季節外れのサイクロン「ドナ」、最盛期にバヌアツ接近
美しきコバルトブルーの海に囲まれたバヌアツ共和国は、80以上からなる島々で、マリンスポーツの地としても人気のある国の一つです。またこの国で伝統的に行われている「ナゴール」という儀式は、「バンジージャンプ」の起源とも言われています。
このバヌアツに現在、季節外れのサイクロン・ドナ(Donna)が接近しています。
サイクロン・ドナ
日本時間5日(金)午後時点のドナの勢力はカテゴリー3で、中心気圧は975hPa、最大風速は40m(「強い台風」に匹敵)となっています。中心は北にありますが、バヌアツには広く雲がかかり風雨が強まっており、24時間で170ミリを超える雨も観測されています。
今後は南に向きを変え、来週始めにかけてバヌアツの西側を通る見込みです。直撃は免れるようですが、サイクロンの中心に向かって吹き込む東風の影響で、風雨が強まる恐れがあります。
相次ぐサイクロン
バヌアツは先月4月にもサイクロン・クックの被害に遭い、強風の影響で倒木や停電などが発生しています。
さらに2015年には、一時中心気圧896hPaまで発達し、当時「南半球における最強のサイクロン」と言われたパム(Pam)の直撃により、首都で最大瞬間風速85メートルを観測しました。一般的に南太平洋のサイクロンの総数は近年減少傾向にありますが、このところバヌアツでは連続してサイクロンの被害が起きています。
神とサイクロン
ところでバヌアツのタンナ島ヤオーナネン村には、ある教えが息付いています。それは、いつか "山の精霊の息子"が海を超え、文明の利器を持って自分達のもとにやってくるという信仰なのだそうです。そして2015年のサイクロン・パムの襲来は、その精霊の息子が近々やってくるサインだと考えていたようです。ではその信仰の対象は誰なのかというと、エリザベス英女王の夫で、4日(木)公務から引退されることが決まった、フィリップ殿下なのだといいます。
我々にとっては複雑な話ですが、そういえば英語には「act of god」という言葉があります。直訳すると「神のなす業」のことなのですが、これは「天災」や「不可抗力」などの意味もあります。人の操作できるスケールを超えた気象現象に、目に見えざるものの力の存在を感じるのは世界共通のことなのですね。