堅固な守備と世代融合で躍進するセビージャ。ラ・リーガの「3強時代」を崩せるか。
「セビージャ、セビージャ、セビージャァァァ!」
本拠地サンチェス・ピスファンに、大音量がこだまする。聞こえてくるのは、セビジスタの勝利を祝う雄叫びだ。
2019-20シーズン、セビージャは好調を維持している。第16節終了時点でリーガエスパニョーラの3位に位置。バルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーの「3強」に割って入れるか、注目が集まっている。
■モンチの復帰と大型補強
セビージャは今夏、スポーツディレクターのモンチが復帰した。そして、ジュレン・ロペテギ新監督を招聘して再スタートを切った。
モンチは、この夏、補強に1億5800万ユーロ(約189億円)を投じた。マドリー、バルセロナ、アトレティコに次いで、リーガで4番目の補強費。欧州5大リーグにおいても、ユヴェントス、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッドの次点にくる7番目の数字だった。
一方、セビージャはウィサム・ベン・イェデル(移籍金4000万ユーロ/モナコ)、パブロ・サラビア(1800万ユーロ/パリ・サンジェルマン)、クインシー・プロメス(1570万ユーロ/アヤックス)らを放出している。
巨額の補強費で、13選手を獲得したセビージャだが、「大当たり」の補強となったのはジエゴ・カルロスだ。D・カルロスは2014年夏に欧州挑戦を決め、当時ポルトガル2部リーグに属していたエストリルに加入。ポルトのBチームにレンタル放出され、そこでロペテギ監督と知り合っている。2016年夏に、ナントに移籍したD・カルロスは、フランスで108試合に出場して評価を高めた。
セビージャは、D・カルロスとジュール・クンデのセンターバックコンビ、アンカーのフェルナンドが一枚岩となり堅固な守備を築いている。今季、セビージャがリーガで3ゴール以上を献上したのは、第6節エイバル戦と第8節バルセロナ戦のみだ。なお、その2試合ではクンデがスタメンから外れていた。
「フィジカル能力の高い選手が欠けていた。夏にロペテギと話をして、その点では意見が一致していた」と、モンチSDは先日スペインのラジオ局『カナル・スール』で明かした。そして、加入したのがD・カルロス、クンデ、フェルナンドという選手だった。
■オリベルとレギロン
また、34歳のヘスス・ナバスが右サイドバックの定位置を確保する一方で、若い選手が躍動している。
マドリーのカンテラーノであるレギロンは、昨季1部デビューを飾ったばかりだ。奇しくも、ロペテギ監督の解任後にトップチーム指揮官に昇任したサンティアゴ・ソラーリの下で、2018年11月3日にリーガ第11節バジャドリー戦でトップデビューしている。ジダン監督の復帰で、再びマルセロが重宝されるようになったマドリーで、レギロンに居場所はなかった。
「アトレティコ・マドリーのカンテラ最高傑作」といわれていたオリベル・トーレスは、ディエゴ・シメオネ監督の下、2013年2月10日にリーガ第23節ラージョ・バジェカーノ戦でトップデビューした。しかしながらシメオネ監督のチームでは、守備の強度が足りず、望むような出場機会を得られなかった。
ビジャレアル、ポルトと移籍を繰り返して、オリベルはこの夏にセビージャに移籍した。ポルトでは、2014-15シーズンにロペテギ監督の指導を受けた。そのシーズン、リーグ戦26試合に出場して7得点を記録。チャンピオンズリーグでは、ベスト8進出に貢献した。
ベテランと若手が融合したメンバー構成で、ロペテギ監督は崩れないチームを作っている。ただ、課題を挙げるなら、得点力だろう。CFに据えられているルーク・デ・ヨングはリーガ13試合に出場して、29本のシュートを放ち、2得点を記録している。得点ランク首位のリオネル・メッシ(バルセロナ)は、10試合に出場してシュート数30本で12得点。シュート数ではメッシに引けを取らないものの、決定力で差が出ている。
それでも、3位の座は十分射程距離にある。セビージャが3位以内に入ったのは、2008-09シーズンが最後だ。およそ10年ぶりの戦果、それはリーガに風穴を開ける意味を持つことにもなる。