Yahoo!ニュース

【アルバルク東京】ディフェンスで先陣を切り、チームにエナジーと自信をもたらした小酒部泰暉

青木崇Basketball Writer
高い身体能力を武器に攻防両面で躍動した小酒部 (C)B.LEAGUE

 “91対57”

 ゲーム1終了後から24時間弱でここまで違うゲーム展開になるとは、ほとんどの人が予想できなかったに違いない。筆者もその一人だ。しかし、実力が拮抗したチーム同士、それもポストシーズンでの戦いになると、ちょっとしたことで大差がついてしまう試合も起きてしまうもの。島根スサノオマジックとのゲーム2を制したアルバルク東京は、小酒部泰暉の先発起用が見事に当たった。

 63対80で敗れたゲーム1、小酒部は日本人選手最多となる10点をマーク。2Pショットを着実に決めただけでなく、ディフェンス面では島根の司令塔である安藤誓哉を後半にスローダウンさせる要因になっていた。ルカ・パヴィチェヴィッチコーチは、ゲーム2で小酒部を先発で起用することに迷いがなかった。

「島根には個の部分で非常に素晴らしい選手が3人いて、いずれも試合をコントロールできます。金丸(晃輔)、(ペリン)ビュフォード、そしてチームの核となっているのが(安藤)誓哉です。トラビスもケイも素晴らしい選手ですが、チームの核は誓哉。昨日は誓哉が前半で強いパフォーマンスを見せ、島根に勢いを与えました。後半に誓哉が無得点だったことでも、小酒部はいい仕事をしていました。今日は小酒部を先発で起用し、島根の核である誓哉にできる限りプレッシャーをかけ続けるようにさせました。誓哉を抑え込むのは非常に難しいのですが、彼は我々にとって大きな助けになりました」

 ゲーム1の後に「気持ちの部分で島根に負けていました」と語った小酒部は、指揮官の期待にしっかりと応えた。安藤に対してプレッシャーをかけ続けることで、島根が速いテンポでオフェンスを展開させにくい状況を作り出すことに成功。安藤は1Qで1本もFGを打てず、前半で5点しか奪えない。ビュフォードも無得点、4ターンオーバーとリズムに乗れない状況にできたことも、東京が主導権を握るになった理由と言える。

「チームとしては絶対負けられない試合だったので、入りから気持ちを入れてというところを心がけました。昨日やられた誓哉さんのところを守るということが一番のキーポイントだったと思うので、今日はそこが徹底できてよかったと思います」

 こう語った小酒部のハードワークにチームメイトも呼応し、ミスショット後のディフェンシブ・リバウンドを着実に確保すると、ピック&ロールを軸に堅実なハーフコート・オフェンスを遂行。着実にオープン・ショットを決められたこともあり、東京は前半のうちにリードを20点に広げていた。

 また、故障で3週間以上練習ができず、ぶっつけ本番で試合に臨んでいるアレックス・カークの活躍も東京にとっては大きかった。「40分間プレーしたみたいな疲労」と口にしながらも、15分6秒間で18点、6リバウンドを記録。自身のステップアップに加え、この試合で12点、3リバウンド、4アシストを記録した小酒部の存在が、東京にとって大きな意味があるとカークは認識している。

「エナジー、スピード、高い身体能力を持っているだけではなく、それを正しい方法で使えることが彼の持ち味。クイックネスとスピードということでは、自分が一緒にプレーした選手の中で最も刺激的な選手の一人であり、いつでもあのようなエナジーやディフェンスの頑張りをチームにもたらしてくれます。我々が正しい方法で使うことができれば、彼はスペシャルな選手になれると思います」

 もう一つも負けられない状況の中、東京は小酒部が大きな違いをもたらしてシリーズを1勝1敗のタイにした。しかし、島根もこの大敗からメンタルを切り替え、最高の力を出し切るためにしっかりと準備してくるはずだ。安藤がこのままスローダウンしたままで終わるとは到底思えないし、パヴィチェヴィッチコーチはそのことを重々承知している。

「誓哉は競争心旺盛で負けず嫌いな選手ですから、より高いモチベーションで(ゲーム3に)臨み、カムバックしてくるとわかっています。すごいバトルになるでしょう」

 小酒部がゲーム3でも質の高いパフォーマンスを発揮するか否かは、東京の命運を左右する要素になるかもしれない。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

青木崇の最近の記事