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「確実に辞めていたと思います」。「3時のヒロイン」かなでが語る“どん底”と“救いの手”

中西正男芸能記者
今の思いを語る「3時のヒロイン」のかなでさん

 オンリーワンの存在感を見せるお笑いトリオ「3時のヒロイン」のかなでさん(30)。2019年にはトリオで女性芸人ナンバーワン決定戦「THE W」で優勝し、11月7日からは主演ドラマ「デブとラブと過ちと!」(TOKYO MX1、月曜午後10時)もスタートします。着実に活動の幅を広げていますが、道のりは平坦ではありませんでした。「あのまま確実に辞めていたと思います」というどん底からかなでさんを掬い上げた言葉とは。

「3時のヒロイン」の意味

 今回初めてドラマにしっかりと出演させていただき、しかも主演をさせてもらうことになりました。

 現場でも慣れない私を皆さんがサポートしてくださったり、本当にやさしい現場で救われたんですけど、普段とは違う環境でいろいろと感じることもありました。

 番組告知のためにキャストの皆さんと出演する事前番組なんかでは、いつもトリオの時にはつっこんでくれる相方の(福田)麻貴もいない。逆に、やったことのないツッコミを周りの人に入れていくことも経験しました。

 いつもはやらないことをやる中で、今一度「3時のヒロイン」の意味を考えたかもしれませんね。

どん底

 自分の人生のポイントを考えた時に、やっぱり麻貴から「3時のヒロイン」に誘ってもらったこと。これが本当に大きかったなと思います。

 2016年に声をかけてもらったんですけど、その時、私は以前組んでいたコンビを解散してピン芸人だったんです。相方は欲しかったんですけど、すぐに見つかるものでもなくピンとして活動していました。

 ありがたいことに、東京・神保町花月のユニットにもピン芸人として入れてもらっていたんですけど、この半年ほどが本当につらかったんです。

 NSCに入ってすぐコンビを組んだんですけど、そのコンビでは相方がもともとお笑いをやっていた人でもあったのでネタ作りもその人がやってくれたんですけど、ピンになったら当たり前ですけど全部自分でやらないといけない。

 さらに、ユニットでのライブが毎週日曜にあって、そこでそれぞれが新ネタを出さないといけないんです。他のユニットメンバーがコンビで新ネタを出す中、私は一人で毎週考えないといけない。それが本当に怖くて、怖くて。

 1週間のサイクルで言うと、月曜が一番テンションが高いんです。ユニットライブが終わっているから。でも週末になるにつれ段々気が重くなってきて、当時は実家暮らしだったんですけど、お母さんに「行きたくない」と泣きついていたことも正直ありました。

 それが続くと、もう自分の面白さも、やりたいことも分からなくなっていってしまった。そして相方もいないので、さらに深みにはまってしまう。この半年ほどが芸人人生でどん底だったと思います。あのままだったら、確実にこの仕事を辞めていたとも思います。

 そこで声をかけてくれたのが(メンバーの福田)麻貴だったんです。「トリオを組もう」と。

 麻貴は私より5年ほど先輩にあたるので、当時はあいさつくらいしかしていない関係性だったんです。ゆめっちの方がまだ麻貴と交流があったんですけど、それでも深い付き合いということでもなかった。

 それでも麻貴の中には「トリオでやる。そしてトリオを組むならこのメンバーだ」というイメージが明確にあったようで、断っても誘ってくれて、結果、組むことになりました。

 全てを客観的に、緻密に見る目というのは私にはないものなので、トリオを組んだ時も、そして今に至るまで本当に助けてもらっています。

 実際に組んでからも、組んですぐの頃はとにかく自信がなくて迷うこともたくさんあったんですけど、そういう話も全部聞いてくれた上で「かなでちゃんはこういうところがいいんじゃない。だから頑張ろうよ」と言ってくれる。

 あんまりこんな話をするのもアレなんですけど(笑)、ありがたいことだと思っています。

自分の幹

 今回のドラマのお仕事も「『3時のヒロイン』のかなで」だからこそいただけたものだと思いますし、「3時のヒロイン」というトリオ自体が私自身でもあると思っています。

 今後の思いとしては、バラエティー番組に出続けられる存在でありたいですね。もちろん、お芝居やダンスのお仕事も大好きなんですけど、あくまでも幹は「3時のヒロイン」。トリオとして面白いことをする。それがあってのことだろうなと。

 と言いつつ、実際はバラエティーで出される“カンペ”もいつもは麻貴が読んでくれるので、私は本当に苦手で…。

 ただ、今回のドラマメンバーでバラエティーに出る時はさすがに役割的に私が読まないといけないので、そこはかなり急成長したとは思います。ま、もっと早く習得しておくべきスキルだとは思いますけど(笑)。

(撮影・中西正男)

■かなで

1992年6月10日生まれ。東京都出身。本名・上田奏。NSC東京校20期。吉本興業所属。別のコンビでの活動を経て2017年に福田麻貴、ゆめっちとお笑いトリオ「3時のヒロイン」を結成する。19年にはトリオとして女性芸人ナンバーワン決定戦「THE W」で優勝。11月7日から「超特急」の草川拓弥とW主演するドラマ「デブとラブと過ちと!」(TOKYO MX1、月曜午後10時)がスタートする。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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