部数トップの「ちゃお」は13.2万部…少女向けコミック誌の部数動向(2023年7~9月)
部数は「ちゃお」がトップ
日々進歩する技術、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりでなく、少女・女性向けのコミック誌にもおよんでいる。今回はその雑誌のうち、少女向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されているコミック雑誌。おおよそ未成年でも高校生ぐらいまでが対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、実情を確認する。
まずは少女向けコミック誌の現状。最新データは2023年7~9月分。
少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に0.7万部もの差をつけており、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4~6月期の値以降継続している。以前話題に上ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌がトップの座に位置し続けている大きな要因となっているようだ。
第2位は「りぼん」、第3位は「LaLa」、そして「花とゆめ」「なかよし」「別冊マーガレット」「別冊フレンド」が続いている。
「別冊フレンド」は5期前に大きく部数を増やしたが、その次の期では大きく減らしてほぼこれまでの水準に戻り、今期ではさらに部数を減らしてしまう結果となった。後述する前年同期比では大きなマイナス幅を示す形となっている。
「別冊フレンド」は講談社発行の月刊コミック誌で、1965年に「週刊少女フレンド」の姉妹誌のポジションとして「別冊少女フレンド」との名前で創刊、1984年に現在の「別冊フレンド」に改名した。今期の印刷証明付き部数は1万9667部。
5期前における部数の飛躍は2022年6月13日に発売された7月号において、「東京卍リベンジャーズ」のコラボ企画として「人気キャラクタークリアカード8枚セット」と「名シーンふきだしステッカー」が付録に収められたことが原因だと思われる。以前同様のコラボ企画の付録を収めた2022年1月号は発売前の重版が決定されるなどで世間を騒がせたが、2022年7月号はそれ以上に大きく部数を引き上げる形となった。今期は前期に続きそのような特需的な号はなかったため、通常の部数動向(低迷漸減)が継続しているまでの話。
プラスは2誌…四半期変移
次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
プラス誌は「ベツコミ」「LaLa」の2誌で、いずれも誤差領域(上下幅5.0%)を超えたプラス幅を示している。「りぼん」がプラスマイナスゼロで、それ以外はすべてマイナス幅。誤差領域を超えたマイナス幅は7誌が該当。「花とゆめ」は前期比でマイナス11.4%もの下げ方。
少女向けコミック誌で部数トップの「ちゃお」は、今期の前期比はマイナス8.1%と誤差領域を超えた下げ幅。
該当期間に発売されたのは3誌。それぞれ読者層に合わせた魅力的な付録(ハッピーサマークリアトート、ときめき3wayミニショルダー、ブロー&スタイリングコーム・BIGリボン)が高評価を受けている。連載陣にもファンは多く、部数が少女向けコミック誌でトップなのも分かるというもの。
一方で中長期的に見れば部数は漸減中であることもまた事実。ここ数期でようやく部数の減少ぶりが落ち着いてきたというところか。少女向けコミック誌での部数トップの威厳を維持してほしいものだ。
「ベツコミ」は誤差領域を超え、非常に大きな上げ幅を示している。
「ベツコミ」は1970年創刊の小学館が発行する女子高校生をメインターゲットとした月刊漫画雑誌。元々は「別冊少女コミック」だったが2002年4月の「月刊フラワーズ」創刊に合わせて連載陣の一部がその雑誌に移動するとともに、「ベツコミ」に名称を変えている。
今期で大きく部数が伸びたのは、2023年8月号でアイドルの岸優太氏スペシャルとして、グラビアとインタビュー記事の掲載に加え、厚紙フォトカードが付録として同梱されたのが原因らしい。
プラスは無し…前年同期比
続いて前年同期比による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による影響を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
少女向けコミック誌は前年同期比では「ベツコミ」がプラスマイナスゼロで、「なかよし」が誤差領域内のマイナス、それ以外はすべて誤差領域を超えたマイナス幅を示している。1割以上の下げ幅は7誌、2割以上に区切っても3誌。いずれも掲載作品に何か大きな動きがあったわけではなく、本質的な不調にあると解釈できる。
少女向けコミック誌全体において、起死回生の策が必要な時期に来ていることには違いない。新型コロナウイルスの流行が部数減少傾向に拍車をかけた可能性は否定できないが、それを裏付けるものは無い。
他方、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性はある。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。
しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念な話に違いない。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。
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