO勝ちを飾り、先週末催されたラッセルとの再戦に漕ぎ着けた。
ロドリゲスはサウスポーであるラッセル対策を十分に練っていた。初回からジャブの刺し合いを制し、細かくスピーディーなコンビネーションを見せる。気持でも上回っていた。接近戦では鋭いボディーへの連打を繰り出し、右ストレートのカウンターで、ラッセルをよろけさせる。
ラッセルの左ストレートを浴びないポジションを取りながら、上下に右ストレートを放つテクニックは、元世界王者ならではと言えた。相手が入ってきた際に当てる左フックも効果的だった。
第4ラウンドにも右ストレートのカウンター、そして左フックをクリーンヒットし、ラッセルをグラつかせる。
中盤以降はラッセルの荒々しいボクシングに何度か被弾したが、8ラウンド終了間際に右ショートを奇麗に合わせてダウンを奪う。ロドリゲスはイメージ通りに試合をコントロールしているかに見えた。
だが、今回のファイトもヘッドバットがキーワードとなった。9ラウンドにラッセルのバッティングを受けた元IBFバンタム級王者は、激痛に悶えリング上でうつ伏せになる。
一旦は試合続行となったものの、翌10ラウンドに医師が試合をストップし、そこでスコアシートが回収される。100-90、99-91、97-93の3-0でロドリゲスが勝者となった。
ロドリゲスは21勝(13KO)2敗、初黒星を喫したラッセルは、19勝(12KO)1敗になった。
元IBFチャンプは語った。
「リングを支配したのは私だ。ダウンを奪った折、彼のコーナーは試合を止めるべきだった。危険な状態だったよ。少し休んで、次の試合に向かう。タイトルを目指していくさ」
サウスポーを攻略した元IBFバンタム級王者の戦いぶりを見ながら私は思った。
中谷潤人だったら、ロドリゲスを翻弄していたのではないかー--と。