42歳。年収1千万円。経済力はあっても私は1人では生きていけません~40歳からの婚活入門(2)~
***大企業の正社員、中谷里佳子さん(仮名、42歳)の話***
結婚しないで1人で生きていこうと思っていました。新卒で入社した会社でずっと頑張って来たし、経済的には自立をしているからです。年収ですか? あまり言いたくはありませんが、残業代を含めると1千万円ぐらいもらっています。でも、無駄遣いはしません。家計簿もちゃんとつけています。
こんな私が婚活に合計160万円も投じるきっかけとなったのは、母親が大動脈解離で倒れたこと。私が35歳のときでした。幸いなことに1ヶ月ほどで回復しましたが、亡くなっていたかもしれない大病です。親の死を切実に感じたとき、「私は1人では無理。経済的は大丈夫でも精神的にもたない。生きていけない」と悟ったのです。両親ともに70歳を超えていますし、父親は以前から心臓に病気を抱えています。
私が結婚相手に求めるのは、ちゃんと会話ができること。そのためには、ある程度の学歴がある人のほうがいいだろうと考えて、高学歴・高収入の男性が多いことで有名な結婚相談所に入会しました。あのときは自分はまだ高く売れると勘違いしていたんですね。営業担当の女性から「35歳になるまでに登録すればよかったのに」と言われたことを今でも覚えています。
男性が売り手市場すぎる結婚相談所での不利な戦い
3年間で10人以上の男性とはお見合いをしました。でも、ほとんどの男性からは断られました。理由がわからずに連絡が途絶えたり、相談所を介して断られることが多いのですが、「背の高い女性は苦手」とはっきり言われたこともあります。
途中でようやく気づいたんです。この結婚相談所は、高学歴で高収入というハイスペックの男性が自分にピッタリ合った若くてかわいい奥さんを見つける場所なのだ、と。
次に入会したのが大手の結婚相談所です。自分が相手に求める条件を入力すると、その条件をほぼ満たした相手だけを毎月紹介してくれます。さすが大手。膨大な数の登録者がいるのですね。
でも、すでに30代後半になっていたので、実際にお見合いできたのは10人ぐらいでした。私からお断りをした人もいます。確かに条件は満たしていたけれど、あまりに主体性のない男性でした。結婚すれば長い共同生活が待っているので、「いいよ。何でも」ばかりでは困ります。
その結婚相談所とは担当の女性との相性も良くありませんでした。たまに連絡が来るのですが、会うたびに気に障るようなことばかり言うんです。「高学歴で高収入、顔が丸くてぽっちゃりしているあなたのような人が好きな男性もいるかもしれないわよ」とか「40歳を超えると今よりもっと引き合いがなくなる」とか。これでは気持ちが後ろ向きになってしまいます。
私は昨年に管理職になり、今では年上ばかり4人の部下を抱えています。忙しくて、仕事に逃げられる状況でした。実りのない婚活を続けていて、自分が結婚に求めるものがわからなくなっていたんです。その時点で累計140万円もお金を使っていました。急に疲れを感じて、昨年末に結婚相談所は休会しました。
親同士の代理お見合いパーティーでの「大ショック」
家族はとても心配してくれています。今年の春ごろ、両親は独身の子を持つ親同士がお見合いをするパーティーに参加してくれました。その場で40代後半の息子がいる人から断られてしまったんです。私の年齢が理由だったのだと思います。私という娘を溺愛している父親は「そんなはずはない」と大ショックを受けていました。本当に申し訳なかったです。
母親からは「あなたが条件面でわがままを言っているのが原因。本当に結婚する気があるのか」と責められました。電話越しで私は逆ギレしてしまったんです。5年以上もがんばってダメだったからあきらめたのに、どうして「わがまま」だと叱られなければならないのか、と。大声にびっくりしたのか、飼っているウサギが心配して足をなめてくれました。せつない夜でした……。
私には2歳年上の兄がいます。メーカー勤務の無骨な男で、女性とのコミュニケーション能力は極めて低い。絶対結婚できないだろうと思っていたら、昨年に結婚が決まりました。急に妹が心配になったらしく、先月に兄の勤務先がある県に呼び出されたんです。彼がお世話になった結婚相談所の女性担当者Aさんを紹介されました。この人はすご腕だからぜひお世話になれ、その前にお前の想いを全部話せ、と。相変わらず強引でした。
