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パリ五輪のサッカー競技で物議に。「細谷の1ミリ」とは何だったのか。#専門家のまとめ

下薗昌記記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家
スペイン戦で奮闘した細谷真大選手。「幻のゴール」は無常のオフサイド判定に(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 パリ五輪を戦ったサッカー日本代表は準々決勝でスペインに0対3で敗れましたが、前半、細谷真大選手が決めたかに見えたゴールはVARの介入でオフサイドと判定されノーゴールに。明らかに試合の流れに影響したジャッジだっただけに「細谷の1ミリ」として物議を醸しました。ルール上は確かにオフサイドです。ただ、審判経験者やプロ選手、ジャーナリスト、そして当事者の細谷選手はあのジャッジをどう見たのでしょうか。

ココがポイント

▼スペイン戦で先行された日本は前半40分、細谷真大選手が同点ゴールを決めたかに見えたが、VARが介入し、オフサイドの判定に

サッカー日本代表「細谷の1ミリ」…ゴールネット揺らすもVAR経てオフサイド判定、得点は幻に(読売新聞オンライン)

▼難しいルールではあるがいわゆる「戻りオフサイド」に相当すると元国際審判員の家本政明さんは、審判の目線で解説

・「要するに戻りオフサイド」元国際審判員の家本政明が細谷真大のゴール取り消しを解説「競技の精神は関係ありません。事実が全て」【パリ五輪】(サッカーダイジェストWeb)

▼誤審ではなく、ルール上はオフサイドに相当するものの、本来の趣旨とは異なると見られるルールの運用にはアメリカ人記者も異論

・日本のゴール取り消しが呼ぶ波紋 海外記者が警鐘「オフサイドの本来の目的ではない」(FOOTBALL ZONE)

▼歯に衣着せぬコメントや解説で人気の元日本代表選手も、今回のジャッジには困惑を隠さない

・本田圭佑「もうサッカーのルールがよく分からん」細谷の同点弾取り消し判定に持論 SNSでも「細谷の1ミリ」など話題に(日テレNEWS NNN)

無情のジャッジに泣いた細谷真大選手自身は、「理想のゴールだった」と幻のゴールを帰国後に振り返った

・【五輪代表】細谷真大ら帰国「細谷の1ミリ」ゴール取り消し悔やむ「理想に近いゴールだった」(日刊スポーツ)

エキスパートの補足・見解

 悪質なプレーや誤審を減らすことに貢献しているVARはサッカーのあり方を大きく変えました。スピーディー化した現代サッカーにおいて、もはや審判の目だけでジャッジを下すのは困難ですが、今年には英プレミアリーグでVARの撤廃が検討(結果的に来季も継続)。現役選手やOBからはVARに懐疑的な声も聞かれるのも事実です。

 かつてディエゴ・マラドーナさんによる「神の手ゴール」などサッカー史に残る誤審もありましたが、もはや「誤審もサッカーの一部」という意見は受け入れられないでしょう。ただ、万人が常に納得する運用や介入は難しいだけに、今後もVARを巡る問題は続くと思われます。

記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家

1971年、大阪市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)でポルトガル語を学ぶ。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国でワールドカップやコパ・リベルタドーレスなど700試合以上を取材。2005年からはガンバ大阪を追いつつ、ブラジルにも足を運ぶ。著書に「ジャポネス・ガランチードー日系ブラジル人、王国での闘い」(サッカー小僧新書)などがあり、「ラストピース』(KADAKAWA)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞。近著は「反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――」(三栄書房)。日本テレビではコパ・リベルタドーレスの解説やクラブW杯の取材コーディネートも担当。

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