34歳フリーライター志望のあなたへ。自分の「土台」に立つべし
●今朝の100円ニュース:土台 しっかり作る時期(読売新聞)
34歳の男性から「フリーライターになりたい」という相談を受けている。今まで福祉関係の仕事をしてきたが、失業をきっかけにして「長年の夢」にチャレンジするつもりになったらしい。
有名でもなく実力派でもない僕のところにも、年に1人ぐらいのペースで彼のような人が訪ねてくる。有効なアドバイスは一向に思い浮かばないので、たいていは自分の仕事や生活をできるだけ正直に話すようにしている。学生や20代前半の人の場合は、「フリーライターってそんなに割の合わない仕事なんですね。やめておきます」みたいな感想を残して去っていく。あれでよかったのだろうか……。
多くの自営業と同じく、フリーライターは「ものすごく好きでこの仕事しかしたくない」もしくは「他の仕事で挫折して背水の陣で臨む」のどちらかでしか続けられない。僕を含めて多くの人は後者である。組織人としての適性にかけるからフリーランサーになり、文章書きぐらいしかやれることがないからライターを選んだ。「夢の職業」なんかじゃなかった。夢破れてうつむいたときに足元に落ちていたものにすがったのだ。
34歳の彼も腹が据わっている顔をしている。いろんな挫折を経験して、「フリーライターしかない」と思い極めているのかもしれない。だから僕も及ばずながら向かい合う気になっている。しかし、34歳からまったく新しい仕事を始めようとする彼にどんなアドバイスをすればいいのだろうか。
今朝の読売新聞では、アテネ五輪女子柔道78キロ超級の金メダリストである塚田真希さん(31歳)が指導者として登場していた。2010年に選手を引退し、現在は全日本女子のコーチをしているらしい。スポーツ選手は20代で職業のピークを迎えてしまうのだ。厳しい世界だなあ。
塚田さんは、「高校時代は、しっかりと土台を作る時期」だと語っている。曰く、「基本練習に多くの時間を割ける最後の時期。自分は寝技の反復練習に打ち込んだから、その後も、困ることはありませんでした」とのこと。金メダリストの言葉だからこそ説得力がある。
20代で現役を引退するスポーツ選手ほど極端ではなくても、能力の基礎は10代後半までに培われるのは確かだと思う。先日、企業の採用に詳しい人と雑談していたら、「学歴は大学名だけでなく高校名を重視するのは採用の常識。むしろ高校名のほうが学力を如実に反映している」という話を聞いた。
そして、職業人としての基礎は20代で築かれる。「20代で出来上がってしまう」と言い換えてもいいかもしれない。例えば37歳の僕が今さら会社員になれたとしても決して大成しないだろう。
幸いなことに、文章を書く仕事はすそ野が狭くない。エロから法律までさまざまな専門分野があるし、ジャーナリストやゴーストライター、小説家など適性によって多様性もある。他の職業で生活費を稼ぎながらブロガーとして自由に活躍している人もいる。
組織人として養った常識やスキルは大いに役立つ。出版業界は電話応対すらまともにできない人が少なくないので、「感じ良くて約束をきっちり守る」だけでもアドバンテージを発揮できる。
34歳から「土台」を作るのはほぼ不可能だ。むしろ、10代20代で自分が取り組んできたことをできるだけ客観的に振り返り、その土台にしっかりと立つ覚悟を決めてほしい。前を見るのはそれからだ。