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MLBポストシーズン:ここまでのシリーズMVPを選ぶなら?  四球で一塁から三塁まで進んだあの選手も

宇根夏樹ベースボール・ライター
ダニエル・マーフィー(ニューヨーク・メッツ)October 15, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

これから始まるリーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)とワールドシリーズでは、それぞれMVPが選出される。昨年のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズMVPは、ア・リーグがロレンゾ・ケイン(カンザスシティ・ロイヤルズ)、ナ・リーグはマディソン・バンガーナー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)で、バンガーナーは続くワールドシリーズでもMVPに輝いた。一方、ディビジョン・シリーズ(地区シリーズ)にMVPはない。そこで、ここまでの4シリーズのMVPを独自に選んでみた。

ア・リーグ・ディビジョン・シリーズ(ALDS)

カンザスシティ・ロイヤルズ 3-2 ヒューストン・アストロズ

MVP:ジョニー・クエイト(ロイヤルズ)

ロイヤルズでは、ケンドリス・モラレスが両チーム最多タイの3本塁打と最多の6打点を記録し、守備や走塁で光った野手もいたが、MVPには第5戦で快投を演じたジョニー・クエイトを挙げたい。内野安打と本塁打で2点を失った2回表を除くと、他は7イニングとも3者凡退。第5戦の重みを考えれば、第2戦の6回4失点を差し引いてもお釣りがくる。

モラレスが第1戦に連発したアーチはいずれもソロで勝利につながらず、第5戦の3ラン本塁打は勝利を確定させたものの、モラレスが打席に入った時点でロイヤルズは2点リードしていて、アストロズの攻撃はあと1イニングだった。

第1戦から第4戦までに限れば、MVPの筆頭候補はアストロズのコルビー・ラスマスだろう。4試合中3試合で本塁打を放ち(ワイルドカード・ゲームも含めれば5試合で4本塁打)、打率.545&OPS2.160を記録。ただ、第5戦はクエイトの前に3打席とも三振を喫した。

ア・リーグ・ディビジョン・シリーズ(ALDS)

トロント・ブルージェイズ 3-2 テキサス・レンジャーズ

MVP:ホゼ・バティスタ(ブルージェイズ)

リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ進出を決めたという点において、ホゼ・バティスタの一振りはポイントが高い。バティスタは第5戦の7回裏に、同点の場面で3ラン本塁打を放った。シリーズ全体でも、5打点と4長打は両チームで最も多く、2本塁打もチームメイトのジョシュ・ドーナルソンと並ぶ最多だった。

もう一人、MVPを挙げてよいなら、ブルージェイズのロベルト・オスーナだろう。弱冠20歳のクローザーは第2戦以降の4試合すべてに登板し、対戦した17人をすべて討ち取った。第2戦は同点の9回表から2イニングを投げ、第5戦は8回表1死一、二塁の場面でマウンドに上がって2者連続三振に仕留め、9回表も2三振を奪って締めた。

他に、ケビン・ピラー(ブルージェイズ)とルーネット・オドール(レンジャーズ)は、走攻守のすべてにわたって魅せてくれた。また、第3戦に先発登板したマルコ・エストラーダ(ブルージェイズ)は、7回裏に1死二、三塁として降板するまで無失点に抑えた。後続が三塁走者を生還させて1失点がついたものの、このシリーズで先発マウンドに上がった延べ10投手中、6イニング以上を投げて1失点以下はエストラーダだけだった。

ナ・リーグ・ディビジョン・シリーズ(NLDS)

シカゴ・カブス 3-1 セントルイス・カーディナルス

MVP:ホルヘ・ソレーア(カブス)

カブスで打率5割以上&2本塁打を記録した2人、カイル・シュワーバーかホルヘ・ソレーアで迷うところだ。ただ、シュワーバーがソロ本塁打2本で2打点だったのに対し、ソレーアは2本とも2ランで4打点を挙げた。スラッシュライン(打率/出塁率/長打率)も.500/.583/1.100と.571/.769/1.571でソレーアが上回っている。

カーディナルスではスティーブン・ピスコッティが、両チーム最多の3本塁打と6打点。ジェイソン・ヘイワードも攻守に活躍し、FAとなるオフに向けてアピールした。

ナ・リーグ・ディビジョンシリーズ(NLDS)

ニューヨーク・メッツ 3-2 ロサンゼルス・ドジャース

MVP:ダニエル・マーフィー(メッツ)

このシリーズのMVPはダニエル・マーフィー(メッツ)で決まりだ。3本塁打は両チームで最も多く、5打点は最多タイ。その内容も充実している。勝利につながらなかった打点は、第4戦のソロ本塁打だけ。第1戦は先制のソロ本塁打、第3戦はデビッド・ライトが敬遠四球で歩かされた直後にタイムリーヒットを放った。そして、第5戦はまさにヒーローだった。

1回表に二塁打で先制点を挙げ、同点の6回表に打ったソロ本塁打は決勝点となった。それ以上に素晴らしかったのが、先頭打者として迎えた4回表だ。ヒットで出塁し、1死からルーカス・ドゥーダが四球を選ぶと、ドゥーダに対して右寄りのシフトを敷いていた内野陣の隙を突いて、二塁ベースの手前から猛然と走り出し、無人の三塁へ滑り込んだ(記録は三盗)。マーフィーはこの後、トラビス・ダーノウのライトフライで同点のホームを踏んだ。

マーフィーの本塁打はドジャースのエース2人、クレイトン・カーショウ(2本)とザック・グレインキーから。ちなみに、マーフィーのレギュラーシーズン14本塁打中、対左腕はジェイク・マギー(タンパベイ・レイズ)から打った1本しかなかった。

他に、メッツでは2試合に先発登板したジェイコブ・デグロムが、計13イニングで防御率1.38を記録し、2勝を挙げた。第1戦は7回を投げて13三振を奪って無失点。第5戦は初回に2点を失ったものの、その後は苦しみながらも6回を終えるまで得点を与えなかった。また、クローザーのユーリス・ファミリアは、4登板で対戦した16人全員を討ち取り、第1戦と第5戦はイニングまたぎのセーブを挙げた。

ドジャースではエイドリアン・ゴンザレスが両チーム最多タイの5打点を挙げ、ジャスティン・ターナーはディビジョン・シリーズの新記録となる1シリーズ6二塁打を放った。これまでの最多は、現ドジャース監督のドン・マッティングリーや現チームメイトのジミー・ロリンズらによる1シリーズ4二塁打だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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