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ワールドシリーズ第6戦で『アイ・ラブ・LA』は再びスタジアムに響き渡るか?

菊田康彦フリーランスライター
ワールドシリーズ第1戦はドジャースの勝利。試合後には『アイ・ラブ・LA』が流れた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ドジャースのみならずLA共通のチームソング

♪Hate New York City...(ニューヨークは嫌いだ)

 ロサンゼルス・ドジャースが本拠地ドジャー・スタジアムで勝つたび、場内にはこんなちょっと辛辣な歌い出しの曲が流れる。ロサンゼルスで生まれ育ったシンガーソングライター、ランディ・ニューマンによる地元賛歌の『アイ・ラブ・LA』だ。

 この曲を1曲目に収録した彼のアルバム『トラブル・イン・パラダイス』が発売されたのは1983年だから、今から34年前ということになる。当時、ニューマンは39歳。もともとは翌年のロサンゼルス五輪に向けて書かれた曲だといわれているが、それからずっとこの曲はLAっ子に愛されてきた。

 もっとも、最初にこの曲をチームソングとして採用したのは、同じくロサンゼルスを本拠地とするNBA(プロバスケットボール)のレイカーズ。ドジャースが、ホームゲームで勝利するたびにこの曲を流すようになったのは、2000年代に入ってからだ。両チームのほか、MLS(プロサッカー)のロサンゼルス・ギャラクシーも勝利の後でこの曲を流し、NHL(プロアイスホッケー)のロサンゼルス・キングスの試合では、チームがゴールを決めるたびにこの曲がアリーナに鳴り響く。今やロサンゼルスに本拠を置くプロチーム共通のチームソングというわけだ。

 ちなみに『アイ・ラブ・LA』のレコーディングには、実に豪華なメンバーが参加している。リードボーカルとピアノは作詞作曲も手掛けたニューマン本人だが、ギターのスティーブ・ルカサー、キーボードのデービッド・ペイチ、そしてドラムスのジェフ・ポーカロ(故人)は、当時は『TOTO IV~聖なる剣~』の大ヒットで飛ぶ鳥を落とす勢いだったロックバンド、TOTOのメンバーである。

 ベースを弾いているのは、エリック・クラプトンなど多くのミュージシャンと活動を共にし、近年はTOTOのメンバーとしてもプレーしたネイザン・イースト。さらにバックコーラスは、フリートウッド・マックのリンジー・バッキンガム、クリスティン・マクヴィーらが務めるなど、そうそうたる顔ぶれでレコーディングされている。

『アイ・ラブ・LA』採用後、初のワールドシリーズ出場

 この『アイ・ラブ・LA』が世に出てからというもの、ドジャースがワールドシリーズに出場したのは1988年と今年の2度だけ。1988年当時はまだ勝利後にこの曲を流す習慣はなかったし、ドジャースがアスレチックスを4勝1敗で破って“世界一”を決めたのも、敵地のオークランドでのことだった。

『アイ・ラブ・LA』を勝利ソングに採用し始めて、初めてワールドシリーズに進んだ今シーズン。ドジャー・スタジアムで行われた第1戦で、ア・リーグ王者のヒューストン・アストロズを下すと、試合終了後にはこの曲が鳴り響いた。スタンドを埋めた大観衆が、サビの「I love LA!」に続いて「We love it!!」と声を張り上げるのを、画面越しに聞いた日本のファンも多かったことだろう。

 しかし、ドジャースは続く第2戦を延長11回の末に落とすと、ヒューストンに舞台を移した第3戦も連敗。第4戦は逆転勝利を収めたが、延長10回、5時間17分の熱戦となった第5戦は12対13のサヨナラ負けを喫し、アストロズに王手をかけられてしまった。

 シリーズは10月31日(日本時間11月1日)から舞台をドジャー・スタジアムに戻すが、第6戦が終わっても『アイ・ラブ・LA』を耳にすることがなければ、それはアストロズが球団史上初のワールドチャンピオンに輝いたことを意味する。もう一度「We love it!!」と叫ぶLAっ子の姿を見ることはできるだろうか?

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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