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なぜ芸能人の個人情報が洩れるのか?【続報】

森井昌克神戸大学 名誉教授
(写真:アフロ)

芸能人の名をかたって、出会い系サイトに誘い込み、高額な利用料を請求する事件が話題となっていましたが、本人のスマホでのサービスやLINEのアカウントを乗っ取ることによって、さらに大きな詐欺を企てることも可能になってしまいます。

出典:なぜ芸能人の個人情報が洩れるのか?【Yahoo!Japanニュース個人】

先日、投稿した記事は、昨年に発覚した複数の芸能人に対する不正アクセス事件を受けて、その被害が芸能人だけにとどまらず、一般人を騙すことにもつながると述べました。実は投稿の直接のきっかけは芸能人と言われる人たちからの相談でした。それはLINEから不審なメッセージが友達の芸能人から送られてくるというものです。従来からのプリメイドカード詐欺のような場合は、電話等で確認を取ることも可能なのですが、そうではなくスケジュールや連絡先等微妙な内容を聞いてくるようで、電話で改めて確認するのも失礼と、遠慮がちに答えているのですが、乗っ取られていることはないのでしょうかという問い合わせと、その対処法の相談でした。

本人が気づかないうちに乗っ取られているということは有り得ます。LINEは主に携帯電話やスマホから利用することを想定しているのですが、パソコンからも利用できます。スマホとパソコンから同時に使うこともできるのです。もし本人が知らない間にパソコンから利用できるように設定されてしまえば、他人がLINEに書き込んだり、メッセージの内容を見ることが可能です。この対処法についてはここをご参照ください。

LINEのアカウント乗っ取りのはLINEが利用されるようになってから始まり、ここ数年大きな問題になり、現在も収まったわけではありません。

このPINコードの強制は、最近特に問題となっているLINEアカウントを乗っ取って、本人に成り済まし、その友人らに電子マネーを送るように依頼し、搾取する詐欺への対策です。その根本はLINEのアカウントの乗っ取り、つまりIDとパスワードの乗っ取りです。

出典:LINEのPINコード強制は有効な対策か?【Yahoo!Japanニュース個人】

一人のアカウントが乗っ取られると、直ちになりすましが行われ、本人のふりをして「コンビニ等でプリペイドカードを買ってきて、後で代金は払うから」と、そのアカウントの友達を騙し、プリペイドカードを番号を送ってもらい、搾取するのです。直接の金品被害は、その友達なのですが、一番の被害は乗っ取られた本人になります。なりすましとはいえ、結果的に友人への被害を及ぼした原因となり、信頼関係すら損なわれるからです。

対象が芸能人の場合、目的が金品の搾取というよりも、芸能人のプライベート情報になります。一人の芸能人のアカウントから、その友人の情報を得るのです。メールを覗き見たり、LINEの会話やアドレス帳からその情報を得ます。さらにその情報からその友人のアカウントを乗っ取ろうとするのです。一般のLINE乗っ取りと比べて、始末に負えないのは、単になりすましを行って、詐欺をはたらこうとするのではなく、友人の情報を盗み取って、その情報を使って、可能ならばさらにその友人になりすまして、その友人の友人の情報を得ようとして、ネズミ算的に増やしていくのです。上述のプリペイドカード詐欺の場合、「下手な鉄砲、数打ちゃ当たる」方式で友人に当たる多数のアカウントに対して詐欺のメッセージを送り、大概の場合、すぐになりすまされた側が気付いて、サービスを停止する等、被害を食い止められるのですが。芸能人のプライベート情報を盗むことが目的の場合、その犯行が当事者にもわからないのが厄介な問題なのです。

芸能人同士のLINEグループの場合、友人としての関係だけでなく、仕事としての関係もあり、安易に連絡先や予定(スケジュール)を教えてしまうようです。特に一般には、仕事周りのことをマネージャ(所属事務所)に任していることもあり、プライバシーの管理となると一般の人よりも意識が薄い傾向があります。もちろん、これは私の周りだけの眺めた結果の私見であって、十分な調査および解析結果でもありませんが。

神戸大学 名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工繊大助手、愛媛大助教授を経て、1995年徳島大工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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