2年前の新人王がトレードで放出される。受賞からトレードまでの「史上最速」!?
シアトル・マリナーズとアリゾナ・ダイヤモンドバックスが、1対1のトレードを成立させた。マリナーズは、カイル・ルイスを手放し、クーパー・ハメルを手に入れた。27歳の外野手を放出し、今月下旬に28歳となる捕手/外野手を獲得した。
ルイスは、2020年の新人王だ。受賞から2年後の放出は、最速ではないものの、そうあることではない。今世紀に入ってから新人王に選出された選手のうち、受賞の翌年から数えて、3シーズン目を迎える前にトレードで移籍したのは、アンドルー・ベイリーとウィル・マイヤーズ(現FA)に、ルイスしかいない。
2009年に新人王を受賞したベイリーは、2011年12月のトレードで、オークランド・アスレティックスからボストン・レッドソックスへ移った。ルイスと同じく、受賞から2年後ということだ。2013年に受賞のマイヤーズは、翌年12月の三角トレードで、タンパベイ・レイズからサンディエゴ・パドレスへ移籍した。こちらは、新人王選出の1年後だ。ベイリーもマイヤーズも、他の選手とともに移籍し、交換相手も複数だった。
また、2017年以降の新人王のうち、ルイス以外の11人は、現在も受賞時と同じチームにいる。
新人王を受賞した2020年に、ルイスは、センターのレギュラーとしてプレーし、チームの60試合中58試合に出場した。だが、ここ2年は故障に泣かされ、メジャーリーグの出場は計54試合にとどまった。2020年の11本塁打と出塁率.364に対し、2021~22年はトータルで8本塁打と出塁率.301に終わった。
マリナーズは、ルイスを放出する前日に、トロント・ブルージェイズからテオスカー・ヘルナンデスを獲得している。ルイスとヘルナンデスは、どちらも右打ちの外野手だ。ヘルナンデスの加入だけでなく、ルイスが「スーパー2」として年俸調停の申請権を得たことも、放出の要因だと思われる。来シーズンの年俸は、100万~150万ドルとなる見込みだ。今シーズンの年俸は、75万7900ドルだった。トレードが成立しなければ、マリナーズは、ルイスをノンテンダー(契約解除)としていたかもしれない。
ルイスと交換にマリナーズが得たハメルは、メジャーリーグ1年目を終えたところだ。年俸調停の申請権を得るまでには、あと2年かかる。
ルイスと違い、プロスペクトだったわけではないが、捕手と外野手のどちらとしても起用できるので、汎用性はある。メジャーリーグでは66試合で3本塁打と出塁率.274ながら、ここ2年とも、AAAでは好成績を収めている。計125試合で18本塁打と出塁率.429だ。遅咲きの可能性も皆無ではない。
一方、ダイヤモンドバックスは、ルイスの再ブレイクに期待しているのだろう。まだ27歳なので、健康さえ維持できれば、2016年のドラフト全体11位が再び資質を発揮してもおかしくはない。ダイヤモンドバックスには左打者が少なくないので、この点でも、ルイスの獲得は理に適う。
ルイスにとっても、このトレードは悪くない話だろう。ダイヤモンドバックスは、再建中だ。2年連続ポストシーズン進出をめざすマリナーズにいた場合よりも、出場機会は多くなるに違いない。