手取りとカーライフの関係を数字化してみる(2024年公開版)
自動車を所有し利用するにはさまざまな費用が必要になる。購入時の自動車本体代、保険料、駐車場代、各種整備費用、ガソリン代、そして車検代。車が生活の上で必要不可欠な人も少なくないが、それゆえにコストの存在に頭を痛めている人も多い。このコストについて若年層は、どの程度だと考えているのだろうか。ソニー損害保険が2024年1月に発表した調査報告書「2024年 20歳のカーライフ意識調査」(※)から実情を確認する。
今調査結果では若年層の代表たる20歳における「カーライフをするにあたり1か月にかけられる金額」「カーライフをするにあたり必要な手取り月収」「車を購入する際の上限予算」が尋ねられ、その答えが掲載されている。これらの値を組み合わせることで、「車のある生活」を望んでいる若年層における各種金額の対月あたりの手取り比率(厳密には「カーライフが可能となる手取りを確保できた場合において、想定している対手取り比率」)が算出できることになる。
なお今件はリリースでは「手取り月収」との表記がされている。一方、一般論として「収入」「月収」は給与明細などに書かれている給料の額面、「手取り」「所得」はその額面から給与所得控除を差し引いたものとなる(自営業の場合は売上が「収入」、そこから必要経費を差し引いたのが「手取り」「所得」)。今件はその双方に受け取れる表記がされているが、単に収入を意味するものであれば「手取り月収」との表現はしないことから、「手取り」と判断した上で話を進める。
まずは新規に自前の車を調達する際の手取り比率。当然ほとんどの人は手取り一か月分で車が購入できるような高給取りであるはずはなく、自家用車の類が安いはずもないので、単純に月あたりの手取りの何倍かで表されることになる。無論値が大きい方が、余計にコスト計上ができる=車の必要性を強く認識していることになる。なお2021年は該当値が調査されていなかったので値はない。
直近年では7.3倍。つまりカーライフをするにあたり「この程度の手取りが望ましい」と想定されている金額に対し、7.3倍の額を車本体の購入額上限として考えていることになる。見方を変えれば20歳の手取りを底上げできれば、それだけ高額の新車が購入され得ることになる。
経年推移を見ると、特に傾向のような動きは見られない。7~8倍程度、と見ればよいのだろう。
この値はカーライフのための初期費用だが、車を用いる際には当然定期的な出費も求められる。燃料代や駐車場代が代表的な出費。それではそれらのランニングコストは手取りの何%を想定しているのだろうか。こちらは月額コストが手取りを上回る状況は考えにくいので、手取りに対する%で表している。
ランニングコストは直近年で7.1%。手取りが20万円ならおおよそ1万4200円を想定していることになる。ガソリン代が高騰している昨今では、かなり苦しいそろばん勘定を強いられることになる。
経年推移ではこちらも傾向のようなものは見出しにくい。2019年までは減少、それ以降は漸増というところだろうか。だいたい6~8%台の領域内におさまる動きのようにも見える。
今件は半ば数字遊び的な指標で、実用性がどこまであるのかは疑わしいものではあるが、あくまでも新成人を対象とした上で、「手取りの7-8倍が自家用車購入時の目安」「手取りの6~8%台が自家用車保有時のランニングコスト」と見ると興味深いものがある。
今後この値がどのような変化を見せるのか、若年層の懐事情や車への価値の見出し方の変化と合わせ、見極めたいところではある。
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※2024年 20歳のカーライフ意識調査
2023年11月13日から11月17日にかけて、2003年4月2日~2004年4月1日生まれの男女に対しインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000件。男女比は1対1。調査実施機関はネットエイジア。なお今件調査における「都市部」とは、市・区における人口ランキングの上位都市(1位から8位)である、北海道札幌市、東京都23区、神奈川県横浜市、愛知県名古屋市、京都府京都市、大阪府大阪市、兵庫県神戸市、福岡県福岡市。それ以外はすべて「地方」。
今調査は前年まで「新成人のカーライフ意識調査」として実施してきたが、2022年4月の成年年齢引き下げに伴い、「20歳のカーライフ意識調査」と名前を変えて実施されている。調査内容・対象はほぼ同一で、データの連続性もほぼ維持されているとみなしてよい。
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