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雅子さま「陛下とご一緒に」 令和のご進講に2つの変化

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇陛下と皇后雅子さま(写真:ロイター/アフロ)

■お出ましにならなかった半年の間に何が

 8月15日の終戦記念日、天皇皇后両陛下は「全国戦没者追悼式」に出席され、久しぶりに公の場に姿を見せられた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、この半年の間に両陛下が予定されていた赤坂御所や皇居以外で行われる行事は中止になってしまった。

 その間、両陛下の映像として報じられたのは、マスクを着用して並んで座り、ご進講を受けていらっしゃる様子だった。ご進講とは、皇室の方々が文化や学術、さらには世界情勢などについて、専門家を招いてお話を聞く機会であり、豊かな知識と教養を高める公務の一環でもある。

 4月10日に両陛下が受けられたご進講は、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の尾身茂副座長(現在は感染症対策分科会会長)による、新型コロナの現状についてだった。当初40分の予定のところ1時間半にも及び、両陛下はメモを取りながら熱心にお聞きになっていたという。以来、赤坂御所内では8月20日まで14回のご進講が行われ、その多くが新型コロナや医療・福祉に関わるものだった。

 ご進講のテーマを何にするかは、政府・宮内庁の関係者らによって決められるようだが、果たして両陛下のご意志はどこまで反映されるのだろうか?皇室ジャーナリストの山下晋司さんに聞くと、こんな答えが返ってきた。

「ご進講する方を誰にするかを決める過程は、曖昧といっていいでしょうね。両陛下のご希望と、国としてぜひ聞いておいていただきたい事柄とは重複する場合も多いでしょうが、最終的には宮内庁が調整すべきことです。ただ、普段のご進講はここまで頻繁に行われるものではありません。このことからも、コロナ禍で苦境に立たされている人の状況などを知りたいとの両陛下の強い思いがうかがえます」

■お話を聞く分野は多岐にわたる

 実はご進講以外にも、両陛下がさまざまな人びとと会って話をされる機会が設けられている。それが「ご接見」と「ご説明」だ。「ご進講」「ご接見」「ご説明」はそれぞれどう違うのかは、厳密に明文化されてはいないものの、「ご進講」がプロのその道の専門家からお話を聞く機会であるのに対し、「ご接見」は社会に貢献してきた人や団体の代表者が招かれ、「ご説明」は例えば災害被害にあった地方の知事などが被害の現状について説明する。

 そして今年はここに、「ご聴講」というもう1つの形が加わった。8月20日の「ご聴講」では、「新型コロナウイルス感染症大流行下の水防災に関する国際オンライン会議」に、両陛下がパソコンのモニター越しに参加された。新たな知見や情報に接する「ご接見」「ご説明」「ご聴講」も含めれば、こうした機会はこの半年間で合計22回に及ぶ。

■「ご接見」に見える雅子さまの願い

 その中で、私が注目したのは、7月21日に両陛下がご接見された、生活貧窮世帯の子どもたちを支援しようと活動する民間団体の人たちだ。以前、雅子さまは「新たに公務として取り組みたいこと」を質問された時、記者会見でこのように話されている。

「特に難しい境遇に置かれている人々や,さまざまな困難に直面している子供たちには,常に心を寄せていきたいと思っております」(平成11年 皇太子妃殿下のお誕生日に際しての記者会見)

 そのお言葉どおり、雅子さまは公務で地方を訪れた際、子どもたちが入院している小児病棟などに積極的に足を運び、励ましのお言葉をかけられてきた。今年4月には、未来を担う子どもたちの貧困問題に役立ててほしいと、両陛下は「子供の未来応援基金」へ5千万円を寄付された。

 きっと雅子さまはコロナ禍によって子どもたちに及ぼす影響を心配していらっしゃるのだと思う。雅子さまは専門家や関係者らから話を聞くことで、より理解を深め、今何が必要なのかを感じ取られたのではないだろうか。

 今後の両陛下のご進講・ご接見などについて、山下さんはこう話す。

「両陛下がお会いになって話を聞いた人から再度、何カ月後かにその後どうなったのかについて話を聞かれる可能性はありますね。一回聞いて終わりではありませんから、引き続き、気にかけて心を寄せていかれると思います」

■両陛下が実践されている令和流とは

 コロナ禍という苦難に二人三脚で取り組んでいらっしゃる両陛下。以前にも度々、雅子さまは「陛下とご一緒に」というお言葉を使われていることからも、令和流の皇室をご夫婦で力を合わせて築きたいという思いが伝わってくる。

 山下さんは、平成と令和の違いがご進講の際にも表れていると指摘する。

「定例となっている外務省総合外交政策局長のご進講を、平成の時代は天皇陛下と皇后陛下が別々に受けておられましたが、令和になって両陛下がお二人で受けるようになられました。一緒に受けることは、両陛下で相談して決められたのでしょうね」

 雅子さまは天皇陛下の良きサポート役として、これからも歩みを合わせて取り組んでいかれることだろう。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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