NHKのみなさまにお願いしたいこと
■NHKのみなさまにお願いしたいこと
4月27日(日)に放送されたNHKスペシャル「調査報告女性たちの貧困~"新たな連鎖"の衝撃~」。
同じく、4月28日(月)に放送された、あさイチでの特集「気づいてますか?こどもの貧困」。
前者は、ネットカフェで暮らす10代の姉妹や、非正規労働で先が見えない日々を過ごす20代の女性、仕事をかけもちしながら資格をとるために学校に通うシングルマザーなどの姿を通して、急速に拡がりつつある「女性の貧困」について。
後者は、「子どもの貧困」をテーマに、奨学金が返せない若者が増えている問題や、地域のなかで子どもを支えていく取り組みについて描いていました。
この2つの番組に限らず、NHKの番組はこれまで、ねばり強く丁寧な取材により、貧困問題をはじめ、さまざまな社会問題を可視化してきたと思います。
「貧困」をテーマに番組を作ってもらえることを感謝しつつも、しかし、普段、生活困窮した人たちの相談活動に携わっている立場として、ちょっと言いたいこと(お願いしたいこと)があるので、少し書かせてもらいます。
■NHK「クロ現」にひとこと言いましたが、、、
今回の「Nスペ」は1月27日(月)に放送された、クローズアップ現代「あしたが見えない~深刻化する″若年女性″の貧困~」の反響を受けて番組化されたとのこと。
この「クロ現」では、特に性風俗の世界で働く女性にフォーカスして、性産業が結果的に公的なセーフティネットよりも彼女たちを支えている現実などを描いていました。
番組自体、全体として評価できる内容であったものの、より多くの人に正しい情報や必要な知識を伝えて欲しいという想いから、Yahoo!個人にて『NHK「クロ現」に、ひとこと言いたい(大西連)』を書きました。
主旨としては、
・社会保障制度に関して正しい情報を伝えて欲しいこと
・既存の制度の問題点から目をそらさないで欲しいこと
・必要な人が支援につながれるように、相談機関の連絡先を掲載してほしいこと
でした。
■ネットカフェで生活する14歳の少女
しかし、今回のNスペに登場する女性たちをみると、例えば、14歳でネットカフェ生活している少女など、本来であれば児童相談所が保護するような状況かと思います。
彼女以外にも、生活保護などの必要な支援を利用して生活再建をはかる方法があるのではないかと思われる方が何人も登場しています。
ナレーションでもテロップでもかまわないので、「本来であれば○○が可能」などのフォローがあったらと思いました。
クロ現について記事を書いたあとに、NHK関係者などとお話しする機会もあったのですが、同じようなことが繰り返されてしまい・・・少し残念です。
■「ルポ」から「提起」へ
もちろん、個別の事情や、実際におかれている状況がわからないので、何とも言えない部分もあるのですが、彼女たちに公的な支援などの適切な情報は伝わっているのでしょうか。
また、仮に制度のことを知っていて、その上で利用しないことを選択している状況であるならば、なぜ制度利用にいたらないのか、阻害要因は何なのかなど、切り込んだ取材や報道になっても良かったのではないかと思います。
貧困や生活保護の問題に取り組む弁護士の尾藤廣喜さんは、放送終了後にtwitterにて、
と指摘しています。
また、同じく司法書士の徳武聡子さんは、自身のブログで、
と批判しています。
僕としても、そういった「背景」に切り込んだ続編に期待したいところです。
■相談機関の連絡先を載せてほしい
『NHK「クロ現」に、ひとこと言いたい(大西連)』でも書いたのですが、番組の最後に、相談機関の連絡先を流してほしいです。
NHKの「ハートネットTV」では、HP上に各相談機関の情報を掲載してくれています。(もやいも協力しています)
番組中では時間の限りがあるので、なかなか全てを取り上げることは難しいと思いますが、これだけでもいいので、ぜひお願いしたいです。
■今後もNHKの番組作りに期待して
NHKの番組はいつも楽しみにしていますし、「貧困」をテーマにした番組作りや報道等では、これまで取材協力等、お手伝いもしてきました。
その気持ちはいまも変わりません。
しかし、「貧困」をとりまく、さまざまな問題や課題についての番組は、実際の当事者や家族、また彼ら・彼女らに関わる多くの人に大きな影響を及ぼします。
今後も、正しく制度理解を進めることや、必要な人に必要な支援を紹介することなどの視点を入れて、番組作りをおこなっていただければ幸いです。
以上