なぜバルサはシャビが退任するのか?指揮官と主将のジレンマ…難航する後任人事。
今シーズン限りで、レジェンドがクラブを去る。
バルセロナは先日、シャビ・エルナンデス監督が2023―24シーズン終了時に退任することを発表した。2025年夏まで契約を残していた指揮官だが、“前倒し”で退任を決めた格好だ。
今季のバルセロナはコパ・デル・レイでアトレティック・クルブに敗れてベスト8敗退が決定。チャンピオンズリーグでは決勝トーナメントに勝ち進んでいるが、リーガエスパニョーラでは第22節ビジャレアル戦で敗れて首位ジローナとの勝ち点差が11ポイントまで広がり、それがシャビ監督の退任宣言につながった。
「6月30日以降、私はバルセロナの監督としては続けない。クレ(バルセロナファン)として、この状況は許されないと思う。行き先を変更して、ダイナミズムを変えなければいけない」
「バルセロナの監督になるというのは、残酷だ。自分に欠けている部分があると感じさせられる。メンタルの消耗が激しい。続けることに意味がないと思わされるほどだ」
これはビジャレアル戦後のシャビ監督の言葉だ。
■次期監督の候補
このタイミングでのシャビ監督の退任宣言のメリットはなんだろうか。バルセロナは時間を確保できる。次期監督やスポーツプロジェクトについて考えるための時間だ。
ロベルト・デ・ゼルビ監督(ブライトン)、ミケル・アルテタ監督(アーセナル)、ミチェル監督(ジローナ)、イマノル・アルグアシル監督(レアル・ソシエダ)、ハンジ・フリック監督(フリー)、ユルゲン・クロップ監督(リヴァプール)…。メデイアには、多くの指揮官の名前が踊っている。
バルセロナのフロント陣が強い関心を示しているのはデ・ゼルビ監督だ。デ・ゼルビ監督は昨季、プレミアリーグを6位でフィニッシュ。ブライトンにクラブ史上初のヨーロッパリーグ出場権をもたらした。
デ・ゼルビ監督は2026年夏までブライトンと契約を結んでいる。だが契約解除金が設定されていると言われており、その額は1000万ユーロ(約15億円)前後だとされている。
また、バルセロナはアルテタ監督にも関心を寄せている。
アルテタ監督は2019―20シーズン途中からアーセナルを率いている。2020−21シーズン(8位)、2021−22シーズン(5位)と少しずつチームを強くして、昨季、プレミアで準優勝を果たした。
現役時代、パリ・サンジェルマン、レンジャーズ、レアル・ソシエダ、エヴァートン、アーセナルと複数クラブでプレーした経験を持つアルテタ監督だが、元々はラ・マシア(バルセロナの育成寮)出身だ。バルセロナのカンテラで育ち、若くして国外に飛び出した。“バルサのDNAを知る男”として期待される人物だ。
■ラ・リーガの指揮官と現実的な案
他方で近年、ラ・リーガで素晴らしい成績を残しているのがイマノル監督とミチェル監督だ。
イマノル監督は、ラ・レアルのカンテラーノを育てながら、今季チャンピオンズリーグでベスト16に進出するチームを作り上げた。ミチェル監督は、予算規模でいえばラ・リーガで中位から下位に相当するチームで、快進撃を続けている。
そして、フリーで招聘のチャンスがあるのが、クロップ監督とハンジ・フリック監督だ。クロップ監督は今季終了時にリヴァプールを離れるとすでに明言している。その際、他クラブからのオファーは受けないと断言しているが、契約状況としては今夏にフリーの身となる。ハンジ・フリック監督に関しては、2021年にジョアン・ラポルタ会長が招聘を検討していたといわれている。
なおバルセロナに縁のある人物として、チアゴ・モッタ監督(ボローニャ)、ラファ・マルケス監督(バルセロナB)が挙げられる。とりわけ、「そういうチャンスが訪れたらノーとは言えない」と語っていたマルケス監督については、現実的な策としてクラブが準備しているところだろう。
「シャビから今シーズン終了時に去りたいと言われた。だがシーズンは終えたい、と。彼からの提案だったので、私はそれを受け入れた。彼はバルセロニスモ(バルセロナ主義)のレジェンドだからだ」とはラポルタ会長の弁だ。
「シャビは正直な人間だ。誇りを持って、行動してくれた。彼はバルサを愛している。彼とコーチングスタッフのコミットメントを信頼しているので、提案を受け入れた」
シャビ監督は1月に退任を決めた。それは彼の誠実さで、クラブ愛だった。
シャビはバルセロナで“監督”というより“主将”のような存在だったように思う。無論、財政事情が苦しいなか、帰還したレジェンドを責め立てることはできない。だが一方で、ラポルタ会長に次の監督人事での失敗が許されないというのも、これまた明白である。