アメリカ合衆国の日常生活の内訳を時間配分の点から詳しくさぐる(2023年公開版)
アメリカ合衆国労働省労働統計局では定期的に同国の国民の日常生活や就業状況などに関して多方面からの調査を行い、その統計結果を逐次公開情報として提供している。今回はその公開情報「American Time Use Survey」を用い、同国の大人たち(今件では15歳以上)が普段どのようなライフスタイルで生活しているのか、時間配分の上から年齢階層別などの属性別で詳しく確認する。
アメリカ合衆国の15歳以上の主要行動あたりの平均時間は次の通り。老若、夫婦独身、就業者無職を問わずで、しかも平日と休日を合算した上での平均値のため、全体的な平均動向把握のための指標であることに注意。
ライフスタイルに加え、日常生活における男女の役割の違いが見える結果となっている。
それでは年齢階層などの属性の違いで、行動の傾向にどれほどの違いが生じるのだろうか。公開データでは「ながら行動」に関するものは無いが、主従事(その行為をメインとして実行した行動)に関する時間配分について、属性別の動向が掲載されている。それを確認する。
最初は男女それぞれの年齢階層別。
まず男性。睡眠時間は15~19歳がもっとも長く、それ以降は年齢とともに短くなり、55~64歳でもっとも短くなる。そしてそれ以降は年齢とともに次第に長くなっていく。中年層までは就業で忙しくなり、睡眠時間を削っている実態がうかがえる。そして退職する人が増える年齢層になると少しずつ長くなっていく。実際にはこの「睡眠など」には寝ている時間以外に化粧や歯磨き、入浴なども含まれるのだが、大部分は睡眠。中年層以降は年を取るに連れて、身体維持のための生理的活動時間が長くなるようすがうかがえる。
食事や家事、買物の時間は若年層が短く、年を取るに連れて長くなる傾向がある。大人になると自分のため、あるいは家族のために費やす時間が増える構造。育児・介護は子供がいる可能性が高い中年層で長くなるが、それでも主従事時間としては1時間にも満たない。
仕事は中年層で大体6時間近くを維持する。短いように見受けられるがこれは平日以外に休日も合わせた平均値であり、さらに未就業者も合算されている、その上「ながら行動」が別途存在しているのが要因。また当然教育・教養は若年層ほど長くなる。
雑談やテレビ観賞、スポーツなどは若年層が長めで就業年齢になると短くなり、中年層以降は再び増加していく。特に65歳以上は8時間前後という長さ。
女性も行動性向に大きな違いは無い。男性との違いを見ると、買物の時間はさほど変わらないが家事や育児・介護の時間は長く、仕事などの時間は短い(パートタイム勤労者の比率が高く、また専業主婦も多いのが要因)。雑談・テレビ・スポーツの時間も短めで、ながら行動はともかく主従事としての行動としては、家事や育児などに自らの娯楽的な時間を取られている実情がうかがえる。
続いて回答者の学歴別の区分。これは学歴によってその人の生活様式がどのように変わりうるか(職業や収入、世帯構成など)を示唆する動向である。
高学歴者ほど睡眠などの時間、家事、雑談・テレビ・スポーツの時間は短くなり、食事や買物、仕事などの時間は長くなる。高学歴になるに連れて収入を得るための行為により一層長い時間を割かざるを得なくなると考えればよいのだろうか。食事の時間が長くなるのは、高学歴者は高収入者となりやすく、その分食事の質もよくなる、ゆっくりと時間を取るようになるとの結果かもしれない。他方、ほんの少しの違いではあるが、育児・介護の時間もまた、高学歴ほどおおよそ長くなるのは注目に値する。
あくまでもこれらは平均値であり、それぞれの属性の全員が同じ生活様式を持っているわけではない。しかしながら個々の属性によってライフスタイルが微妙に差異を見せる結果が出ている点は、興味深いことに違いはあるまい。
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