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爪のメラノーマの見分け方 - 4つの危険サイン

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

皮膚がんの一種、メラノーマ。欧米では多くみられるがんですが、最近は日本でも増えつつあります。台湾の病院が行った新しい研究で、メラノーマの大きさと患者さんの生存期間に関係があることがわかりました。

【大きさと生存率の関係】

研究チームは、2006年から2022年の間に見つかったメラノーマ患者352人の記録を調べました。このうち135人が手術で腫瘍を取り除いていました。腫瘍の大きさと、手術後の生存期間の関係を分析したところ、腫瘍が大きいほど、生存期間が短くなる傾向があったのです。

ただ、腫瘍の大きさから、腫瘍が皮膚のどの深さまで広がっているかを正確に予想するのは難しいようです。腫瘍が大きいと、その場所で再発しやすくなりますが、遠くに転移するかどうかはわかりませんでした。

【日本人に多い爪のメラノーマとその特徴】

欧米人に多い皮膚がんのメラノーマですが、日本人に多いのは、紫外線とあまり関係ないタイプで、爪の近くにできやすい爪部メラノーマです。では、爪のメラノーマを疑う所見とはどういうものでしょうか?

皮膚のメラノーマではABCDルールという基準をもとにほくろとメラノーマを区別しますが、爪甲色素線条(良性の爪のほくろ)と爪のメラノーマを見分けるポイントが4つあります。

爪メラノーマの特徴(筆者作成)
爪メラノーマの特徴(筆者作成)

1. 色・幅の不均一

爪に縦に入った線の幅が一定でなかったり、色調が不均一な場合は要注意。がん細胞はそれぞれの増殖スピードがバラバラなため、色の濃い部分と薄い部分が混在します。

2. 逆三角形

爪の根元の黒色領域の幅が広く、先端に向かって細くなる形状はメラノーマの可能性が。これは爪の根元(爪母)でメラノーマ細胞が急激に増殖し広がったことを示唆します。

3. ハッチンソン兆候

医学生も学ぶ重要な所見で、爪に黒色の線があるだけでなく、その線を中心に皮膚にまで黒色変化が及ぶ場合、メラノーマが疑われます。この皮膚の黒色斑をハッチンソン兆候と呼び、爪母のメラノーマが皮膚に増殖・拡大したサインです。

4. 爪の破壊

メラノーマ以外でも起こり得ますが、爪の破壊がみられたら注意が必要。爪母のメラノーマが増殖し、正常な爪ができなくなった可能性があります。爪母がメラノーマによって損傷を受け、不完全な爪が生えて先端で壊れてしまうために起きます。なお、爪水虫でも爪の破壊や茶色がかった黒色変化をきたすことがあります。

爪のメラノーマは予後が悪いことが多いため、これらの所見に気づいたら、早めに皮膚科専門医に相談することが大切です。自分の爪の変化をこまめにチェックする習慣をつけましょう。

【メラノーマ治療における腫瘍径の意義】

メラノーマの治療や予後を予測するには、腫瘍が皮膚のどの深さまで広がっているかを知ることが重要。でも深さを調べるには切開などが必要で、大変です。それに対し、腫瘍の大きさは診察するだけで簡単にわかるので、役立ちそうです。

腫瘍径からがんの深さを正確に知ることは無理でも、ある程度予後の目安になると考えられます。今後さらに研究を重ね、日本人に多い爪部メラノーマの予後予測や治療法の選択に生かしていけたらと思います。

メラノーマは進行が速いがんなので、早期発見・早期治療がとても大切になります。自分の皮膚の変化に気をつけることが何より重要です。小さなホクロやシミでも、形や色が変わる、出血するなどの症状があれば、すぐに皮膚科専門医に相談しましょう。

参考文献:

Chen KC, et al. World J Surg. 2024 Apr 23. doi: 10.1002/wjs.12192.

Lee HY, et al. Ann Acad Med Singap. 2012 Jan;41(1):17-20. doi: 10.47102/annals-acadmedsg.v41n1p17.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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