会社と結婚できるわけではない。20年後はどう過ごすのか
たくさんの時間とお金を使って結果が出なかったので、私は結婚相談所には不信感があります。どの会社も「誠心誠意」とうたっていますが、実際は売り上げと利益を重視しているビジネスですよね。そんなことも含めて、Aさんに赤裸々に語りました。
彼女は静かに話を聞いてくれて、「あなたは石橋を叩いて渡る人。奥ゆかしくて、一歩引いてしまうタイプ。そんなあなたの背中を押してあげたい。あなたが住んでいる地域は私の担当ではないけれど、お兄さんの熱意に感動したので全力でお世話をさせてもらう」と言ってくれました。そして、彼女の友だちで48歳バツイチの高学歴女性が、46歳の男性と結婚した話を聞かせてくれました。男性のほうは当初「子どもが欲しいから30代半ばまでの人がいい」と言っていたそうですが、彼女とお見合いしてデートを重ね、最終的には「彼女以外との結婚はありえない」とのろけるほどになったそうです。
この結婚相談所は老舗の大手ですが、シニアの登録者が比較的多くて、マッチングも各担当者(お見合いおばさん)が長年の勘を頼りに行うことが特徴です。登録者が提示した条件とは異なる人を「きっとあなたに合う」と紹介されることもあります。
Aさんを信用したわけではありません。兄の熱烈な推薦がなかったら入会しなかったでしょう。でも、10年先20年先のことを考えると不安なのは確かです。平日は12時間以上も働いている会社と結婚するわけにはいきません。体を壊してしまったら会社は冷たいのだと周囲の事例を見て知っています。もう1回だけ、婚活を頑張ってみることにしました。入会金は20万円。書類はすべて提出したので、これから紹介をしてもらうところです。これで本当に最後。仕事の優先順位は下げて、あと1年だけ婚活をします。
***筆者より中谷さんへ***
「自分は確かに美人ではない。でも、人並みの容姿をしているとは思う」と自己分析する中谷さん。男性の筆者から正直な感想を言わせてもらうならば、「自分より10歳年下ならば大いに魅力的な外見」です。同世代から積極的に言い寄られるような色っぽい美人ではないのですが、笑顔にとても愛嬌があり、健康的な印象も受けます。
中谷さんは性格にも「可愛げ」があります。会話のテンポは速いけれど決して相手をバカにしたりはしません。こちらの話もよく聞いて「おっしゃる通り!」と笑ってくれ、美味しいものを食べると素直に喜びます。十二分に気遣いができる大人でありながら、いい意味で素朴なのです。2歳年下の僕ですら「可愛い人だな」と感じることがあります。
楽しい会話を何よりも重視する中谷さんに、叱られるのを覚悟で提案します。50代の男性を狙いましょう。彼らであれば、中谷さんの可愛らしさをすぐに見抜き、さらに性欲(露骨な表現ですみません)も感じるでしょう。結婚とは男女が裸で結ばれる行為でもあるので、性的なアピールはやはり重要です。化粧や洋服もプロのアドバイスを仰いでください。
結婚相談所の担当者にも「50代の男性でも溌剌と働いていて、楽しく会話ができる人がいたらぜひ紹介してください。バツイチ子持ちでもOKです」と伝えれば、紹介する男性の幅がかなり広がるはずです。実際に会ってみたら年齢差は気にならないかもしれませんよ。特に自営業者がおすすめです。会社員の場合は、超有名企業の管理職という中谷さんの肩書に負い目を感じてしまう恐れがあります。高い学歴も同様です。
なお、結婚相談所のすべてに不信感を持つ必要はありません。筆者はボランティア(趣味)でお見合いおじさんをやっているので断言できますが、我々アマチュアよりもプロのほうが真剣です。仕事には、お金や出世のためだけではなく、社会貢献の実感や自分なりの達成感を得るためという側面もありますよね。相性の合う合わないはあると思いますが、中谷さんに寄り添いながら力強くサポートしてくれるプロは少なくないはずです。Aさんもその1人だろうと僕は感じます。
160万円という出費は確かに大きいですね。でも、決して無駄にはなっていないと思います。20人以上の男性とお見合いすれば、ちょっと言葉は悪いけれど「独身男性の相場観」みたいなものが養えるからです。少しお休みした後、場所を変えたり範囲を広げたりしてお見合いをすれば「掘り出し物」の男性に会えるかもしれません。35歳のときは近くにいても気づけなかったような男性ですよ。42歳の今だからこそわかる「いい男」がきっといます。